第六百四話 波状攻撃(前編)
---三人称視点---
デュークハルトの機転によって、
能天使パワーは、少なからずのダメージを負った。
そしてこの好機を逃すまいと、
剣聖ヨハンとラサミスは波状攻撃を仕掛けた。
「兎に角、少しでも相手を弱らせるっ!
――敏捷性吸収!!」
ヨハンは強化戦士の職業能力『能力吸収』を発動させた。
それによってヨハンは、パワーから敏捷性を奪って、自分の敏捷性も強化させた。
これで一時的とはいえ、
パワーの敏捷性、スピードを下げる事に成功。
そしてこの状況でラサミスが更なる追い打ちをかけた。
「――零の波動!!」
ラサミスは咄嗟に左手を前にかざして、
職業能力「零の波動」を発動させる。
次の瞬間、ラサミスの左手から白い波動が迸り、
前方の能天使パワーの身体に見事に命中した。
「な、なっ!?」
自分でも力や魔力が下がった事を痛感するパワー。
これでパワーにかかっていた支援魔法。
強化能力は無慈悲にも強制解除された。
それに加えてラサミスは「明鏡止水」で、
能力値が倍化された状態。
この状態で攻めなくていつ攻める。
それを実現するべく、ラサミスが果敢に攻撃を仕掛けた。
「――諸手突きっ!」
「舐めるなぁっ! ――クレセント・ストライクッ!」
ラサミスとパワーの聖刀と青い大剣が激しく衝突するが、
能力値が倍化されたラサミスにとっては、
これぐらいの攻撃なら問題なく受け止められた。
「くっ……この俺の一撃を受け止めるとはっ!!」
「何を驚いているんだ?
この程度の攻撃で止まるオレじゃねえよ。
オレはこう見えて魔族の幹部や魔王とも死闘を演じてきたんだ。
お前等、大天使は確かに強いが、
魔族と比べて圧倒的に強いという訳でもねえ。
アーク・エンジェルもプリンシパティもこのオレが倒した。
トロトロしていると、お前も殺っちゃうぜ?」
「……」
ラサミスの言葉に押し黙るパワー。
だが彼は別におののいた訳ではない。
彼自身、まだまだ闘志も戦意もあった。
だがこの状況下でこの特異点と金髪のヒューマンの相手は厳しい。
ここは頃合いを見て、逃走すべきだ。
と、頭の中で高速で算盤を弾くパワー。
だが彼にも大天使としての意地はある。
何の手土産も無しに撤退する。
そんな恥知らずの真似は出来ない。
パワーはそう胸に刻みながら、
左手を前へ突き出して、
無詠唱で土属性魔法を発動させた。
「くっ……ここで無詠唱魔法攻撃か!」
「ラサミスくん、慌てるなっ!
この程度なら対魔結界で防げる。
――ライト・ウォールッ!」
「了解です、ヨハンさんっ!
ハアァア……アァァァッ! ライト・ウォールッ!」
ラサミスとヨハンも咄嗟に光属性の対魔結界を張った。
パワーが放った石や岩石が彼等の張った対魔結界に命中。
だが対魔結界を撃ち破るまでには至らない。
「おい、パワーさんよ。
オレ様の事も忘れんなよっ! ――サンダーボルトッ!」
またしても不意を突く形で、
デュークハルトが素早く呪文を紡ぎ、
その左椀から電撃魔法を放出した。
「くっ! う、うおおおっ!」
思わず仰け反るパワー。
デュークハルトの電撃魔法は、
パワーの左椀に見事に命中して、
電撃によって、その皮膚を焦がした。
「――パワー殿!
――ディバイン・ヒールッ!」
近くに居た天使兵が我が身を顧みず、
パワーに近づいて、上級回復魔法を唱えた。
「余計な真似はするなっ!
――ゾディアック・ブレードッ!」
「ぎ、ぎゃあぁぁぁっ……!!!」
ヨハンの聖剣が容赦なく、天使兵を切り裂いた。
聖剣に加えて固有剣技。
その強烈なコンボで一撃で天使兵を再起不能へ追いやった。
「ちっ……またあの金色狼か。
油断ならぬ奴だ、だが今ので俺の左椀は回復した。
もう二度と不意打ちは喰らわぬっ!」
「はいはい、んじゃオレはまた中衛に下がるぜ。
カーマイン、剣聖さんよ。
コイツの料理は任せたぜっ!」
「「嗚呼っ!!」」
良い感じに不意を突くデュークハルト。
彼のこの行動でラサミスとヨハンも俄に士気が増した。
「それじゃここからは怒濤の波状攻撃で攻めるぜっ!
くたばりやがれっ! ――五月雨突きっ!」
「舐めるなっ! 神速多段斬りっ!!」
ラサミスのラッシュに対して、
パワーも帝王級の大剣スキルで応酬する。
聖刀・顎門と青い大剣――ディバイン・ソードは、
何度も切り結んでも、折れることがなく、
力の限り真正面から衝突した。
だがパワーは強制解除された状態。
対するラサミスは能力値が倍化された状態。
武器も剣技もほぼ互角であったが、
能力値で勝るラサミスが力で押し切った。
「ぐっ……力の差で押されたっ!!」
「せいやぁぁぁっ! 居合抜きっ!!!」
瞬時に腰を落として、
ラサミスは聖刀の刃でパワーの喉笛を水平に切り裂いた。
「ぐ、ぐはあぁぁぁっ!!!」
次の瞬間、パワーの喉笛から鮮血が吹き出して、周囲に飛び散った。
僅かに後ろに下がった為、
致命傷にはならなかったが、決して軽傷ではなかった。
だがパワーは強靱な意志で耐え抜き。
左手を傷口に当てて、短縮詠唱で回復魔法を唱えた。
「ア、ア……ーク……ヒールゥゥゥッ!!!」
パワーが呪文を唱えるなり、
彼の喉笛の切り傷が急速に癒えていった。
「……良し、傷は癒えたっ!」
切り裂かれた喉笛も元に戻り、
ちゃんと肉声で喋れる事を確認すると、
パワーは背中の二枚一対の純白の翼を羽ばたかせて、
空を飛んで、距離を保とうとしたが――
「逃がすかぁっ! ――雷炎剣っ!!!」
ラサミスは勝負を決めるべく、
神帝級の刀術スキル「雷炎剣」を放った。
ラサミスの聖刀に紅蓮の炎が宿り、
照準をパワーに合わせて、その聖刀を振った。
すると紅蓮の炎がパワー目掛けて放たれた。
「くたばれっ!!!」
ラサミスの言葉通りに、
紅蓮の炎がうねりを生じて、パワーに急速に迫るが――
次回の更新は2025年4月3日(木)の予定です。
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