第六百七十七話 百折不撓(前編)
---三人称視点---
猫族領のニャンニャン湖に、
天空の方舟メルカバーが着水して、
二日が経過したが、まだ熾天使ミカエルとガブリエルが
現れる気配はなかった。
だが翌日のウェルガリア歴1606年9月20日。
熾天使ミカエルとガブリエルは、
無事に時空転移を成功させて、
メルカバーの時空転移装置の中から現れた。
「天使長、お久しぶりです」
「同士ラファエル、久しぶりだな」
「同士ガブリエルも元気そうで何よりだ」
「同士ウリエル、お気遣いありがとう」
「とりあえずここではなんだ。
中央発令所の司令室へ移動しよう」
「「そうだな」」「そうね」
約十分後、四人の熾天使達が中央発令所の司令室に到着。
こうして熾天使全員が揃うのは、結構久しぶりであった。
天使長ミカエルは、金髪碧眼の身長185前後の長身で、
黒いインナースーツの上に、
金色の軽鎧を纏い、
その背中には二枚一対の純白の美しい翼が生えていた。
熾天使ガブリエルは、
身長170前後で、白い羽衣の上に水色の軽鎧を纏い、
背中には、天使長と同じく二枚一対の純白の美しい翼が生えている。
熾天使ラファエルは、
褐色肌の身長190以上で、
ハイネックの長袖の黒いインナースーツの上に白銀の鎧を着ており、
四枚二対の立派な白い翼を背中から生やしている。
熾天使ウリエルは、
黒髪黒目の身長175前後で、
長袖の黒いインナースーツの上から、
紫と銀を基調にした鎧を着込んでおり、
背中から二枚一対の純白の翼が生えていた。
こうして熾天使四人が武装して、
同じ箇所に並ぶと、何処か神々しさのような雰囲気が漂う。
「このように熾天使が勢揃いするのも、
随分と久しぶりな気がするな」
「「確かに……」」
天使長の言葉に熾天使ラファエルとウリエルが相槌を打つ。
「それで同士ラファエル、ここまでの戦況を直に教えて欲しい」
「嗚呼、それならば……」
ラファエルはこれまでの経緯を端的だだが分かりやすく伝えた。
するとミカエルとガブリエルが「ほう」や「成る程」と声を漏らした。
「とりあえず最悪な状況ではないようだな。
だがこちらの大天使が数体撃破されたのは、
やはり気がかりだな」
「嗚呼、天使長が危惧されたように、
あの特異点が所々で良い働きをしているよ」
と、ウリエル。
「機会があれば、この私が直接叩くのも悪くないかもしれん」
だがこのミカエルの言葉をウリエルが「いや」と制止した。
「元はと言えば、最初のアーケイン降下の際には、
この俺が総司令官に任命された。
だから彼奴の相手は、俺に任せて頂きたい」
「同士ウリエル、良かろう。
貴公にも立場や矜持というものがあるからな。
但し――」
「但し何かね?」
「くれぐれも油断しないようにな」
「嗚呼、それは心得ているさ」
「良し、既に戦闘バイオロイドを1500体を
天界の時空転移装置から、
メルカバーの時空転移装置の中へ転送しておいた。
後、二、三日もすれば、このメルカバーに到着するだろう」
そして二日後に戦闘バイオロイド1000体。
その翌日の9月23日に残りの500体が到着した。
1500体の内の500体をメルカバー内の防衛部隊に回し、
残り1000体を地上及び空戦部隊にそれぞれ500体の増援を送った。
「良し、準備は整ったな。
この戦いはこの世界だけでなく、
我々、天使軍の命運も大きく分ける事になるだろう。
だから我々、熾天使も団結して、共に戦おう」
「「嗚呼」」「ええっ!」
「ではメルカバーを発進させる。
AIシステムに告ぐ。
湖からメルカバーを浮上させて発進せよ」
ラファエルがそう命じると、
メルカバーのAIシステムが起動して、
轟音を轟かせて、メルカバーが湖から浮上した。
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9月23日の午前十時過ぎ。
ニャンニャン湖から浮上した天空の方舟メルカバーは、
南下して、連合軍が陣取るレスシーバ平原に向かった。
それと同時に座天使ソロネ率いる空戦部隊。
主天使ドミニオン率いる地上部隊が
レスシーバ平原に陣取る連合軍の空戦及び地上部隊に攻勢を掛けた。
尚、主天使ドミニオンは、
約300名の天使騎士と戦闘バイオロイド2500体。
座天使ソロネにも天使騎士300体。
戦闘バイオロイド2500体の戦力が与えられた。
空戦部隊の総指揮を任された座天使ソロネは、
目映く輝いた銀色の円盤の上に乗っていた。
ある種の魔道具のようで、
ソロネの意思に従い、この銀色の円盤は空を自由自在に移動出来た。
座天使ソロネは、この場においても漆黒のローブ姿に身を包んでおり、
手足も綺麗に覆われていたので、肌の色は分からなかった。
身長は175前後、顔には中央部に大きな目が記された仮面を被っている。
そして背中に二対四枚の白い翼を生やしていた。
「とりあえず敵の空戦部隊の動きを封じるぞ。
ここで制空権を奪う事より、
メルカバーが敵陣に進攻出来る事を優先せよっ!」
そう言う座天使ソロネの声は、
やはり女性とも男性ともつかない、中性的な声色であった。
「座天使殿、敵の空戦部隊が迫って来ました」
ソロネの側の天使兵がそう叫ぶ。
するとソロネは銀色の円盤の上に立ちながら、
威風堂々と両腕を組みながら、周囲に指示を下す。
「とりあえず応戦せよっ!
天使兵は時魔法で相手を弱体させよ!
その後にエア・バイクに乗った戦闘バイオロイド部隊が突撃せよっ!」
「了解です」
そして150体以上の天使兵が背中の翼を羽ばたかせて、
空を華麗に舞うが、連合軍――ウェルガリア軍の空戦部隊は、
無理に突撃して来る事なく、
魔法攻撃の射程圏外で陣形を固めていた。
こうしてまずは空の戦いが静かに幕を開けた。
だが両軍共に警戒して、お互いに睨み合う展開が続いた。
「――この空の戦いはあくまで前哨戦に過ぎないわ。
だから皆、無理せず程よく戦う事を心がけなさい」
エンドラがそう言うなり、
周囲の空戦部隊も気が楽になったが、
その代わりになかなか戦闘が開始されないという事態を招く事となった。
次回の更新は2025年9月18日(木)の予定です。
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