第三百九十四話 竜驤麟振(中編)
---三人称視点---
星形要塞攻略戦が始まって、約一週間が過ぎた。
連合軍の第一軍は、剣聖ヨハンの獅子奮迅の働きによって、早くも南部エリアの外堀を埋める事に成功する。
だがエルフ族の穏健派が主力を務める第二軍。
それと山猫騎士団率いる第三軍。
その双方が魔王軍の大軍の前に悪戦苦闘していた。
だがこれ自体は不思議な事ではない。
何せ敵も必死だ、それ故に敵の抵抗も強い。
云うならば第一軍、それも剣聖ヨハンの戦闘力が規格外なのだ。
そしてその剣聖ヨハン達、第一軍の主力部隊が第三軍が陣取る西部エリアの増援に駆け付けた。 だが第三軍にも意地があった。
特に山猫騎士団は、先の戦いで団長のレビンが戦死した。
その弔い合戦をすべく、団長代理のスナドリネコのケビンを先頭に、戦乙女のジュリー・シュナイダー。 陽気なカラカルの銃士ラモンが果敢に敵を攻め立てた。
「レビン団長の弔い合戦だ!
兎に角、ひたすら敵を叩くんだァッ!!」
「了解よ、――スピニング・ドライバーッ!」
「ヘイ、ヘイ、ヘイ、オレ様、超アングリーッ!
視界に入る奴は容赦なく射殺するぜいっ!
――スナイパー・ショットォォォッ!!」
戦乙女のジュリーが細剣を縦横に振るい、
銃士ラモンが両手に持った黒い拳銃の引き金を引き続ける。
「――此奴ら、猫族だァッ!
此奴ら、相手なら充分戦えるぞォォォッ!」
両翼を羽ばたかせて、宙を舞う鳥人。
だがそんな鳥人目掛けて、ケビンが手にした手斧を投擲する。
「――ハイパー・トマホークッ!!」
ケビンがそう技名を叫ぶなり、鋭く回転したミスリル製の手斧が鳥人の喉笛に命中。
「ぎ、ぎ、ぎゃあぁっ!?」
「――リバースッ!」
ケビンが眉間に皺を寄せて、念動力を発動。
すると鳥人の喉笛に突き刺さった手斧が ケビンの手元にたぐり寄せられた。
「猫騎士連中も燃えているようだな」
と、ラサミス。
「そのようだな、ならば俺達は俺達の役割を全うするぞ」
ライルがそう云って、鞘から聖剣を引き抜いた。
そしてラサミス、ミネルバも同様に刀と戦槍を構えた。
「――ファルコン・スラッシュ!」
「光流斬っ!!」
「ヴォーパル・スラスト!」
ライル、ラサミス、ミネルバも技を駆使して、
眼前の魔物、魔獣、魔族兵を斬り捨てる。
するとそれに触発されたのか、
「ヴァンギッシュ」の面々も果敢に敵を攻め立てた。
「――火炎斬」
「――デス・ジャグリングッ!!」
女侍アーリアが刀を振るい、曲芸師の猫族ジョルディーが手にした鉄球でジャグリングしてから、前方の敵に向けて投げつけた。
「う、うわァァァッ!!」
「こ、此奴ら……強いっ!!」
思わずたじろぐ魔王軍の兵士達。
更に追い打ちをかけるべく、剣聖ヨハンが全身に風の闘気を纏った。
「――ハアァァァッ……アアァァァッ!」
ヨハンが気勢を上げるなり、 彼の全身に猛るような風の闘気が渦巻く。
剣聖が発する闘気だけあって、研磨された針のように、物凄く鋭い闘気であった。 そしてヨハンは両手で聖剣を構えながら――
「秘技・八艘飛びっ!!」
と、技名をコールするなり左斜めにジャンプした。
地面に着地すると同時に薙ぎ払いで眼前の鳥人を斬り捨てる。
更に次は右横に跳躍、今度は眼前の半人半鳥に縦斬りを喰らわせた。
「き、キャアァァァッ!!」
顔を縦に裂かれて悲鳴を上げる半人半鳥。
だがヨハンの攻撃は止まらない。
再度、左斜めに跳躍、それと同時に袈裟斬りを放つ。
すると眼前のガーゴイルの肩口から胴体部が綺麗に裂かれた。
瞬く間に敵を三体斬り捨てる剣聖ヨハン。
だがヨハンの動きは鈍るどころか、更に速度は増した。
「せいっ! ――ピアシング・ドライバーッ!!」
ヨハンは前方に大きく跳躍して、地面に着地すると同時に眼前のブルテッシュ・リザードに突きを繰り出す」
「ギ、ギョァアァァ……アアァッ!!」
これで四体目。
次々とジャンプして、敵を斬り捨てるヨハン。
その華麗かつ無駄のない動きに敵だけでなく、味方であるラサミス達も固唾を呑んだ。
「スゲえ……これは強化剣士の技か、それとも能力なのか?」
と、ラサミス。
「……あるいは独創的技かもしれん」
「そうか、成る程……」
ライルの言葉に小さく頷くラサミス。
その間にもヨハンは五度、六度と飛び敵に技を放つ。
更に七度、八度と飛び、瞬く間に八体の敵を斬り捨てた。
「合計八度も飛んだよ。 スゲえ技だ。 八艘飛びか。 これは小柄なヨハンさんだから出来る大技だな」
ラサミスが感心しながらそう云う。
すると近くに居た猫族のジョルディーがニヤリと笑った。
「うむ、それに気付くとは流石は幹部殺しのラサミス君だニャン。 あの独創的技は、東方の国ジャパングの古き英雄から着想を得た技なんだニャン」
「そう……なんですか?」
と、ジョルディーに問うラサミス。
「そうだニャン、確かにヨハンは小柄だけど、戦いにおいて必ずしも大男が小男に勝つわけではない。 ジャパングのその英雄もかなりの小男だったらしいが、天下分け目の戦いでは、海上で次々と船を飛び移り、その都度、敵を斬り捨てたらしいニャン。 だから八艘飛びという名がついたニャン」
「へえ、なんだかスケールのデカい話だな。 確かヨハンさんは前にジャパングに居たと云ってたが、アンタ等も一緒に居たのかい?」
「まあそうだニャン」
「ジョルディー、お喋りはそれくらいにしなさい。
まだ戦いが終わった訳じゃないわよ」
「そうだな、アーリア。 分かったニャン。
じゃあオイラ達もヨハンのサポートをするニャン」
「了解ッス、じゃあ兄貴、ミネルバ。
オレ達もヨハンさんのサポートに回ろう」
「ああ」「そうね」
その後も第三軍は破竹の勢いで敵兵を蹴散らして行った。
先陣を切る剣聖ヨハンは、攻撃魔法と技、職業能力を駆使して、次々と敵兵を戦闘不能に追いやる。
ラサミス達はそのサポートをしながら、
自分達の出来る範囲で周囲の敵を斬り捨てる。
また山猫騎士団の面々も自らの存在をアピールすべく、勇猛果敢に戦った。
だが敵兵も死を恐れず、必死に抵抗する。
一進一退の攻防が連日続いたが、四日目で敵の抵抗は完全に途絶えた。
そして迎えた9月9日。
第三軍は西部エリアの制圧に成功したように見えたが、星形要塞の西門から再度、敵部隊がやって来た。 それをヨハン達が食い止めている間に、猫族の魔導猫騎士ニャーラン、ツシマンが先頭に立って西部エリアの外堀を土魔法で埋め立てて行く。
ヨハン達が敵部隊を食い止めて、三日目の9月12日。
西部エリアの外堀の埋め立て作業がほぼ完了した。
こうして連合軍の第一軍と第三軍は見事に任務を果たした。
「よし、これで残すは東部エリアのみ。 マリウス王子の許可を取って、またボク達で東部エリアの援軍に向かおう」
ヨハンの言葉に周囲の者達が大きく頷く。
そしてヨハンは携帯石版でマリウス王子と連絡を取った。
「うむ、流石は剣聖ヨハン殿ですな。 どうやら第二軍は予想以上に苦戦しているようだニャン。 だからまた飛竜に相乗りして、東部エリアへ向かって欲しいだニャン」
「了解です」
そしてヨハン達は再び竜騎士の飛竜に相乗りして、東部エリアに向かうのであった。
次回の更新は2022年5月28日(土)の予定です。
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