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【天界編開始!】黄昏のウェルガリア【累計100万PV突破】  作者: 如月文人
第九十四章 力天使ヴァーチャ

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第七百二十一話 頂上会談(中編)


---三人称視点---



 ガブリエルの発言で、室内の空気が重くなったところで、

 ティータイムが挟まれた。


 通常バイオロイド達がトレイに紅茶や珈琲コーヒーの入ったマグカップを乗せて、

 丁寧な仕草で会議の参加者達の前に置いていく。


 今のところ、発言をしてないラサミスは、

 珈琲コーヒーの入ったマグカップに口をつけて、

 周囲の様子を注意深く観察する。


 魔王レクサーは、いつものように堂々としているが、

 巫女ミリアム、族長アルガス辺りは神妙な表情をしていた。

 尚、アーベル国王はポーカーフェイス。

 マリウス王弟おうていに至っては、

 ミルクの入ったマグカップを舌でチロチロと舐めていた。


 ――皆、緊張しているな。

 ――無理もない。

 ――ガブリエルの言葉を安易に従えないよな。


 ――だが恐らくガブリエルの要求に従うしかないだろう。

 ――天使達はオレ達を遙かに凌駕する技術力の持ち主。

 ――このメルカバーのような船を複数持ってる可能性もある。


 ――その複数の船でもう一度ウェルガリアを攻められたら――

 ――オレ達はお手上げだ。

 ――だからここは素直にガブリエルの要求を呑む、べきだが……


 ラサミスがそう思う中、

 ティータイムと休憩時間が終わり、会議が再び始まる。


「少しは落ち着いて考えられたかしら?」


「嗚呼、お陰様でな」


 と、魔王レクサー。


「では魔王レクサー、アナタの意見を聞かせて頂戴」


熾天使してんしガブリエル、ならば応えよう。

 貴公の要求に乗るのも良いが、

 ここで貴公を亡き者にして、

 この船を乗っ取る、という選択肢はどうかな?」


「なっ!?」


 レクサーの言葉に、ラサミスは思わず言葉を詰まらせた。

 いやラサミスだけじゃない。

 巫女ミリアムもアーベル国王、族長アルガスも明らかに驚いていた。

 だが当のガブリエルは、動揺する事なく異様に落ち着いていた。


「成る程、そういう手段もあるわね。

 でもね、その選択肢を選んだらアナタ達はお終いよ?

 それに私も黙ってられるつもりはないわ。

 少なくとも魔王レクサー、アナタだけは必ず始末するわよ。

 何なら今すぐこの湖の底へ送ってあげましょうか?」


「それは困るな。

 でもそれを実行したら、貴公も終わりだ」


「ええ、今の私の記憶と肉体は失われるでしょう。

 でも我々、大天使は時間さえおけばいつでも復活出来る。

 それに私がその気になれば、

 この世界を破壊する事も可能なのよ?」


「……あのエルフ領を破壊した超兵器でも使うのか?」


 レクサーはあくまで強気な姿勢を崩さない。

 だがレクサーは短絡的な男ではない。

 このような話題を振って、

 ガブリエルと天使側の情報を引き出している。

 という側面は少なからずあった。


「メギドの炎ね、でもアレだけじゃないわ。

 その気になれば、一発で数十万人を一瞬で消せる爆弾もあるわ」


 核爆弾ニュークリアボムの事である。

 この話は事実だが、

 ガブリエルは実戦での核爆弾ニュークリアボムの使用には反対している。


 だがレクサーの言いように、

 彼女も頭にきており、このような言い方になっていた。


「……一発で数十万人を一瞬で消せる爆弾か。

 それが本当なら心底恐ろしいな」


 レクサーもこの話には少しばかり動揺した。

 するとガブリエルがすました顔で言葉を紡ぐ。


「残念ながら事実よ」


「そうか……。

 どうやら貴公等を侮っていたようだ。

 先程の発言と振る舞いに関しては詫びよう。

 少しばかり無神経な物言いであった……」


 そう言って、レクサーは頭を下げた。

 するとガブリエルも溜飲が下がったのか、

 「分かれば良いのよ」と言って、怒りの矛を収めた。


「要するにガブリエルの身の安全を確保した上で、

 お互いに歩み寄る姿勢を見せるべき、という話か。

 どのみち真っ向から戦っても勝ち目はなさそうだ。

 ならばここは大人しくガブリエルの言葉に従おうぜ」


 と、ラサミスがフォローに回る。


「自分もラサミスくんと同じ意見です」


「私も同じ気持ちです」


 剣聖ヨハンとレフ団長もそう相槌を打つ。

 するとレクサーもここは我を捨てて、周囲の空気を読んだ。


「分かった、余も貴公等の意見を受け入れる事にしよう。

 アーベル国王、巫女ミリアム、アルガス族長もそれで構わんよな?」


 レクサーの言葉にアーベル国王達も「はい」や「ええ」と賛同する。

 これでウェルガリア軍は、

 ガブリエルの提案を受け入れる事にした。


 だがそれと同時に新たな問題が起こった。

 その辺の要点をまとめて、レクサーがガブリエルに問い掛けた。


熾天使してんしガブリエル、では最初の要求通りに、

 我々はこのメルカバーに乗艦して、

 そなたらの本拠地――天界とやらに飛んでも構わん。

 だがそこへ連れて行く人員に関しては、話し合う必要がある。

 何せこの世界の命運を分ける戦いだ。

 また同行者の質の見極めや条件も聞き届ける必要もある。

 だからある程度の時間が欲しい、というのが本音だ」


 このレクサーの言い方は、

 誠意があり、物事の本質を見据えた意見であったので、

 ガブリエルの心にも響き、彼女も軟化した態度を見せた。


「まあそうでしょうね。

 確かに一朝一夕で決めれる話じゃないわね。

 良いでしょう、出発まで三ヶ月、いえ半年の猶予を与えましょう」


「そんなに時間がもらえるのか?」


 と、魔王レクサー。


「ええ、これは一つの惑星の命運を賭けた戦いよ。

 アナタ達がそれ相応の誠意を見せれば、

 私もそれ相応の対応をする、それだけの話よ」


「そうか、ありがとう……」


「いえいえ……」


 こうして話の落とし所は決まった。

 だが問題はこれからだ。


 天界に連れて行く人員を厳選する必要がある。

 レクサー自身も天界へ行くつもりだ。


 だがもし自分が死んだ時の事を考えて、

 誰かを新たな魔王として任命する必要もある。


 無論、その時はウェルガリアも追い込まれた状況だろうが、

 最低限の形式は整えておくのが、魔王の役割の一つだ。


「すまん、少し休憩してもいいか?」


「そうね、十分ならいいわよ」


「それで構わん」


 こうして二度目の休憩が挟まれた。


次回の更新は2025年12月30日(火)の予定です。


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