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第七百六話 罵詈雑言


---三人称視点---



「――ファルコン・スラッシュッ!!」


「フン、ダブル・ストライクッ!」


 熾天使してんしウリエルと剣聖ヨハンがお互いに、

 剣技ソード・スキルを繰り出して、何度も切り結んだ。


 だが勢いではウリエルが勝っていた。

 通常の能力値ステータスの差もあったが、

 ウリエルが使う神剣しんけんアストロダームの威力が群を抜いていた。


 ヨハンも職業能力ジョブ・アビリティ能力強化のうりょくきょうか』を発動させて、

 自身の能力値ステータスを強化していたが、

 その状態でもウリエルと何とか切り結べるといった具合であった。


 尚、ラサミスとミネルバは、様子見を見ながら、

 時々加勢していたが、一対二、時には一対三となっても、

 ウリエルは平然とした表情でラサミス達を一蹴していた。


 尤もラサミスは、職業能力ジョブ・アビリティ明鏡止水めいきょうしすい」を温存。

 ミネルバにしても、職業能力ジョブ・アビリティ「ドラゴン・ビート」は使用していたが、

 龍炎波、龍神乱舞といった切り札の槍術スキルは温存していた。


 それ以外の者達は、中衛や後衛に陣取りかながら、

 ラサミス達の戦いを見ていたが、

 中途半端に介入出来る余地はまるでない。


 尤もウリエルのお供の天使兵二体と戦闘バイオロイドの動きは完全に封じており、

 クロエの放った「ウインド・パイル」で既に一体の戦闘バイオロイドは破壊したので、

 数字的には5対10という形になっていた。


 一方のウリエルは、剣の腕も超一流クラスであったが、

 魔法に関しても光属性と風属性を見事に使い分け、

 また回復魔法や支援魔法にも優れていた。


 接近戦も出来て遠距離戦も出来るオールマイティのタイプだ。

 時折、光及び風属性の中級魔法を無詠唱で連発してくるが、

 ラサミス達も過去の魔族との戦いで、

 無詠唱魔法攻撃の対処法には長けていたので、

 現時点では一応、互角以上に渡り合っていた。


「ほう、警戒するのは特異点だけで良いと思っていたが、

 そこの金髪の小僧もなかなかやるではないか」


「金髪の小僧ね、語彙力のない熾天使してんしさんだ」


「これならばこれまで幾多の大天使が討たれた理由も分かる。

 だが私は――、俺はそうは簡単に討たれんよ。

 熾天使してんしとその他の大天使の違いを教えてくれよう」


「おお、怖い。 でもボクも仕事なんでね。

 例え勝てない戦いでも戦わなくちゃならない。

 その辺が冒険者の辛いとこだね」


「ふふ、軽口を叩いているが、俺には分かるぞ。

 こうしている間にも貴様はこちらの様子を探っている。

 剣の腕だけでなく、頭の方もキレるようだな。

 ……一応、貴様の名前を聞いておこう」


「わ~、すんごい上から目線。

 でも仮にも熾天使してんし様だからね。

 答えないと礼儀に反するから答えるよ。

 ボクの名はヨハン・デュグラーフ。

 これでもこの世界では少しは名の売れた剣士だよ」


「だろうな、だが貴様や特異点クラスの剣士や兵士は、

 そう多くないであろう、現にこの場に居ない」


「あら~、余裕ぶっこいているのねえ~。

 このアタシもアンタの手下の大天使を倒したんだけど~?」


 ミネルバがそう口を挟む。

 実際のところ、彼女は別に怒っていなかったが、

 ウリエルの為人ひととなりを探る為、

 このような挑発的な口調で喋っていた。


「そこの角の生えた女――確か竜人族だったな?

 成る程、貴様もそれなりの力を有しているようだな」


「あらら、それなり扱いなの~?

 でもアタシに倒された大天使――ヴァーチャもそんな大口叩いてたわね」


「そうか、貴様がヴァーチャを討ったか。

 どうやら貴様等は我々の予想を上回っているようだ。

 だが想像外ではない、これも予定調和の範囲

 そこの金髪の小僧や特異点、竜人族の女が束になろうが、

 貴様等如きに負ける熾天使してんしウリエルではない」


「なんか大口叩いているけど、

 アンタ、熾天使してんしで一番下っ端でしょ?

 だからこんな敗戦処理紛いな役を押しつけられたんでしょ?」


「……何だと?」


 クロエの煽りにウリエルは不快感を露わにするが、

 クロエは悪びれる事なく、エッジの利いた悪口を並び立てる。


「というかこの流れってアタシ達の勝利の方程式じゃん。

 天使だけでなく、過去の魔族との戦いも、

 アタシ等「ヴァンキッシュ」や「暁の大地」が共闘したら、

 ほぼ負けなし、だからアンタも間違いなく負けるわよ?」


「クロエねえさん、言い過ぎだよ?

 相手は一応、熾天使してんしなんだから、

 最低限の敬意は払わなくちゃ!

 でもあくまで最低限で良いけどね!」


 今度はカリンが便乗する。

 こういう時の女性陣は頼もしい。

 

 だが言われた方はたまったものじゃない。

 ウリエルは顔を真っ赤にして、こめかみからは血管が幾つも浮き出ている。

 激怒している証拠だ。


「フン、かしましい女共だ、あまり俺を舐めるなよ。

 貴様等如きものの数ではないわっ!」


「だったらやってみないさよ!」


「そうだ、そうだ!」


 クロエとカリンが更に煽るが、

 それと同時にウリエルは、左手を前に突き出して、

 無詠唱で中級風魔法「ワール・ウインド」を連発する。


「皆、慌てないで!

 此奴こいつ等も無詠唱じゃそこまでの魔法は使えないわ。

 目には目を、風には風を! ――ウインド・パイルッ!!」


 クロエが慌てる事無く、

 短縮詠唱で錬金魔法を唱えると、

 彼女の周囲で巻き起こった風が太い杭となって前方に解き放たれた。


 旋風と太い杭状の風の刃が衝突して、

 レジスト反応が起こり、双方の魔力が周囲に飛散した。


「ほう、小賢しい口を聞くだけあって、

 少しはやるようだな」


「別に、アンタが無能なだけよ」


「フン、そんな見え見えの挑発は乗らん。

 良かろう、貴様等に熾天使してんしの真の力を見せてくれよう」


 そこでウリエルは全身から魔力を解き放つ。

 とんでもない量の魔力に加えて、

 研磨されたような闘気オーラがウリエルの周囲で渦巻く。


 確かに凄い魔力量だ。

 だがラサミスやヨハン達もあの第二次ウェルガリア大戦の経験者。


 単純な戦闘力では、

 かつてしのぎを削った魔力の幹部とそこまで大きな開きがない。

 と自分自身に言い聞かせて、ラサミス、ヨハン達は闘志を高めた。


「大丈夫だ、此奴も強いが、レクサー程じゃない。

 ならば戦い方次第では幾らでも勝てる。

 だからオレやヨハン団長を信じて、皆で戦おう!」


 そしてラサミス達は、闘志を装填して、

 眼前に立ち塞がるウリエルを倒すべく再び戦いを挑んだ。


次回の更新は2025年11月24日(月)の予定です。


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タイマンで語られる話になるかと思いきやチーム戦な雰囲気の話。 やはりゲーム感で読んでゆくウェルガリアですが…… 今話は天使軍サイドとウェルガリアサイドのキャラそれぞれの魅力を光らせた感じ。 ウリ…
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