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第七百二話 天使長と特異点(前編)

第百一章 天使長と特異点


---三人称視点---



 天空の方舟はこぶねメルカバーの心臓部・中央発令所。

 剣聖ヨハンが飛び込んだのは、その中央発令所であった。


 艦長席の熾天使してんしウリエル、そのすぐ側に立っていた天使長ミカエルと熾天使してんしガブリエルとヨハンの目線が合った。


「どうやら敵の親玉連中と出くわしたようだ。

 ラサミスくん、クロエ、カリン! 今すぐ中へ入れっ!」


 ヨハンに言われて、ラサミス達も咄嗟に発令所の中へ入った。

 この発令所は小さな劇場くらいの広さがあり、

 各デスクに天使兵や補助役の通常バイオロイドが席についていた。


 その数はざっと見て二十数名程度。

 座席の三分の一程が空いていたが、

 ここでは総司令官の命令を制御AI(エーアイ)システムが聞き、

 問題が無ければ、命令を実行するという感じに、

 指揮系統は基本的に一本化されていた。


 尚、この中央発令所の警備兵は、

 戦闘バイオロイドが三体だけであったが、

 ミカエル達は、臆する事はなく、

 お互いに顔を見合わせて小さく頷いた。


「アイツ等が天使達の親玉なのね!」


「見た感じそんな雰囲気を漂わせているわね」


 ミネルバとメイリンがそう言って、

 漆黒の魔槍と両手杖をこれ見よがしに構えた。


「ラサミスくん、あそこの水色の軽鎧ライト・アーマーを着た水色のロングヘアの大天使を見て!」


「あ、嗚呼、クロエさん! あっっ……アイツはグラフェルの塔で会った奴だ!」


「……確か熾天使してんしガブリエルと名乗ってたわね」


 カリンが過去の記憶を掘り起こして、そう告げた。

 するとあの場に居たラサミスやミネルバ、メイリン達も思い出したようだ。


「確かにあの時会ったわね」


「うん、間違いないわ」


 ミネルバとメイリンも視認して、お互いに視線を交わす。

 だがそれ以上に気になる存在が居た。


 身長は185前後。

 程よい長さの金色の髪。

 滑らかな額に、鋭い鼻梁。

 透き通るような青い瞳。


 手足も長く、まさに美の神に愛されたような容姿。

 地上の人々が思い描く天使を

 具現化させたような大天使――天使長ミカエルをラサミスとヨハンは見据えていた。


 天使長ミカエルは黒いインナースーツの上に、

 金色の軽鎧ライト・アーマーを纏い、

 その背中には二枚一対の純白の美しい翼が生えていた。


 尚、その近くに立つ熾天使してんしガブリエルは、

 身長170前後で、白い羽衣の上に水色の軽鎧を纏い、

 背中には、天使長と同じく二枚一対の純白の美しい翼が生やしていた。


 艦長席に座っていた熾天使してんしウリエルは、

 黒髪黒目の身長175前後で、

 長袖の黒いインナースーツの上から、

 紫と銀を基調にした鎧を着込んでおり、

 上記の二名と同じように、

 背中から二枚一対の純白の翼が生えていた。


 この三人の姿を見てラサミス達は思わず目を奪われた。

 神々(こうごう)しい、皆が同じ感想を抱いた、


 一方の天使長ミカエルは、

 その青い瞳で前方に立つ銀髪の青年を見据えた。


 ――この男が特異点か。

 ――見た感じそれなりの戦闘力とそれなりの知性を宿してそうだ。


 ――だが正直そこまで大きな存在には見えない。

 ――が結果として今回の遠征で多数の大天使を失った。


 ――その事実から目は背けられん。

 ――やはりこの男が与える影響力は、私の想像以上か。


 ――ならば早い段階で叩き潰すべきか。

 ――だがここでウリエルを押しのけて、私が直接戦う。

 ――という行動を取るのは、些か軽率だな。


 危機感は抱きながらも、

 有無を言わせず相手を討つ。

 という行動に出れない事に天使長は、小さな苛立ちを抱いた。


 そんな天使長の葛藤など知らぬラサミスは、

 その双眸で前方の天使長を見据えながら、話し掛けた。


「アンタ等が天使達の親玉か?」


「……」


「そうだと判断した上で語るぜ。

 今回の戦いでオレ達も、そしてアンタ達も少なくない損害を受けた筈だ。

 だがオレ達は何故アンタ等の侵攻を受けたか、思い当たる節がない。

 そして被害が増えた状態で、

 アンタ等が何の歩み寄りの姿勢を見せないならば、

 オレ達もオレ達の世界と家族、仲間を護る為に戦わざるえない」


 特に印象的な言葉や主張ではないが、

 自分達の心情とこちらに対する配慮は存在した。

 だからそれに対して、天使長は言葉による対話をする事にした。


「その辺の理由に関しては、

 こちらの熾天使してんしガブリエルが前に説明したであろう。

 我々は自分達が定めた秩序や規則を変えるつもりはない。

 ……と言いたいところだが、それは我々の傲慢かもしれないな。

 貴公等は無知蒙昧な野蛮人などではない。

 現に我等の同胞が貴公等の手によって討たれた。

 また動揺に我等も貴公等の同胞を多く奪った。

 このまま武力衝突を繰り返せば、

 お互いに引くに引けぬ状況になりかねんな」


「……天使長、何を言うのですかっ!?」


 ミカエルの言葉にウリエルが驚いた表情でそう言うが、

 ミカエルは目でウリエルを制して、次の言葉を紡ぐ。


「ウリエル、そう慌てる必要はない。

 私も彼等に対して謝罪や釈明するつもりはないさ。

 だが冷静に見れば、我々が一方的に彼等とこの世界を

 侵略したのは、厳然たる事実だ。

 既に双方に少なくない犠牲と被害が増えつつある。

 故に我等も言葉を持って、彼等と話し合う。

 という選択肢を選ぶ段階に来てるのかもしれん」


「天使長、正気ですか!?

 我等、天使が地上人と対等な関係で話し合うというのですか?」


 そんな事はあり得ない。

 必死にミカエルに反論するウリエルの目は真剣そのものだ。

 だがミカエルはウリエルの気持ちを汲んだ上でこう言った。


「対等ではないさ。

 ただ一方的にこちらの要求を押しつける。

 という段階ではないのかもしれない。

 同士ウリエル、ここは私を信じて任せて欲しい」


 ミカエルはそう言って、ウリエルを諭した。

 この言葉にウリエルも納得したようだったが、

 ラサミスには逆効果であった。


「ふざけるなよ。

 お前等の都合と理屈を押し売りするんじゃねえっ!!!」



次回の更新は2025年11月16日(日)の予定です。


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おぉ……遂に相対する展開きましたね! ウェルガリア愛読者、ワクワクしてきました! 緊張感がピークに達してきております!
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