第三百八十五話 戮力協心(前編)
---三人称視点---
魔帝都での戦いは、三日三晩続いたが、龍族部隊による猛攻の前に、連合軍の侵攻は食い止められていた。 そこでマリウス王子は、一時的に全軍を魔帝都の近くの野営地まで後退させた。
この三日間の戦いだけで、既に戦死者は1700人を超えており、このままだと戦死者の数が更に増加するのは明白であった。 その状況を打破すべく、翌日の8月10日の早朝。 マリウス王子は本陣に各部隊の頭目と主力を呼び寄せる。
マリウス王子が本陣の床几に腰掛ける中、マリウス王子を囲むように、時計回りにジョニー、ヨハン、アイザック、ケビン副団長、レフ団長。 そしてライル、ラサミス、それとニャラード団長、ガルバンが陣取って居た。
「やはり問題は龍族部隊だニャン。 奴等の戦闘力は他の部隊とは比べものにならないニャン。正直、正面から戦うのは危険だニャン。 だが敵も必死、それ故に奴等との戦いは避けられないニャン」
マリウス王子はそう云って、渋面になって「う~ん」と唸る。
王子に釣られるように、他の者も自然と厳しい表情となった。
「敵の司令官と思われるあの紫鎧の龍族は、ヨハン殿、アイザック殿、ライル殿の三人で食い止めてくれ。 あの化け物を自由にさせたら、更に戦死者は拡大するニャン」
「ええ、奴は我々で食い止めます。
その間に他の龍族を一人でも多く倒して欲しいです」
「そうですね、三対一なら何とか戦えます。 ですがいつまで持つか、少し自信がありません。
ヨハン殿が云うように、早い段階で龍族の数を減らして欲しいですね」
ヨハンとアイザックが控え目に意見を述べる。
するとそれに便乗するようにラサミスも意見を述べた。
「ならばオレがその役を受けましょうか? オレとミネルバ、それともう一人か、二人居れば、多分ある程度は龍族を倒せると思います」
「そうだね、君ならばそれが可能かもしれん。 なんならウチのアーリアやクロエ、カリンと組むかい?」
「ヨハンさん、いいんですか?」
ラサミスの問い掛けにヨハンは「ああ」と頷いた。
するとラサミスは、右拳を自分の左掌に押し当てた。
「あざっす、その三人が加われば、虎に翼ですよ!」
「ウム、そうだな。 ラサミスくんの成長は著しいからね。 だからこの大役はラサミス君に任せていいと思うニャン」
「そうですな」「ええ」
と、ジョニーとガルバンが相槌を打つ。
「それ以外の前衛部隊の配置はどうします?」
と、ケビン副団長。
「そうだニャン、レビン団長を失った山猫騎士団は、中衛でニャラード団長の魔導猫騎士部隊を護衛して欲しいだニャン」
「了解です」と、ケビン副団長。
「我々、ネイティブ・ガーディアンも前線で戦いたいです。 我等エルフ族にも意地がありますので!」
ナース隊長が凜とした声でそう云った。
「そうだね、ではお願いするニャン。 それとレフ団長には、今まで通り空戦部隊を指揮してもらいたい」
「はっ、お任せください!」
「よし、とりあえず基本戦術は決まったニャン。 こちらとしては、早く魔帝都を制圧したいが、敵も必死、だから我々は敵以上に団結して戦うニャン」
マリウス王子がそう云うと、周囲の者達も「はい」と大きな声で返事する。
そして朝の十時を迎えたところで、連合軍は再び魔帝都に進軍を開始した。
---ラサミス視点---
「ハアァッ……居合斬りっ!!」
「ぬうぅっ……おおおぉっ!?」
女侍アーリアがどっしりと腰を落として、眼前の龍族に向かって、高速で居合斬りを放った。 すると眼前の龍族の喉笛が水平に裂かれた。
その無駄のない動きはまさに電光石火。
流石は最強連合の攻撃役。
動きに無駄がない上に実に速い。
だがオレはオレで自分の役割を果たすぜ。
「止めだァッ!!」
オレは喉笛を斬られた龍族の前に立ち、右掌を眼前の龍族の胸部に押し当てた。 オレの「徹し」が決まり、目の前の龍族が後方に吹っ飛んだ。
これでも十人は倒しただろう。
此奴ら、確かに強い事は強いが、一般兵に限っては、想像していたよりかは強くない。 少なくとも今の面子ならば、互角以上に戦える。
「くっ、アイツら強いぞっ!」
「狼狽えるな、我々はこの場を魔元帥閣下に任された。 ならば閣下のご命令を遂行すべく、全力を尽すのみ。 我が剣を持って、眼前の敵を蹴散らしてくれようっ!」
そう云って、前方の漆黒の鎧を着た龍族が白刃の大剣を構えながら、こちらに向かって突貫して来る。 チッ、力勝負じゃこちらが少し不利だな。 ……んっ?
「――抜かせっ!」
アーリアはそう叫ぶと同時に、円状の小さい物体を握っていた右手の親指を高速で弾いた。すると弾かれた円状の小さい物体が漆黒の鎧の龍族の右眼に命中。
「ぐ、ぐああぁっ……あああッ!!」
漆黒の鎧の龍族が絶叫する。
今のは指弾スキルか?
まあいい、この機の逃す手はない!
「――乱火風光剣っ!!」
オレはそう叫びながら、独創的技を繰り出した。
顎門の刀身に風の闘気を宿らせて、袈裟斬りを放つ。
「あっ……あああぁっ!」
袈裟斬りが綺麗に決まり、眼前の龍族が右肩口から血を流しながら呻き声を上げる。 そしてオレは更にそこから刀身に炎の闘気を宿らせた。 そこから逆袈裟斬りを放ち、眼前の龍族の身体に×の字を刻み込んだ。
風と炎が交わり、魔力反応『熱風』が発生。
よし、綺麗に決まった。 後は仕上げだぁっ!
オレは右手に持った顎門の刀身に、今度は光の闘気を宿らせる。
「止めだぁっ!!」
「ぐ、ぐはぁっ!?」
×の字が刻まれた龍族の身体に、今度はその腹部目掛けて、回転力のある渾身の突きを繰り出した。 次の瞬間、オレの手元に確かな感触が伝わった。 それによって魔力反応が『熱風』から『太陽光』に変化する。
すると眼前の龍族は、地獄の底から響くような断末魔の叫びを上げて、背中から地面に倒れ落ちた。
「が、ガリアンが殺られたっ!」
「此奴ら、本当に四大種族か!?」
周囲の龍族が驚き戸惑う。
するとその間隙を突くように、錬金術師のクロエが攻勢に出た。
「――地形変化開始っ!」
クロエは素早く両手で印を結んで魔力を解放する。
次の瞬間、前方の龍族の集団の足下の地面が凍り付いた。
不意を突かれた龍族の集団は、転倒、あるいは態勢を崩した。
するとクロエは腰帯にぶらさげた茶色の皮袋に右手を突っ込んで、白水晶の欠片を取り出した。 クロエはその白水晶の欠片を右手に握りしめて、龍族の集団の頭上に目掛けて放った。
「水晶よ、弾けよっ!!
セイァッ……アァッ! 『シャイニング・シャワー』」
クロエがそう叫ぶなり、敵の頭上に放られた白水晶の欠片が目映く輝き、四方八方に砕け散った。 そして刃のような形をした光の塊となり、敵の頭上から、シャワーのように降り注いだ。
「ぬおおおぉっ……おおおぉっ!?」
降り注ぐ光を浴びた龍族の集団が激しく悶える。
無駄のない速攻だ。
ここは更に追撃して敵を倒すべきだ。
「――メイリンッ!」
「分かってるわよ! 我は汝、汝は我。 我が名はメイリン。 ウェルガリアに集う炎の精霊よ、我に力を与えたまえ! 行くわよおぉッ……! 『スーパーフレアッ』!!」
メイリンが呪文を紡ぐなり、彼女が持った両手杖の先端の翠玉に緋色の波動が生じた。 そしてメイリンは前方に向けて緋色の波動を放射する。
数秒後、緋色の波動が着弾。
すると光属性と炎属性が交わり、魔力反応「核熱」が発生。
それと同時に前方の龍族の集団が悲鳴を上げる。
「よし、上手い具合に連携が取れている。
この調子で確実に一体ずつ倒していくぞ」
「了解だ、アーリアさん。
ところでさっき使ったのは何のスキルだい?」
オレがそう云うと、アーリアは「ああ」と頷いて、右手の親指と人差し指で一グラン銅貨を摘まんだ。
「投げたのはこの銅貨さ。 侍は指弾スキルや投擲スキルに優れた職業なのさ。 他にもスタン系の技が得意だったりする」
「ほう、所謂、銭投げってやつですかい?
でも何度も何度も使ってると、懐が寂しくなりそうだ」
するとアーリアが「クス」と笑った。
「違いない、だからこの銭投げは緊急時にしか使わん。 私を貧乏にしない為にも、君達には奮闘してもらわんとな」
「了解ッス、生き残ってたっぷりと報奨金貰いましょうや」
「ああ、そうだな」
そしてオレ達はその後も、オレ、アーリア、ミネルバが攻撃役を務め、クロエやカリン、メイリンが中衛から攻撃。
そして後方からマリベーレが狙撃。
という戦術で次々と龍族の集団を確実に一人、一人倒していった。
次回の更新は2022年5月7日(土)の予定です。
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