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第七百十一話 神化(中編)


---三人称視点---



「ふっ、能力を分析して分かっただろう。

 お前等では神化しんかした俺は倒せん」


「やってみねえと分からねえだろうよ」


 ウリエルの言葉にそう返すラサミス。

 するとウリエルは、わざとらしく首と左手首をこきりと鳴らす。


「良かろう、ならば神化しんかした俺の真の力を見せてくれよう」


「……隙あり! 喰らえ――フレイム・ストリーム!!」


 メイリンが咄嗟にそう詠唱すると、

 ウリエルに目掛けて炎の柱がうねりを生じて襲い掛かった。

 メラメラと燃え盛る炎の柱が竜巻のように旋回しながら、ウリエルに迫る。

 だがウリエルは避けようとせず、口の端を持ち上げて――


「――グラビティガード!!」


 と叫んだ。 すると迫り来る炎の柱の前に目映い光の闘気オーラが生じた。

 光の闘気オーラは放射状に広がり、炎の柱の前に敢然と立ちはだかる。

 すると見る見るうちに炎の柱は勢いを失い、その光の闘気オーラに呑みこまれた。


「なっ……なんですって!?」


「驚くのも無理はないか。 俺のグラビティガードは言わば反重力はんじゅうりょくの防壁。 

 どんな強力な攻撃も反重力の前では無意味だ。 

 俺に届く前に全て無効化されるというわけよ!」


「し、信じられないわ。 まさか反重力を操るなんて!?」


「これが神化しんかした熾天使してんしの力だ。 

 その力を思い存分知るが良い! 行くぞっ――!!」


 ウリエルがそう叫ぶと、その周辺に超高レベルの魔力が生じた。

 中衛で待機していたクロエもその異常な数値に思わず「……嘘でしょ?」と呟いた。


「――喰らうが良い、連続重力弾れんぞくじゅうりょくだん!!」


 ウリエルの左手の平から重力弾が連射される。


「くっ……ライト・ウォ……。

 いやここは走って逃げるわ。 疾走スプリント!」


 メイリンは自身の走力を加速して、

 必死な形相で迫り来る重力弾を避けた。

 一発、二発と交わしたが、

 外れたと思った三発目の重力弾が床で跳弾のように跳ねる。 

 そして無防備なメイリンの背後から命中する。


「ぐふふううぅぅっ!!」


 という呻き声を上げてメイリンは体勢を崩した。

 ウリエルはそれを待ちかねていたように、

 左手の指の間に小さな重力弾を生み出す。


 そしてその親指の爪くらいの大きさの重力弾を指弾のように指で弾く。

 一発目がメイリンの右足に、二発目が腹部に、そして三発目が胸部に命中。

 メイリンは「ゴホっ!」と口から吐血するなり、背中から床に倒れた。


「これでまずは一人。 邪魔な魔導師は先に潰すに限る」


「ジュリーくんとバルデロンくんは、

 メイリンくんを介抱するんだ」


「「はいっ!」」


「皆、あの重力弾は何としても躱すんだ」


「はい、団長。 まずはアタシが仕掛けます。

 ウインド・パイル連射バーストっ!!」


 クロエがそう叫ぶと同時に周囲の大気がうねりを生じて風の杭と化した。

 ひゅん、ひゅん、ひゅん。

 死神の鎌のような無数の鋭利な風の杭がウリエルを襲う。


 だがウリエルは、余裕の表情で、

 グラビティガードをピンポイントで周囲に張り巡らして、風の杭を防ぐ。

 一発、二発、三発……。


 クロエの放ったウインド・パイルはことごとく反重力の防壁に防がれる。

 高レベルの魔導師の張る障壁バリア以上の高い防御力を誇る反重力の壁。

 このまま無闇に攻撃しても意味はない。 

 こんな調子じゃすぐに魔力が尽き果てる。


『ラサミスくん!! アイツのあの能力を解除して!!』


 と、クロエが念話テレパシーを飛ばした。


「了解したっ!!! まずは黄金時間ゴールデン・タイム


 そう叫んで、全速力でウリエルに迫るラサミス。

 切り札の黄金時間ゴールデン・タイムをここで発動。

 これでラサミスの蓄積時間チャージ・タイムはなくなった。


 そしてラサミスは風を切るような速度で床を強く蹴った。

 射程圏内に入ると、左腕を高く振りかざして――


「――『零の波動(ウェイブ オブ ゼロ)!!』」


 と、叫んだ。

 すると白い波動がウリエルに降り注ぎ、周囲の反重力の防壁も消え失せた。


「なっ!? 貴様ぁ!? 解除能力の持ち主か!!」


「さあ? 自分で考えな!」と、不敵に笑うラサミス。


「ナイスよ、ラサミス。 

 よし、今だ!! ――シューティング・ブリザード!!」


 ジュリーに回復魔法をかけてもらったメイリンは、

 短縮詠唱で氷結魔法を唱え、彼女の両手杖の先端の宝石から、

 大気を凍らせるような冷気が放たれた。


 直撃すれば瞬時に凍結可能な冷気。

 咄嗟の攻撃にウリエルは立ち尽くしたまま、「チッ!」と舌打ちする。


 そして神化しんかによって、

 鎧に覆われて漆黒となった両翼で迫り来る冷気を防ぐ。

 直撃は避けられたが、ウリエルの両翼は氷結された。


「ちょこまかと鬱陶うっとうしい。

 これだから魔導師は嫌いなんだよ。

 面倒だが、一人ずつ倒していくか。 ハアアアアアア――――」


 気勢を上げて更に魔力を高めるウリエル。

 ウリエルの周囲の大気がビリビリと震える。 

 物凄い量の魔力だ。


「……マジですか!。 洒落にならない魔力なんですけど?」


「心配するな、メイリンくん。 当らなければ大丈夫だ。 

 それより奴に向けて、連続魔法攻撃を仕掛けてくれ。 

 あの反重力の防壁はそう長くは出せないだろう。 とにかく攻勢に出るぞ!」


「了解ッス、んじゃ全力でぶっぱなすよ~。 

 我は汝、汝は我。 我が名はメイリン。 

 ウェルガリアに集う炎の精霊よ、我に力を与えたまえ! 炎殺えんさつッ!』」


 メイリンの両手杖の先端から、

 メラメラと激しく燃え盛る炎の塊が生み出される。

 メイリンは力を制御セーブせずに、緋色の炎の塊を連続して解き放つ。


 ドオオオン、ドオオオン。という爆音が運動場内に響き渡る。

 だがこれもまたしても反重力の防壁に防がれた。

 単純な強度や硬度でなく、事実上相手の攻撃を無効化する反則的な防御法。


 ドオオオン、ドオオオン、ドオオオン。

 何度も爆炎が渦巻くが、一向に壁が崩れる気配はない。


「マジですか、まるで効いてない。 

 ヨハン団長、これ攻撃しても意味なくないッスか?」


「……表向きはね。 だがあの反重力の壁は奴の魔力で生成されている。 

 こうして防御してる間にも奴の魔力は消費されている。 

 つまり無駄じゃない、ドンドン仕掛けるんだ!」


「ならアタシも行くわ! ――シャドウ・パイルッ!」


「わたしも行くわっ! ――ピンポイント・ショットォッッ!!」


「あ、アタシも行くわ!」


 クロエの後に続き、

 カリンとマリベーレも弓矢と狙撃でウリエルの反重力の壁を狙い撃つが、

 それも綺麗に弾き返された。


 だが周囲に檄を飛ばすべく、ラサミスが大声で叫ぶ。


「もっとだ! もっと撃つんだぁっ!!」


次回の更新は2025年12月7日(日)の予定です。


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― 新着の感想 ―
バシバシバシッ!!!って音がなんか聴こえるバトル回でした(*´ω`)b 二次元におけるバトル空間の描写に長けてますね。キサトンさん。 ラサミスも単に軽い男のようで意外と知略的な面もみせてくれる。好…
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