第三百三十五話 正面突破(前編)
---三人称視点---
城門を巡る攻防は、更に苛烈さを増していた。
「大砲を一旦、中列に下げるだニャン。
そして傭兵及び冒険者部隊を前線に押し上げて、
正面から城門を突破するだニャン!」
マリウス王子にそう命じられて、
砲撃部隊は車輪付きの土台の上に乗せた大砲を前線から中列に下げた。
それと入れ替わるように、剣聖ヨハンの「ヴァンキッシュ」、ラサミス率いる「暁の大地」、傭兵隊長アイザックが前線に躍り出た。
その勢いを止めるべく、魔王軍の魔族兵、魔物、魔獣、そしてゾンビ兵達も前線に飛び出して、両軍は真正面から激突した。
「魔法部隊、蓄積開始します。
五分程、敵を食い止めてください!」
賢者ベルロームが中列で、魔法陣の上に乗りながらそう叫ぶ。
そして魔力の蓄積を始める魔法部隊。
「五分か、それくらいなら何とかなりそうだ」
「ラサミス、油断するな! 敵も必死だ」
「兄貴、分かってるよ。 やるからには全力でやるさ!」
ラサミスとライルがそう言葉を交わす。
「城門を何としても護れ!」
「我等の手でこの要塞を護るのだ! 何人たりともこの先に通すなっ!」
「敵の魔法部隊が蓄積しているぞ! 叩き潰せっ!」
口々にそう叫びながら、武器を片手に魔族兵が突貫してきた。
「――死ねい、小僧っ!!」
「させるかぁっ! せいやっ!!」
ラサミスは突撃してきた戦斧を持った大柄の魔族兵目掛けて、ワンツーパンチを放った。 綺麗に左、右と決まり眼前の大柄の魔族兵はぐらりと後方によろめく。 だがすぐに体勢を戻す大柄の帝国兵。
大柄の相手には素手では少々厳しい。
ならば――
と、ラサミスは眼前の魔族兵の懐に入り、「ハア――」と大きく呼吸して、右手を開いたまま大きく前へと突き出した。次の瞬間、凄まじい衝撃が魔族兵の体内で爆発する。
「う……うおおおっ……な、何だっ!? この衝撃はぁっ!?」
野獣のような呻き声をあげて、魔族兵が後方にぶっ飛んだ。
十メーレル(約十メートル)くらい吹っ飛んで、背中から地面に倒れる魔族兵。
ラサミスの十八番の『徹し』が綺麗に決まった。
「あの小僧、少し危険だぞっ! 皆で狙い撃ちするぞっ!」
そう叫びながら大剣を持った魔族兵が突撃してきた。
だがその前にミネルバが間に割って入り、手にした漆黒の魔槍を突き立てた。
「させないわよ! ヴォーパル・スラスト!」
「う、うわあああ……あああっ!」
魔槍の穂先が魔族兵の喉元を切り裂き、魔族兵は断末魔の叫びを上げた。
「まだまだ! せいやっ! ダブル・スラスト!」
「ぐ、ぐぎゃあああっ!!」
ミネルバは踊りを舞うように、両手に持った魔槍で次々と帝国兵を切り捨てる。
すると魔族兵は圧倒されながら、じわりじわりと後退していく。
それと同時に剣聖ヨハンやライル、傭兵隊長アイザック達も怒涛の勢いで前進する。
たちまち恐るべき怒号となり、人々の戦いの手を更に激化させた。
先陣を切る剣聖ヨハンと女侍アーリア、ラサミスとライル、
傭兵隊長アイザックと傭兵ボバンが手にした武器で、次々と標的を仕留めていく。
「退くな、踏みとどまれ、魔族兵の矜持を見せてやれ!」
魔王軍の小、中隊長達がそう激励を飛ばしたが、空しく残響するだけであった。
「――魔法部隊、もう行けますっ!!」
「了解! 皆、後ろに下がるんだ」
「了解」
剣聖ヨハンの言葉に周囲の者達は、異口同音に答えた。
「さあ、盛大に打ってやれっ!!」
ヨハンがそう叫ぶと同時に周囲の仲間もただちに大橋の中央から離れた。
それと同時に杖を振り上げる魔法部隊。
魔法陣の輝きが弾け、次の瞬間、容赦のない一斉射撃が火蓋を切る。
「――フンッ! 我は汝、汝は我。 我が名はベルローム。
ウェルガリアに集う炎の精霊よ、我に力を与えたまえ!
――『シューティング・ブレア!!』」
「――えいっ! 我は汝、汝は我。 我が名はメイリン。
ウェルガリアに集う炎の精霊よ、我に力を与えたまえ! 炎殺ッ!』」
「我は汝、汝は我。 我が名はリリア。
ウェルガリアに集う光の精霊よ、我に力を与えたまえ!
『ライトニング・ダスト!!』」
連続で見舞われる様々な属性の攻撃魔法。
火炎弾が着弾すれば、光の波動が、風の刃が炸裂する。
次々と攻撃魔法が命中して、魔族兵達が放火の光に塗り潰される。
三分後。
前方の大橋の上に、魔族兵の屍の山が積み上げられた。
「よし、今だっ! 戦士や聖騎士を前衛に置いて、突撃せよっ!」
「おおおっ!!」
湧きおこる怒号と歓声。
前方の魔王軍に容赦なく襲い掛かり、怒号をあげてたくさんの冒険者部隊、
傭兵部隊、連合軍軍の兵士が、自ら手に武器を取り、「正門を落とせ!」と怒涛の進撃を続ける。
「クソッ! これ以上先には進ませるな!」
「この城門を何としても死守するのだ!」
「おうっ! 魔王陛下万歳っ!」
魔王軍の隊長や兵士達が声を荒げて叫ぶ。
そして最前線では、激しい白兵戦が繰り広げられた。
「城門は陥落目前だ。死力を尽くして目の前の敵を徹底的に倒せ!」
傭兵隊長アイザックが白い羽根のついた漆黒の兜のバイザーを上げてそう叫ぶ。
「とは云っても油断はできねえよ。 まだまだ敵が居るぜ、嫌になるぜ!」
狂戦士ボバンが豪快に大剣を旋回させながら、口の端を持ち上げた。
「ああ、全くだ。だが文句を云っても始まらん。 俺達傭兵は与えられた任務は、必ず遂行する。それにこの戦いに勝てば報奨金もかなり出るだろうさ。」
「団長、アンタは相変わらずクールというか淡泊だな。」
「ボバン、この状況下で無警戒に構えるよりかはマシだろうよ!」
「ははは、違いねえ。まあとりあえず自分達の役割だけは、きっちり果たすとするか!」
アイザックとボバンがお互いに軽口を叩きながら、次々と敵兵を戦闘不能にしていく。 そして戦局が再び連合軍に傾くと、復讐の機会とばかりにアームラック団長率いる第四軍も中列から前列に躍り出て激しい斬撃の応酬をする。
魔王軍側もデュークハルトが攻撃と防御の要となり奮闘したが、数的不利に加えて敵の戦意と士気に呑まれて、じわりじわり後退し始めた。 連合軍と魔王軍は一時間に及ぶ激しい攻防戦が繰り広げて、数と勢いで勝る連合軍が大橋の大部分を確保した。
「良し、砲撃部隊! もう一度前進するニャン!」
マリウス王子が命令を下すと、台座に乗った数十門に及ぶ大砲がガラガラと音を立てて、前進する。 そして砲手は大砲の砲口を前方の城壁に向ける。
「撃つだニャンッ!」
そしてマリウス王子の号令と共に轟音が鳴り響き、
全ての大砲から高速で、砲弾が城壁に向かって飛んで行く。
連合軍による激しい砲撃が再び始まった。
次回の更新は2022年1月9日(日)の予定です。
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