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【天界編開始!】黄昏のウェルガリア【累計100万PV突破】  作者: 如月文人
第五十四章 旭日昇天(きょくじつしょうてん)

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第三百四十六話 悪戦苦闘(前編)


---三人称視点---



「アイザックさん、大丈夫ですか?」


 ライルがそう云って、アイザックのもとに駆けつけた。

 するとアイザックは、左手の人差し指でボバンの亡骸を指差した。


「あ、アレはっ!? まさかボバンさんがっ!?」


 と、ライルの傍で驚くラサミス。


「嗚呼、ボバンは遂さっき戦死した。

 奴――あの龍族にられたよ」


 アイザックはそう呟くなり、

 ボバンの亡骸に近づき地面に落ちた魔剣イスカンダールを拾う。


「……仇を討つつもりですか?」


 と、少し離れた場所でヨハンがそう問うた。

 心情的にはそのつもりであった。

 だがアイザックは傭兵隊長でもある。

 故にこの場は私情より任務を優先させた。


「そうしたいのは山々だが、

 俺一人では奴には勝てん、だから君達の力が必要だ」


「ならば一緒に奴と戦いましょう! ただしその際にはボクの方針に従ってもらいます。 それで宜しければ、仇討ちに協力しますよ?」


 ヨハンは戦いの主導権を得る為、凜とした声でそう告げる。

 だがアイザックはそれに反対する事なく「分かった」とだけ答えた。

 すると必然的にヨハンがこの場の主導権を握り、彼は周囲に命じた。


「皆、よく聞いてくれ! 奴は龍族に加えて、魔元帥という立場にある。 云うならば敵の司令官のようなものだ。 故にボク達は幼いプライドを棄てて、多対一で奴と戦う。 「ヴァンキッシュ」からは前衛ボク、アーリア、中衛カリン、ジョルディー、クロエという布陣を敷く」


 ヨハンはそう云うと、ライルに目配せした。

 するとライルも彼の意図を察して、周囲の仲間に指示を出す。


「俺もヨハンさんの作戦に賛成だ。 俺達『暁の大地』は前衛に俺、ラサミス、ミネルバ。 中衛にメイリンとマリベーレ、それと後衛はエリスという布陣で戦おうと思うが、それで良いなら皆、首を縦に振ってくれ!」


 ライルの言葉に周囲の仲間は無言で首を縦に振った。

 すると「ヴァンキッシュ」はやや左側に、

 前衛ヨハン、アーリア、中衛カリン、ジョルディー、クロエという布陣を敷いた。


 一方のライル達は、ライル、ラサミス、ミネルバ。

 中衛にメイリンとマリベーレ、後衛はエリスという布陣を右側に敷く。

 これにアイザックが加わり、合計十二人となった。

 その布陣を双眸を細めて見るアルバンネイル。


 ――流石に一対十二となると厳しいな。

 ――あの小柄な金髪の剣士の腕はかなりのものだ。

 ――またあの銀髪の小僧も侮れない。

 ――となればオレもここは小さなプライドを棄てるべきだな。


「フンッ、小賢しい。

 貴様等が数で来るなら、こちらも数で向かうまでだ!」


 アルバンネイルは、そう云って左手を挙げた。

 すると周囲の龍族が魔元帥の許に集まった。

 その数、四人。 これで五対十二となった。


「成る程、そう来たか。

 それならそれで構わないさ」


 剣聖ヨハンはそう云って、

 『耳錠の魔道具(イヤリング・デバイス)』で周囲の仲間に指示を出す。


『五対十二ではこちらも苦戦は必至。 だからこちらは基本的に中距離、遠距離攻撃で戦おう。前衛の聖剣、魔剣持ちは遠隔攻撃を、中衛の者もスキルや魔法攻撃で、そして回復役ヒーラーは、補助魔法と回復魔法をしっかりかけてくれ』


 ヨハンの指示は的確だった。

 故に誰も反対意見は述べず、彼の指示に素直に従った。


『了解です、では俺達も大まかな作戦を決めよう。

 ラサミス、団長としてのお前の意見が聞きたい』


 と、ライルがラサミスにそう告げる。

 するとラサミスは左手の指で頬を掻きながら答えた。


『そうだな、オレと兄貴、ミネルバが敵の前衛を引きつけて、メイリンとマリベーレの魔法攻撃と狙撃、そしてエリスは補助に回復という感じの戦術で行こう』


『うむ、それで問題ないだろう。

 皆もそれでいいな?』


 ライルの言葉に他の者達も同意する。

 そしてエリスが補助魔法をかけて、戦闘準備に入った。 するとこちら側に陣取っていたアイザックが両手に魔剣を持ちながら、敵目掛けて交互に魔剣を振った。


 アイザックは左手に持った魔剣イスカンダールを何度も振るった。

 それは彼なりの戦死した部下への弔い合戦だったのかもしれない。

 緋色の大剣から巨大な炎塊が何度も吐き出され、敵に命中。


「よし、オレ達も続こうぜ!

 兄貴、ミネルバも遠隔攻撃で!

 メイリンとマリベーレも魔法と狙撃を頼む!」


 ラサミスがそう告げると、ライルとミネルバが前へ躍り出た。

 そして手にした聖剣と魔剣を勢い良く振り下ろす。

 聖剣や魔剣、魔槍から放たれた真空波や闇色の炎塊が前方の敵集団に命中。


 火属性と風属性が交わり、魔力反応『熱風』が発生。

 しかし攻撃はそれで終わらない。

 追い打ちをかけるべく、メイリンが攻撃魔法の詠唱を始めた。


「我は汝、汝は我。 我が名はメイリン。 

 ウェルガリアに集う光の精霊よ、我に力を与えたまえ! 

 ――喰らいなさいっ! 『ライトニング・ダスト!!』」


 そう呪文を紡ぐと、メイリンの杖の先端の翠玉エメラルドに眩い光の波動が生じた。

 そこからメイリンは両手杖を握る両腕を大きく引き絞った。

 次の瞬間、魔石から迸った光の波動が神速の速さで敵集団を捉えた。


「ッ!?」


 光の波動が一発、二発、三発と間を置かず敵集団に命中。

 それによって魔力反応が『熱風』から『太陽光サンライト』に変化する。


「今だ、カリン撃つんだぁっ!」


 ヨハンがそう叫ぶなり、カリンも弓を構えて弦を引いた。


「分かってるわ、――セラフィム・アローッ!!」


「マリベーレッ!」


「了解よ! ――せいやぁっ!!」


 ラサミスが叫ぶと同時にマリベーレが膝撃ち態勢で狙撃する。

 凄まじい衝撃音が轟き、大気が激しく揺れた。

 

「まだだ、他の者も攻撃してくれ!」


 ヨハンがそう云うと、賢者セージベルロームと女魔導師ソーサレスリリアも加勢してくれた。 またこの間にラサミスとエリス、それとケビン副団長が負傷した猫騎士に回復魔法をかけた。


「よし、ここからは初級及び中級魔法で攻撃するんだ! 兎に角、撃って撃って撃ちまくれっ!

撃ち漏らした敵はボク達が何とかする!」


 剣聖ヨハンがそう叫ぶなり、周囲の仲間達が前方目掛けて、初級及び中級魔法を連射する。詠唱の短い初級魔法は、一発の威力は低いが、連射できるので、このように数で力押しする事が可能であった。 


 だが相手は魔元帥が率いる龍化りゅうかした龍族部隊。

 炎塊や風の刃、光の波動に身を焦がしながらも、冷静に状況を見極めて、闇属性の対魔結界を張り、魔法攻撃を防いだ。


 とはいえこれだけ連続攻撃を受けたら、防御に時間を割かれ、反撃する機会はなかなか訪れなかった。


 それに対して連合軍は、数の暴力で押し切る。

 撃つ。 撃つ。 撃つ。 ひたすら撃った。

 連合軍は余力を振り絞って、ひたすら魔法や闘気オーラを連射、放出した。 

 しかし初級魔法といえど、何度も連発すれば、魔力は大きく消耗する。


 それをフォローするように、連合軍の魔法戦士部隊が『魔力マナパサー』で、自分の魔力を味方に分け与えて、魔法部隊の魔力を補充する。 そしてまた連合軍の魔法部隊が初級及び中級魔法を連射した。


 単純な戦術だが単純故に実行が容易で有り、地上部隊だけでなく、制空権を抑えつつあった竜騎士部隊の飛竜に、猫族ニャーマンの魔導師部隊を相乗りさせて、空からも魔法攻撃を放った。


「くっ……奴等、徹底しているな。 ならばこちらも攻撃魔法で押すぞ。 ドラゴン化した竜魔部隊も息吹ブレス攻撃で反撃せよっ!!」


 魔元帥アルバンネイルは、歯軋りしながら周囲にそう指示を出した。

 本来ならば力業で敵を蹂躙したかった。

 だが敵も馬鹿ではなかった。


 戦局を変えようとアルバンネイルが前へ出ると、剣聖ヨハン、アイザック、ライル、女侍おんなざむらいアーリアの四人で、アルバンネイルの侵攻を食い止めた。


 龍化りゅうかしたアルバンネイルでも、この四人を同時に一人で相手するのは厳しかった。 また自分だけでなく、他の龍化りゅうかした龍族が前進すると、同様に四、五人が同時に仕掛けて来た。連合軍はこの戦法で龍化りゅうかした龍族の侵攻をことごとく阻んだ。


 力と力による戦いが継続される事、四時間余り。

 夜という時間帯で強化された魔王軍だが、連合軍の執拗な反撃の前に次第にその勢いが失われていく。


 それでも魔元帥は最前線に立ち、己の持てる力を振るって、連合軍の兵士を魔剣で斬り捨てていったが、とうとうその体力と魔力も限界に突入した。


「……そろそろ限界のようだな。

 伝令兵っ! 魔王陛下に退去するように伝えよ!」


「はっ!」と、虎顔の伝令兵が跪いた。


「魔王陛下だけでない。 他の幹部にも撤退するよう伝えよ。 私は殿しんがりで敵の追撃を防ぐ。 それと半人半魔部隊を前線に投入するように伝えてくれ」


「ははぁっ!」


「魔元帥閣下、我々も残ります」


 と、周囲の龍族が主にそう告げた。


「そうだな、俺一人では少々苦しいからな。

 だからお前等も俺と共に戦ってくれたら助かる!」


「勿論ですとも!」


「うむ、では殿を務めながら、敵を食い止めるぞ!」


「御意!」


 突進、そして後退。

 それを交互に繰り返して連合軍と龍族、竜魔部隊が激突を繰り返す。

 勢いに乗る連合軍軍も龍族、竜魔部隊の異様な粘りに押し返されて、なかなか前進することができない。


 その隙にシーネンレムス、デュークハルト、レストマイヤーやアグネシャールの部隊はさっさと撤退する。 それに合わせて龍族、竜魔部隊も密集陣形で敵の攻撃を防ぎ、ゆっくりと後退を始める。


 数の上では圧倒されていたが、魔元帥が自ら殿をつとめて、続き続きと連合軍を黄泉の世界へと送り込んだ。 魔元帥のその勇姿を見据えながら、後衛から半人半魔部隊が現れた。


「もう、散々こき使ったと思えば、

 最後は敗戦処理なんて酷い扱いだわ」


 と、半人半魔の少女ミリカが毒づいた。


「ミリカ、文句を云うな。 これも任務の一つだ」


「はい、はい。 ジウは糞真面目ね」


「兎に角、オレ達のやれる事をやるんだ」


 半人半魔の少年ジウバルトはそう云って、

 両手に持った白銀の大鎌を構えた。


「ミリカ、ジウバルド!

 無駄口を叩くな、ここからは全力で闘うぞ!」


 と、半人半魔部隊の頭目ワイズシャールが一喝する。


「はーい」


 と、間延びした声で応じるミリカ。

 だがワイズシャールは、それ以上はミルカを叱る事も無く、

 手にした漆黒の戦斧を頭上に掲げた。


「我々、半人半魔部隊は、魔元帥閣下の部隊と同じく殿を務めながら、敵の侵攻を食い止めるぞ! 厳しい戦いだが、諸君の健闘を祈る!」


 そして半人半魔部隊はワイズシャールに「おお!」と、

 呼応しながら、手にした武器を構えて戦闘準備に入った。

 だが多くの者は分かっていた。


 恐らくこの戦いで自分達の大半の者が戦死するだろう。

 それが自分達、半人半魔部隊に与えられた役割の一つ。

 彼、彼女等はその事実を把握しながら、

 何処か他人事な感じで、戦いに挑もうとしていた。


次回の更新は2022年2月5日(土)の予定です。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 更新お疲れ様です。 殿を務める魔元帥の粘り、それに同じく龍化した竜魔族も厄介ですね。ラサミス達も徹底して、中距離の攻撃を中心に行い隙を伺う感じですね。 段々と周りが集結していく中で、体力も…
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