第六百二十五話 流星光底(中編)
---三人称視点---
「――神速多段斬りっ!!」
「――ゾディアック・ブレードッ!」
パワーと剣聖ヨハンが幾度となく切り結ぶが、
お互いに決定打を欠いた状態だ。
しかしこの勝負は一騎打ちではない。
多対一で能天使パワーを追い込む。
それが基本戦術なので、
ラサミス達は焦る事なく、着実にパワーを追い詰めていく。
「今度は私が攻めるわっ!
ハアアアッ……アアアッ!
――ドラゴン・ビートッ!!」
ミネルバが職業能力「ドラゴン・ビート」を発動。
それによって彼女の力と闘気が倍化された。
だがこれで終わりじゃない。
ミネルバは再び職業能力を発動させた。
「お次はこれよっ! ――龍の鼓動っ!!!」
職業能力「龍の鼓動」は、
耐久力と敏捷、そして耐魔力を大幅に上げる職業能力だ。
この二つの職業能力の重ね掛けで、
ミネルバの戦闘力は短期間に急増した。
「最後にコレよ! ――龍調教っ!!」
彼女がそう叫ぶと、
上空に待機させたミネルバの愛竜ギルガストが「ガオオン」と吠えた。
この飛竜ギルガストは、
先の戦いでミネルバが騎乗した際に、
相性が良かったので、レフ団長の厚意で、
ミネルバ専用の飛竜として契約が果たされた。
主である竜騎士と飛竜は、
魔法で契約を結ぶ事が可能だったので、
ミネルバはこのギルガストと主従関係を結んだ。
それによって、
愛竜ギルガストはミネルバの命令を何よりも優先させる。
だが今は飛竜に乗る状況ではない。
まずは接近戦で挑む。
そう心に刻み、ミネルバは全力で地を蹴った。
「フンッ! 小娘如きに負けるかっ!」
「ならばその小娘の力を思い知れっ!
せいやぁっ! ――トリプル・スラストッ!」
「甘いっ! ――ナイトメア・スラッシュ」
ミネルバの三連突きに対して、
パワーは帝王級の大剣スキルで応戦。
パワーの持つディバイン・ソードの効果と相まって、
ミネルバの漆黒の魔槍の突きを易々と防いだ。
「くっ……ならば! ――ペンタ・トゥレラッ!!」
今度は英雄級の槍術スキルを繰り出すミネルバ。
魔槍カーミルランスの穂先が高速で前方に突き出される。
だがパワーも返し突き。
また華麗な足裁きでこの五連撃を完璧に回避する。
「なっ……」
「――甘いっ!」
パワーはここで無詠唱で魔法攻撃を仕掛けた。
すると彼の周囲の地面から、
複数の石と岩が浮遊して魔力を帯びた。
そしてパワーが左手を前に突き出すと、
浮遊した石や岩がミネルバ目掛けて放たれた。
「ミネルバ、無理するな!」
「大丈夫! 何とか躱してみせるわっ!」
ラサミスの心配を他所に、
ミネルバは高速でステップを刻み、
飛び交う石や岩を次々と躱していく。
そこでパワーは第二射を放つ。
今度はもっと威力も速度も上げた状態だ。
ミネルバも上下左右に避けてるが、
所々で石を身体に当てられて、
気が付けば、何カ所か痛める事となるが、
それで気押される事なく――
「――スピニング・ツイスターッ!」
ミネルバは漆黒の魔槍を手元で風車のように横回転させて、
飛来して来る石や岩を綺麗に弾き返した。
ミネルバとて第二次ウェルガリア大戦の生き残り。
またその後も絶えず特訓を重ねて、
レベルも戦闘技術も向上させていたが、
相手は大天使、当然一筋縄でがいかない。
「――地形変化っ!」
今度はミネルバの周囲の地面を泥沼化させた。
だがミネルバもこの時に備えて対策を打っていた。
「――ハイジャンプッ!
ギルガスト、来てっ!!」
「ガオオオンッ!」
ミネルバは咄嗟に職業能力「ハイジャンプ」で
泥沼化する地面から上空に高く飛び上がった。
それを待ち受けていたように、
愛竜ギルガストがミネルバに近づく。
ミネルバが上手い具合にギルガストの鞍に乗り込んだ。
「良し、このままアイツに目掛けて突撃よっ!」
主の言葉に従い、
ギルガストは急降下して、パワーに迫った。
「たかが竜如きに怯む俺ではないっ!」
再び左手を前に突き出すパワー。
間を置かずして、浮遊した石と岩がミネルバ目掛けて放射される。
「そう来るのは百も承知よっ!
――宙返りッ!!
ミネルバが短縮詠唱で英雄級の風魔法を唱える。
するとギルガストは、両翼を羽ばたかせて上昇して、
綺麗な宙返りを華麗に決めて、
パワーが放った石と岩を見事に回避。
「なっ……!?」
「貰ったぁ! ――ブラスト・ジャベリン」
ミネルバが右手に持った漆黒の魔槍を投擲。
闇の闘気を宿らせて魔槍は、
パワーの鎧の隙間の左足の大腿部に命中。
「ぐはぁっ! お、おのれっ!!!」
「――リバースッ!」
パワーが呻く中、
ミネルバは念動力で、
パワーに突き刺さった魔槍を手元に手繰り寄せた。
「私はこのまま上空に待機するから、
後の事は下に居る皆に任せたわ」
見事なヒット&アウェイを決めて、
上空に逃げ込むミネルバ。
「くっ……この程度の傷などっ!
――ディバイン・ヒールッ!」
パワーは左手を左足の大腿部に当てて、
回復魔法を唱えて、傷を癒やそうとするが……。
「がはあぁぁぁっ!!」
次の瞬間、パワーの鎧の隙間の腹部から赤い鮮血が吹き出した。
中列から火薬の匂いが漂ってきた。
思わず後ろに振り返るラサミス。
すると背後に膝撃ち状態のマリベーレの姿が見えた。
「今使ったのは、氷と風の合成弾だよ。
腹部に命中したから、例え回復魔法を使っても、
完全に治癒する事は無理だよ!」
「そうか、マリベーレ!
ありがとうな、良しっ……ならばこのチャンスを生かすぜ!」
――疾走ッ!!」
ラサミスはそう言って、
疾走を発動して、
左手に吸収の盾。
右手で聖刀・顎門の柄を握りながら、
身を低くして、パワー目掛けて突貫した。
次回の更新は2025年5月20日(火)の予定です。
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