第六百十六話 剛毅果断(前編)
---ラサミス視点---
ウェルガリア歴1606年8月7日。
オレ達はリアーナの瞬間移動場から、
猫族領の王都ニャンドランドへ瞬間移動で転移した。
そこからは転移石でガルフ砦の関所へ転移。
すると関所の門番のキジトラの猫族に呼び止められた。
「ラサミス・カーマイン殿ですね?」
「はい、そうですが……」
「マリウス王弟殿下から伝言を授かってます。
カーマイン殿一行は、ここからエルフィッシュ・キャッスルに向かい、
王弟殿下や巫女ミリアム様を交えて、
今後について会議を行う、との事です」
「そうか、それは断る訳にもいかないな。
そういう事だ、今夜はこのガルフ砦に泊まるぞ。
そして明日からエルフィッシュ・パレスへ向かうぞ」
「「「「了解」」」」「「はい」」
そして翌朝の8月8日。
オレ達は、マリウス王弟が用意してくれた二台の馬車に乗り込んだ。
一台目にはオレ、ジウバルト、ミネルバ、バルデロン。
二台目にはメイリン、ジュリー、マリベーレという組み分けになった。
二台とも男性のエルフ族が御者を務めて、
ひたすら馬車を走らせて、アスラ平原を駆け抜けた。
用心の為に夜は、テントを張って野営した。
馬車を走らせる事、三日目の8月11日。
オレ達は無事にエルフィッシュ・パレスに到着した。
とりあえずオレは馬車のエルフ族の御者さん二人に、
相場より結構多めの報酬を手渡した。
こういう時はケチったら駄目だよな。
オレ達の目の前にはモノトーンでまとめられたシックな雰囲気に、
自然が融合したエルフィッシュ・パレスの街並みが広がっていた。
「ここに来るのは、わりと久しぶりだが、
前以上に栄えている感じがするな」
「そうね、人も前以上に居る気がするわ」
と、メイリン。
「せっかくここまで来たから、
少し街をぶらぶらしたい気もするけど、
団長的には、その辺どうかしら?」
「ミネルバ、気持ちはよく分かるが、
今回は止めておこう。
この後に大事な戦いを控えているからな。
今のうちから気持ちを高めておこう」
「そう、分かったわ……」
「悪いな、この埋め合わせは必ずするよ。
とりあえずこのままエルフィッシュ・キャッスルへ向かうぞ」
そしてオレ達は、一直線にエルフィッシュ・キャッスルへ向かった。
十五分後、エルフィッシュ・キャッスルの城門に到着。
「ラサミス・カーマイン殿と「暁の大地」の方々ですよね?」
左側に立った赤毛の男性エルフ族の門番がそう問いかけてきた。
「そうです」
オレがそう言うと、門番の二人が姿勢を正して敬礼した。
「巫女ミリアム様からお話を聞いております。
どうかご自由にお通りください」
「はい、警備ご苦労様です。
おい、皆! 行くぞっ!!!」
オレ達は堂々とした歩調で城門をくぐる。
すると満開の花が咲き誇る庭園が視界に入った。
花の種類は、白百合、グラジオス、ラベンダーなど。
それ以外の花は少し分からないな。
「ここは相変わらず綺麗ね」
と、メイリン。
「そうね、庭園の手入れも行き届いてるわ」
感心したようにそう言うミネルバ。
「巫女ミリアム様は、こういう景観を非常に大切にする御方なのよ。
大聖林の木々や花の手入れも徹底してるよ」
マリベーレは、何処か誇らしげな表情でそう言った。
まあ確かに景観だけでなく、
城外や城内の内装や調度品のセンスも良いよな。
まさかここまで大都市に発展するとはね。
でもこの先の戦いに負けたら、
このエルフィッシュ・パレスも大天使達に――。
あるいは旧文明派のエルフ族に、
この大都市が占拠されるだろう。
巫女ミリアムとしては、その状況は何としても回避したいだろう。
だがその皺寄せでオレ達の任務が厳しくなるのはゴメンだ。
まあ多少きついのは我慢するが、
巫女ミリアムが無理難題を吹っかけたら、
その時は、のらりくらりと躱すぜ。
その後、正面玄関にも男性エルフ族の衛兵が二人立っており、
オレ達の姿を見るなり、敬礼した。
それに対してオレ達も敬礼で返した。
「どうぞ、城の中にお入りください。
二階の謁見の間で、
巫女ミリアム様とマリウス王弟殿下。
それ以外の連合軍の首脳部の方々がお待ちしております」
「ご丁寧にありがとうございます」
その後、城内に入るとナース隊長が待っていた。
「カーマイン殿、久方ぶりだな」
「ええ、ナース隊長、お久しぶりです」
「ここから先は私が案内しよう。
私が先を歩くから、後についてきたまえっ!」
「はい!」
エルフィッシュ・キャッスルの内部は、相変わらず綺麗だな。
白を基調とした石造りの内装が良いな。
でも見た目だけじゃないくて、
耐魔力の高い魔石を使用してるんだよな。
心なしか、周辺を歩く兵士や武官、文官に表情が険しい気がする。
まあ自治領エルバインの侵攻作戦が本格化しそうだし、
穏健派のエルフ族としては、
否が応でも緊張感が高まるんだろうな。
「着いたよ、それでは悪いが君達の武装を解除させてもらう」
「……了解です」
謁見の間の前の扉には、数名の衛兵が待機していた。
そしてその衛兵達は、ナース隊長の指示に従うべく、
部屋の前で慣れた手つきでオレ達の武装を解除した。
「悪く思わんでくれよ。
あくまで念の為だ」
と、ナース隊長。
「……分かっていますよ」
まあオレ達も今では少しは名が売れた連合だからな。
ぶっちゃけ丸腰状態でも、
ここに居る衛兵達をぶっ倒す事も可能だろう。
さて、この中で巫女ミリアムやその側近。
またマリウス王弟や連合軍の首脳部が待っている。
巫女ミリアムが急遽、オレ達をこの城に呼んだのも気になるぜ。
まあ仕事だから、大概の命令には従うが、
あまりにも無茶な任務が課せられたら、
その時は上手い具合にはぐらかすかな。
さて、ここからはオレの交渉術の見せどころだな。
巫女ミリアムや他の首脳部の言葉に耳を傾けつつ、
オレ達がどう動くべきか、その辺を見定めるか。
次回の更新は2025年5月1日(木)の予定です。
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