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第七百十二話 神化(後編)


---三人称視点---



「撃て、撃て、兎に角、撃つんだぁ!!」


「はい、はい、はーい!

 ならら気分変えて次は風属性で行くよ。 ――ウインドソード!!」


 メイリンがそう颯爽さっそうと叫ぶと、周囲の大気がビリビリと震えた。

 すると風が巻き起こり、剣のような形状になり、鋭い刃と化した。

 そしてその風の剣が一本、一本と前方に向けて投げつけられる。


 ひゅん、ひゅん、ひゅん。

 風の剣は反重力の壁に突き刺さり、

 命中しては消えるがドンドンと投げ込まれる。

 更に一本、二本、三本、休まることなく風の剣が壁に命中する。


 次第にウリエルの表情にも焦りの色が浮かぶ。

 反重力の壁といえどこの能力もバリアに該当する筈。 

 故に攻撃が命中する度に魔力を消費するのは変わらない筈だ。 


 それにこんな強力な防御法が何の代償もなしにそう何度も使えるわけがない。

 地味な戦法だが、ここは消耗戦で攻めていくのが妥当であろう。  

 メイリンは額に汗を浮かべながらも、この苦しい我慢比べを続ける。


 ウリエルの方も既に余裕はなく、奥歯を噛み締めながら魔力を練り続けている。

 そういう攻防が約二分ほど続く。

 すると次第に反重力の壁が見る見るうちに弱まった。


「ここで決めてやるっ! ――雷炎剣らいえんけんっ!!」


 ラサミスは反重力の壁を破るべく、

 神帝級しんていきゅうの刀術スキル「雷炎剣らいえんけん」を放った。


 ラサミスの聖刀に紅蓮の炎が宿り、

 照準をパワーに合わせて、その聖刀を振った。

 すると紅蓮の炎がウリエル目掛けて放たれた。


 紅蓮の炎がに反重力の壁に着弾。

 間を置かずして、爆音が鳴り響き、

 反重力の壁が激しく振動した。

 そしてしばらくすると、魔力が尽きたのか。

 反重力の壁は四方八方に霧散した。


「やったか!」


「ラサミスくん、油断するな!

 まずは疲弊している奴に攻撃するぞ!」


 剣聖ヨハンがそう言って、素早く前進するが――


「そう来るのは想定内だ! ――ファントム・ブリンクッ!」


 ウリエルがそう叫ぶなり、前方にモヤモヤとした深い霧が立ちのぼる。

 視界がボヤけて標的が定まらず、ヨハンはラサミスに視線を向ける。


「くっ……身を隠したか。

 だがこの後の反応に要注意だ。

 何が起こっても慌てるなよ」


「はいっ!」


 しばらくして視界が正常になったが、ウリエルの姿はなかった。 

 思わず後ろに振り返るヨハン。


「ほう、いい勘しているじゃないか。 

 ――だがもう遅い!!」


 背後にはウリエルが待ち構えており、その左手に重力の波動を宿らせていた。

 ウリエルは身を隠している間に、

 「ピンポイント・テレポート」でヨハンの背後に転移したのだ。


 このほぼ零距離でウリエルの重力弾を喰らえば一溜まりもない。 

 だが避ける余裕も対魔結界を張る時間もない。

 ――ならば前へ進むのみ!!


 「なっ!?」


 急に零距離に迫られたウリエルは思わず絶句した。

 この距離では強力過ぎる重力魔法は撃てない。 

 撃てば自分にも被害が及びかねない。


 それを見越した上でのこの咄嗟の判断。 コイツは油断できない相手だ。

 そう思った矢先に目の前の若き剣聖がその場でしゃがんだ。

 思わず身構えるウリエル。 


 それと同時に左足で強烈なローキックを放つヨハン。

 だがウリエルも冷静に後方に跳躍して蹴りを交わす。 

 即座に間合いを詰めるヨハン。


「――必殺っ! スターライト・インパクトォッ!!」


 ヨハンはそう技名を叫びながら、自身の独創的技オリジナル・スキルを繰り出した。

 まず袈裟斬りと逆袈裟を高速で繰り出し、

 神化しんかしたウリエルの胴体にXエックスの文字を刻み込む。


「が、がはぁっ!?」


 ウリエルは溜まらず喘いだ。

 そしてヨハンは今度はIアイの字を描くように縦に剣を振るった。


「舐めるなっ! ――ディバイン・バスターッ!」


 胴体を切り刻まれたが、

 神化しんかによってウリエルの全身は、

 強化された鎧で覆われていた為、

 思った以上には、深く剣線を刻む事は出来なかった。


 逆にウリエルが帝王級の剣術スキルに応戦する。

 神化しんかした状態に加えて、

 神剣しんけんで繰り出される帝王級の剣術スキル。


 ヨハンの渾身の縦斬り。

 対するウリエルは強烈な薙ぎ払いで、

 ヨハンを聖剣サンドライトごと後ろに吹っ飛ばした。


 その衝撃でバランスを崩すが、そこは剣聖。

 若き剣聖は無様に転倒する事無く、両足で地面に着地した。


「くっ……何という一撃だ。

 ボクの独創的技オリジナル・スキルをいとも簡単に防ぐとは!」


「ヨハン団長、奴の攻撃力もとんでもないですが、

 あの強化された鎧で覆われた状態を

 斬りつけるのは想像以上に厳しいようですね」


「そうだな、今の奴は攻防共に最強レベルのようだな」


「……何か手はないのかしら?」


 ラサミスとヨハンの後ろでそう声を掛けるミネルバ。


「あの分厚い装甲には、通常の武器スキルより、

 体術スキルの「とおし」の方が効きそうだな。

 もっともそれを打つ前にお膳立てする必要があるがな。

 ヨハン団長、敵が回復魔法を使ったら、

 「魔封陣まふうじん」で相手の魔力を吸い取る事は可能ですか?」


「……!? 嗚呼、可能だよ!

 ラサミスくん、面白い事を思いつくね」


「ふと思っただけですよ。

 じゃあオレやヨハン団長やミネルバは、

 今まで通り三人でウリエルを迎え撃とう。

 隙が出来たら、オレも「徹し」を出してみるよ」


「分かったよ」「了解!」


「じゃあ兎に角、やれる限りやってみようぜ!」


 そう言葉を交わして、

 ラサミス達は武器を手にしながら、

 再びウリエル相手に接近戦を挑んだ。



次回の更新は2025年12月9日(火)の予定です。


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― 新着の感想 ―
今回は漫画感を感じましたね(^^) メイリンの存在感が登場するたびにあがっている気がします(笑) ヨハンもどんどんキャラのイメージが膨らんできている感触。 更新ワクワクしております。僕のなかで断…
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