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第七百十三話 奮闘努力(前編)



第百三章 奮闘努力


---三人称視点---



「くっ……コイツ、本当に強い」


 ラサミス達は、多対一でウリエルに勝負を挑んでいたが、

 数的不利をものともせず、ウリエルは猛攻を防いでいた。


 ウリエルは目の覚める勢いで間合いを詰めて、渾身の強撃を繰り出した。 

 だがラサミスも素早く聖刀を翻して、ウリエルの神剣しんけんを受け止める。 

 硬質な金属音が響き渡る。 二人は息のつく間もなく、一合二合と切り結んだ。

 

「今度はボクが相手だ! ――ゾディアック・ブレードッ!!!」


 剣聖ヨハンが再び固有剣技ユニーク・ソード・スキルを放つ。

 だが眼前の漆黒の熾天使してんしは、

 表情一つ変えずヨハンの剣戟を余裕で防ぐ。


 縦斬り、横切り、薙ぎ払いとヨハンも剣技を駆使するが、

 いとも簡単に弾き返される。 

 ウリエルの剣技は、まごうこと無き超一級品であった。


「これならどう! ヘキサ・スキュアーッ!!」


 今度はミネルバが前方に躍り出た。

 彼女は素早く腕を内側に引き絞り、

 気勢と共に帝王級の槍術スキルを神速の速さで突き入れる。

 だが初弾の中段の突きをサイドステップで躱すウリエル。


 そしてがら空きになったミネルバの腹部に目掛けて、右膝蹴りを浴びせた。

 堪らず後ろに後退するミネルバ。 

 だがウリエルの視線はミネルバに釘付けだ。

 この好機を逃すまいと、ラサミスは背後から襲いかかった。 


 だが後ろに目でもあるように、ウリエル長は即座に振り返り、

 高速の右回し蹴りを繰り出した。 


 しかしこれは想定内の行動であった。 

 ラサミスは闇の闘気オーラを漲らせて、

 両腕で聖刀を縦に構えて、繰り出された回し蹴りを防御ガードする。

 鈍い音と共に、ラサミスの両腕に重い感触と衝撃が伝わるが、

 歯を食い縛りぐっと耐える。


「……えぇ、えぇ、熾天使してんしの名は伊達じゃねえな」


「一方の貴様もなかなかやるではないか。

 特異点と呼ばれるだけの事はある」


「……そりゃどうも!」


「ラサミスくん、一度下がれっ!」


 ヨハンに言われて、ラサミスは一度後退した。

 するとヨハンが小声で、

 「耳錠の魔道具(イヤリング・デバイス)」越しに話掛けてきた。


『ラサミスくん、打ち合わせ通り行くぞ。

 ボクが奴を引きつけるから、

 キミは強化能力きょうかアビリティを使って、

 奴の左腕を全力で斬りつけろ!

 いいか、恐らく二度目はない。

 一度目で確実に奴の左腕を両断するんだ!』


『了解です、全力を尽くします』


『嗚呼、期待しているよ。 じゃあ行くぞ!』


 ヨハンはそう言葉を交わして、

 職業能力ジョブ・アビリティ能力強化のうりょくきょうか』を発動して、自身の筋力値を強化させた。 


「うおおおっ……おおおっ!」


 ヨハンが雄叫びを上げて、ウリエルに向かって突撃する。


「良し、オレも後に続くぜっ!

 うおおおっ……おおおっ! ――明鏡止水めいきょうしすいっ!!」


 続いてラサミスが職業能力ジョブ・アビリティ明鏡止水めいきょうしすい』を発動させた。

 次の瞬間、ラサミスの全身に物凄い力が漲った。

 それによって、ラサミスの能力値ステータスが倍化される。

 発動時間は五分、蓄積時間チャージ・タイムは十分。


「――黄金の息吹(ゴールデン・ブレス)


 ここで職業能力ジョブ・アビリティ黄金の息吹(ゴールデン・ブレス)」を発動。

 注ぎ込む魔力は全魔力の半分に設定。

 すると聖刀を持つラサミスの両手に膨大な魔力が蓄積チャージされた。


 ヨハンの言うように、失敗は赦されない状況だ。

 ウリエル程の相手に同じ手は二度も通用しないだろう。

 否が応でも一度目で決めなくてはならない。


 だが当のラサミスは、妙に落ち着いていた。

 彼もここまで数多の修羅場を潜ってきたが、

 焦りや緊張より、自身の使命を優先すべく軽く深呼吸する。


 前方ではヨハンとウリエルが激しく斬り合っていた。

 見た感じほぼ互角。

 いやよく見ると徐々にヨハンが押されつつあった。


 しかしラサミスは焦らない。

 落ち着いた様子で腰をどっしりと降ろして、

 両肩の力を抜いて、すり足で間合いを詰める。


 ――後、五歩。

 ――後、三歩。


 ――後、一歩。


 心の中でそう呟くラサミス。

 そして最後の一歩を踏み出して――


「きえぇぇぇーーーーーーっっ!!」


 気合い一声、同時に鞘に戻る刀の金属音が同時に聞こえる。

 「チン!」という音共に刀が鞘に綺麗に収まる。

 ラサミスの渾身の居合い斬りが見事に決まった。

 そして次の瞬間、異変が起きた。


「ぐおおおぉぉぉっっっ!!」


 ウリエルの悲鳴と同時に、その左腕が宙に舞った。

 それと同時にウリエルの両断された傷口から、

 赤い鮮血が噴水の如く周囲に迸った。


 どうやら肉体があのような装甲に変化した訳でなく、

 強化された装甲で肉体が覆われていたようだ。

 これならば急所を突けば、恐らく倒せる筈。


「糞っ、糞っ、糞ぉぉぉっ!!!

 ――め、女神めがみの息……っ!?」


「させるかぁっ! 我は汝、汝は我。 我が名はヨハン。 

 我は力を求める。 母なる大地ウェルガリアよ!

 我に大いなる守護を与えたまえ! 『魔封陣まふうじん!!」


 するとヨハンの聖剣の刀身が輝く白光で覆われた。

 半瞬後、輝く白光で覆われた聖剣がウリエルの放った回復魔法を魔力ごと呑み込むように吸収した。


「なっ…………何っ!?」


 「――ゾディアック・スティンガーッ!!」


 そして剣聖ヨハンは、

 十八番おはこの剣術スキルを魔力を篭めて、全力で放った。

 ヨハンの聖剣サンドライトの切っ先から、黄緑色の衝撃波を放たれる。


 うねりを生じた黄緑色の衝撃波が太いビーム状になり、

 神速の速さで大気を切り裂いた。 


「舐めるなぁぁぁっ!!!」


 ウリエルが大声で叫び声を上げて、

 背中の二枚一対の漆黒の両翼を羽ばたかせた。

 だがその刹那――



次回の更新は2025年12月11日(木)の予定です。


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― 新着の感想 ―
おぉ~迫力満点ですね。 なんかウリエルの好感度があがっているんですけども、なんでだろうな(^^;) キサトンさんの書かれる愛あるバトルが愛おしんでしょうね。 楽しんでください。僕も楽しみます。 …
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