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【天界編開始!】黄昏のウェルガリア【累計100万PV突破】  作者: 如月文人
第五十八章 戮力協心(りくきょくきょうしん)

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第三百八十五話 戮力協心(前編)


---三人称視点---


 魔帝都での戦いは、三日三晩続いたが、龍族部隊による猛攻の前に、連合軍の侵攻は食い止められていた。 そこでマリウス王子は、一時的に全軍を魔帝都の近くの野営地まで後退させた。


 この三日間の戦いだけで、既に戦死者は1700人を超えており、このままだと戦死者の数が更に増加するのは明白であった。 その状況を打破すべく、翌日の8月10日の早朝。 マリウス王子は本陣に各部隊の頭目と主力を呼び寄せる。


 マリウス王子が本陣の床几しょうぎに腰掛ける中、マリウス王子を囲むように、時計回りにジョニー、ヨハン、アイザック、ケビン副団長、レフ団長。 そしてライル、ラサミス、それとニャラード団長、ガルバンが陣取って居た。


「やはり問題は龍族部隊だニャン。 奴等の戦闘力は他の部隊とは比べものにならないニャン。正直、正面から戦うのは危険だニャン。 だが敵も必死、それ故に奴等との戦いは避けられないニャン」


 マリウス王子はそう云って、渋面になって「う~ん」と唸る。

 王子に釣られるように、他の者も自然と厳しい表情となった。


「敵の司令官と思われるあの紫鎧の龍族は、ヨハン殿、アイザック殿、ライル殿の三人で食い止めてくれ。 あの化け物を自由にさせたら、更に戦死者は拡大するニャン」


「ええ、奴は我々で食い止めます。

 その間に他の龍族を一人でも多く倒して欲しいです」


「そうですね、三対一なら何とか戦えます。 ですがいつまで持つか、少し自信がありません。

ヨハン殿が云うように、早い段階で龍族の数を減らして欲しいですね」


 ヨハンとアイザックが控え目に意見を述べる。

 するとそれに便乗するようにラサミスも意見を述べた。


「ならばオレがその役を受けましょうか? オレとミネルバ、それともう一人か、二人居れば、多分ある程度は龍族を倒せると思います」


「そうだね、君ならばそれが可能かもしれん。 なんならウチのアーリアやクロエ、カリンと組むかい?」


「ヨハンさん、いいんですか?」


 ラサミスの問い掛けにヨハンは「ああ」と頷いた。

 するとラサミスは、右拳を自分の左掌に押し当てた。


「あざっす、その三人が加われば、虎に翼ですよ!」


「ウム、そうだな。 ラサミスくんの成長は著しいからね。 だからこの大役はラサミス君に任せていいと思うニャン」


「そうですな」「ええ」


 と、ジョニーとガルバンが相槌を打つ。


「それ以外の前衛部隊の配置はどうします?」


 と、ケビン副団長。


「そうだニャン、レビン団長を失った山猫騎士団オセロット・ナイツは、中衛でニャラード団長の魔導猫騎士部隊を護衛して欲しいだニャン」


「了解です」と、ケビン副団長。


「我々、ネイティブ・ガーディアンも前線で戦いたいです。 我等エルフ族にも意地がありますので!」


 ナース隊長が凜とした声でそう云った。


「そうだね、ではお願いするニャン。 それとレフ団長には、今まで通り空戦部隊を指揮してもらいたい」


「はっ、お任せください!」


「よし、とりあえず基本戦術は決まったニャン。 こちらとしては、早く魔帝都を制圧したいが、敵も必死、だから我々は敵以上に団結して戦うニャン」


 マリウス王子がそう云うと、周囲の者達も「はい」と大きな声で返事する。

 そして朝の十時を迎えたところで、連合軍は再び魔帝都に進軍を開始した。



---ラサミス視点---



「ハアァッ……居合斬りっ!!」


「ぬうぅっ……おおおぉっ!?」


 女侍おんなざむらいアーリアがどっしりと腰を落として、眼前の龍族に向かって、高速で居合斬りを放った。 すると眼前の龍族の喉笛が水平に裂かれた。


 その無駄のない動きはまさに電光石火。

 流石は最強連合さいきょうユニオン攻撃役アタッカー

 動きに無駄がない上に実に速い。

 だがオレはオレで自分の役割ロールを果たすぜ。


「止めだァッ!!」


 オレは喉笛を斬られた龍族の前に立ち、右掌を眼前の龍族の胸部に押し当てた。 オレの「とおし」が決まり、目の前の龍族が後方に吹っ飛んだ。


 これでも十人は倒しただろう。

 此奴ら、確かに強い事は強いが、一般兵に限っては、想像していたよりかは強くない。 少なくとも今の面子ならば、互角以上に戦える。


「くっ、アイツら強いぞっ!」


「狼狽えるな、我々はこの場を魔元帥閣下に任された。 ならば閣下のご命令を遂行すべく、全力を尽すのみ。 我が剣を持って、眼前の敵を蹴散らしてくれようっ!」


 そう云って、前方の漆黒の鎧を着た龍族が白刃の大剣を構えながら、こちらに向かって突貫して来る。 チッ、力勝負じゃこちらが少し不利だな。 ……んっ?


「――抜かせっ!」


 アーリアはそう叫ぶと同時に、円状の小さい物体を握っていた右手の親指を高速で弾いた。すると弾かれた円状の小さい物体が漆黒の鎧の龍族の右眼に命中。


「ぐ、ぐああぁっ……あああッ!!」


 漆黒の鎧の龍族が絶叫する。

 今のは指弾しだんスキルか?

 まあいい、この機の逃す手はない!


「――乱火風光剣らんかふうこうけんっ!!」


 オレはそう叫びながら、独創的技オリジナル・スキルを繰り出した。

 顎門あぎとの刀身に風の闘気オーラを宿らせて、袈裟斬りを放つ。


「あっ……あああぁっ!」


 袈裟斬りが綺麗に決まり、眼前の龍族が右肩口から血を流しながら呻き声を上げる。 そしてオレは更にそこから刀身に炎の闘気オーラを宿らせた。 そこから逆袈裟斬りを放ち、眼前の龍族の身体に×の字を刻み込んだ。


 風と炎が交わり、魔力反応『熱風』が発生。

 よし、綺麗に決まった。 後は仕上げだぁっ!

 オレは右手に持った顎門の刀身に、今度は光の闘気オーラを宿らせる。


「止めだぁっ!!」


「ぐ、ぐはぁっ!?」


 ×の字が刻まれた龍族の身体に、今度はその腹部目掛けて、回転力のある渾身の突きを繰り出した。 次の瞬間、オレの手元に確かな感触が伝わった。 それによって魔力反応が『熱風』から『太陽光サンライト』に変化する。

 

 すると眼前の龍族は、地獄の底から響くような断末魔の叫びを上げて、背中から地面に倒れ落ちた。


「が、ガリアンがられたっ!」


「此奴ら、本当に四大種族か!?」


 周囲の龍族が驚き戸惑う。

 するとその間隙を突くように、錬金術師アルケミストのクロエが攻勢に出た。


「――地形変化テレイン・チェンジ開始っ!」


 クロエは素早く両手で印を結んで魔力を解放する。

 次の瞬間、前方の龍族の集団の足下の地面が凍り付いた。

 不意を突かれた龍族の集団は、転倒、あるいは態勢を崩した。


 するとクロエは腰帯にぶらさげた茶色の皮袋に右手を突っ込んで、白水晶しろすいしょうの欠片を取り出した。 クロエはその白水晶の欠片を右手に握りしめて、龍族の集団の頭上に目掛けて放った。


水晶クリスタルよ、弾けよっ!!

 セイァッ……アァッ! 『シャイニング・シャワー』」


 クロエがそう叫ぶなり、敵の頭上に放られた白水晶しろすいしょうの欠片が目映く輝き、四方八方に砕け散った。 そして刃のような形をした光の塊となり、敵の頭上から、シャワーのように降り注いだ。


「ぬおおおぉっ……おおおぉっ!?」


 降り注ぐ光を浴びた龍族の集団が激しく悶える。

 無駄のない速攻だ。

 ここは更に追撃して敵を倒すべきだ。


「――メイリンッ!」


「分かってるわよ! 我は汝、汝は我。 我が名はメイリン。 ウェルガリアに集う炎の精霊よ、我に力を与えたまえ! 行くわよおぉッ……! 『スーパーフレアッ』!!」


 メイリンが呪文を紡ぐなり、彼女が持った両手杖の先端の翠玉エメラルドに緋色の波動が生じた。 そしてメイリンは前方に向けて緋色の波動を放射する。 


 数秒後、緋色の波動が着弾。

 すると光属性と炎属性が交わり、魔力反応「核熱」が発生。

 それと同時に前方の龍族の集団が悲鳴を上げる。


「よし、上手い具合に連携が取れている。

 この調子で確実に一体ずつ倒していくぞ」


「了解だ、アーリアさん。

 ところでさっき使ったのは何のスキルだい?」


 オレがそう云うと、アーリアは「ああ」と頷いて、右手の親指と人差し指で一グラン銅貨を摘まんだ。


「投げたのはこの銅貨さ。 侍は指弾スキルや投擲スキルに優れた職業ジョブなのさ。 他にもスタン系のスキルが得意だったりする」


「ほう、所謂、銭投げってやつですかい?

 でも何度も何度も使ってると、懐が寂しくなりそうだ」


 するとアーリアが「クス」と笑った。


「違いない、だからこの銭投げは緊急時にしか使わん。 私を貧乏にしない為にも、君達には奮闘してもらわんとな」


「了解ッス、生き残ってたっぷりと報奨金貰いましょうや」


「ああ、そうだな」


 そしてオレ達はその後も、オレ、アーリア、ミネルバが攻撃役アタッカーを務め、クロエやカリン、メイリンが中衛から攻撃。


 そして後方からマリベーレが狙撃。

 という戦術で次々と龍族の集団を確実に一人、一人倒していった。



次回の更新は2022年5月7日(土)の予定です。


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