第六百四十一話 崖っぷちの攻防(中編)
---三人称視点---
エルフィッシュ・パレスの制圧には、
一日に及ぶ残敵掃討戦が繰り広げられた。
巫女ミリアム、エリアス参謀長。
そして女魔導師リリアも転移石を使って、
エルドリア城まで避難したが、
残ったエルフ軍と義勇兵達は、
最後まで抵抗の姿勢を見せて、天使軍と戦った。
地上部隊を率いる主天使ドミニオンは、
無駄な争いと消耗を避けるべく、
天使騎士に強制洗脳状態にさせた魔物と魔獣を
中心として、残敵掃討戦を行った。
また戦闘バイオロイド達には、
敵捕縛用のワイヤー・ガンを使わせて、
敵の身柄をワイヤーで拘束させて無力化にした。
結局十数時間後にエルフ軍の残存兵は、
戦闘不能状態となって、
主天使ドミニオン率いる天使兵と機械兵が
無抵抗な者達には、危害を加えず、
各エリアを制圧して、エルフィッシュ・パレスを手中に収めた。
この際に弱体化した旧文明派のエルフ族は、
駐留部隊に加えず、代わりにダークエルフ部隊に
都市の警備と見張りを任せた。
こうしてウェルガリア歴1606年8月22日。
新都市エルフィッシュ・パレスは、天使軍に制圧された。
この事実はエルドリア城の防衛部隊を率いるマリウス王弟。
魔将軍グリファムの耳にいち早く届いた。
「マリウス王弟殿下。
これからどうすべきか、貴方の意見を聞かせて欲しい」
魔将軍グリファムが真顔でそう問うた。
エルドリア城の二階の会議室にて、
マリウス王弟、魔将軍グリファム。
そして巫女ミリアムとエリアス参謀長。
ニャラード団長とエンドラとレフ団長。
この七人が顔を突き合わせていた。
マリウス王弟とニャラード団長は、
部屋の中央に置かれた長テーブルの前の木製の椅子に座っていたが、
残りの五人は立った状態で、マリウス王弟の言葉を待っていた。
「正直、ボクも悩んでいるニャン。
巫女ミリアムを初めとしたエルフ族を見捨てる事はしないけど、
ボクの一存でエルフ族を猫族領で受け入れる。
とは即答出来ニャいよ、だから兄上に、国王陛下宛てに、
それらの件を記した書状を送りたいと思うニャ」
「我々としても必要以上に種族としての権利は主張しませんわ。
最悪、僻地に難民キャンプを設置しても構いません」
と、巫女ミリアム。
「それもボクの一存では決めれニャいけどね。
まあ政治的な問題はひとまず置いておこう。
ニャラード団長、レフ団長」
「「はい」」
「キミ達としては、エルドリア城にどれぐらい防衛力を
注ぐべきか、忌憚のない意見を聞かせて欲しい」
「私としては敵の次なる攻撃目標は、
我等、猫族の王都ニャンドランドだと思ってます。
ですのでここの防衛部隊は、余力を残した状態で、
猫族軍、そして魔王レクサー陛下率いる魔王軍と
合流するのが何よりも優先すべきでしょう」
「私もニャラード団長と同意見です。
地理的状況を見ても、
ニャンドランドが我が連合軍の最重要拠点となるでしょう」
「ニャー、まあそうなるよね。
でもそうなれば国王陛下や王族を避難させる必要もあるし、
魔王軍、その他の部隊との合流を考えたら、
最低一ヶ月、いや三週間くらいの時間は欲しいよね」
「三週間か~、何とかならなくもない時間かもね。
となるとこのエルドリア城の戦力も維持しつつ、
ニャンドランドに戦力を集めるべきね」
と、エンドラ。
「そうだね、レフ団長。
竜人領から増援部隊を送る事は可能かな?」
「マリウス王弟殿下、私の一存では決めれませんが、
お望みならば、今すぐアーガス族長に書状を送り届けます」
「ウン、じゃあお願いするニャ。
正直、ヒューマンの協力は期待してニャいし、
先の大戦では、現場をよく荒らされたから、
ヒューマンには援軍要請はしたくニャいよ」
これに関しては、他の者達も同意見であった。
となると魔族、猫族、竜人族。
この三種族で天使軍と渡り合う必要がある。
「とりあえず巫女ミリアムとエリアス参謀長は、
頃合いを見て、猫族領へお逃げ下さい」
「「はい」」
「ボクと魔将軍グリファム。
そしてニャラード団長やエンドラ殿、レフ団長は、
エルドリア城に残って限界まで奮戦してください」
「「「はい」」」「了解よ~ん」
するとマリウス王弟は、
胸を張ってピンと背筋を伸ばした状態で、
周囲の者達を見据えて――
「ここから先は本当に厳しい戦いにニャるだろうけど、
ボクらも天使軍に屈するつもりはない。
あの空飛ぶ黒い船にダメージを与える事も出来た。
敵は強力だけど、完全無欠の存在ではニャい。
だから皆で力を合わせて、
奴等――天使をこのウェルガリアから追い出そう!」
マリウス王弟の言葉に周囲の者も小さく頷いた。
魔王レクサー率いる魔王軍の増援部隊。
また猫族領へ避難するエルフ族の避難民。
両者が安全に移動するまで、
エルドリア城に残ったウェルガリア軍は、
この崖っぷちの状況で、
自らの役割を果たすべく、
目の前の敵軍と一進一退の攻防を繰り広げた。
次回の更新は2025年6月26日(木)の予定です。
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