第二百六十六話 再びニャルララ迷宮へ(中編)
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---ラサミス視点---
「とりあえず魔力探査するッスね!」
「あ、お嬢ちゃん。 ちょいお待ち!」
「……何すか?」
マライアの呼び止められたメイリンは不満げな表情で後ろを振り向いた。
だがマライアは動じる事は無く、端的に用件を伝える。
「ここに魔封結界が張られている可能性があるわ。
だからまずはアタシとそこの竜人のお嬢ちゃんのドラゴンで周囲を索敵するわ」
「……そうね。 何らしかの罠は張っている可能性が高そうよね」
と、ミネルバ。
「そういう事、じゃあ……そうね、ベルジアン・マリノアって呼び方じゃ少し長いから、この子にも名前をつけるわ。 名前は……ミスティにしましょう。 じゃあミスティ、ここら辺に魔力反応があるか、探して来て!」
「ワアン!」
ミスティと名付けられたベルジアン・マリノアは、
ハンドラーであるマライアに命じられるまま、周囲の匂いを嗅ぎながら前進する。
「じゃあアタシもブルーを召喚するわ。
ブルー、おいでなさい!!」
ミネルバはそう云って呪符を取り出して、破った。
するとその破けた札の中から小竜族のブルーが現れた。
兎ほどの大きさの緋色の瞳を持つ小竜族のブルー。
そのブルーに対して、ミネルバが左手をかざして命じた。
「――竜の調教ッ!!
さあブルー、私の命令に従いなさい。
とりあえず貴方は私の命令にだけ従いなさい」
「……了解、マスター」と、ブルー。
「……その小竜族喋れるの?」
エリーザがやや怪訝な表情でそう問う。
するとミネルバが「ええ」と小さく頷いた。
「まあこの子が悪い訳ではないけど、
私ともいささか因縁のある奴の忘れ形見なのよね。
でもせっかく喋れるんだから、有効活用しよう、ってわけ」
と、ミネルバ。
「……そうね、マライアと貴方が居れば、
私も精霊を召喚しなくて済むわ」と、エリーザ。
「そりゃどうも。 とりあえずブルー、目視で前方の様子を探って来て!」
「了解!」
そしてミスティとブルーによる索敵と探索が始まった。
とりあえずこの周辺には敵が居ないようだ。
だがミスティが「ワンワン」と前方に向かって吠えた。
するとその前方に人影らしきものが見える。
遠目から見ても分かる。 随分とデカいな。
ありゃ身長二メーレル(約二メートル)以上ありそうだ。
「……ここからじゃよく見えないな」と、兄貴。
「うん、でもあたしの『ホークアイ』ならバッチリ見えるわ。
団長さん、ライルさん、『ホークアイ』を使っていい」
マリベーレがそう云うとドラガンと兄貴が「ああ」と答えた。
成る程、確かにマリベーレの『ホークアイ』を使えば敵の姿が明らかになる。
ここはマリベーレに任せた方がいいな。
「おう、じゃあマリベーレ。 頼んだぞ」
「うん、ラサミスお兄ちゃん。 ――ホークアイッ!!」
マリベーレが銀色の魔法銃のスコープに右眼を当てながら、
職業能力『ホークアイ』を発動させた。
オレ達も迷宮の壁に隠れながら、双眼鏡を片手に前方を見据える。
駄目だ、真っ暗で双眼鏡じゃ前方の状況が分からない。
「……ここから約100メーレル(約100メートル)先にある人影は、
ゴーレムみたいよ。 一、二……五、多分十体近く居るわ」
マリベーレが魔法中のスコープで前方を見据えながらそう云った。
成る程、ゴーレムか。 ならこの階は余裕かもな。
「でもおかしいわね。 想像しているより、敵の数が少ない気がする」
と、エリーザがそう呟く。
するとドラガンも「ああ」と云いながら、再び目元にニャーグルを引き寄せた。
「この階層の魔力反応は大体二十ってところだが、
目視できるのは十体くらいだ。 ……何か匂うな」
「あっ!?」
マリベーレが不意に声を漏らす。
「……どうした?」と、兄貴。
するとマリベーレがこちらに振り返って、小声で囁いた。
「……前方のゴーレムから離れたところにまた違うゴーレムを発見。
でもこちらは動いている気配がないの。 だけど多分魔力が注がれたら、
動き出すわ。 つまり前方のゴーレムは餌で、魔法を使った瞬間、
他のゴーレムが覚醒して、あたし達を包囲するという罠っぽい」
「成る程、あり得る話だ。 となると前方のゴーレムは魔力を使わず倒した方がいいな。 オレと兄貴、アイラ、それとギランさん。 この四人であの囮のゴーレム達を倒そう。 そしてオレ達が戦っている間に、ミネルバとマライアは使役獣や竜を使って、周囲に敵の魔導師部隊が居ないか探ってくれ!」
「そうね」「……分かったわ」
オレの言葉に二人は素直に頷いた。
「多分、この階層で魔法を使った瞬間、張られた結界により魔封状態になる
危険性が高いわ。 そして魔封状態のアタシ達をゴーレムや敵が狙う。
という可能性もあるから、ここから先は一切魔力を使う動作は避けて!
魔法は当然として、闘気を篭めるのも危険だわ」
メイリンが思案顔でそう云うが、確かに状況からしてその可能性は高い。
となると前方のゴーレム共を魔力を使わず倒す必要があるが、
魔力なしだと、アイツらの相手をするのも一苦労しそうだ。
「とりあえずゴーレムの背中の刻印を狙おう」
「そうだな」「そうね」「分かった」
兄貴の言葉にオレとアイラ、ギランは小さく頷いた。
やれやれ、どうにも今回の戦いは面倒臭くなりそうな気がする。
敵の魔族は何人ぐらい居るんだろうか?
まあいいや、今は目の前の戦闘に集中するか!
「それじゃ行くぞ!」
「「「ああ!!」」」
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「はあああっ……!!」
オレは両手で土のゴーレムの肩を掴んで、前方に前転しながら、
両手を組み合わせたハンマーナックルで土のゴーレムの背中を強打。
手応えのある感触がオレの両手に伝わると同時にゴーレムの身体が崩れ落ちた。
「ハアハアハアァッ……」
これで十体目。
とりあえず周囲に見えるゴーレムは全部倒した。
魔力が使えないから、闘気を使う事も出来ないから、
基本的に武器による斬撃か、打撃で攻撃したが随分と疲れたぜ。
「……これでとりあえず稼働中のゴーレムは全部倒したな」
「ああ、兄貴。 正直疲れたよ」
「同じくだ。 しかし戦っている最中も他の者の気配や魔力は感じなかったな。
俺の予想では何処かで敵が張っていると思うんだが、ライル……さん、アンタはどう思う?」
ギランが顎に右手を当てながら、思案気の顔でそう云った。
「俺もそう思う。 なのに奴等がアクションを起こさないのは妙だな。
……とりあえず一旦、仲間の許に戻ろ――」
そう思った矢先であった。
オレ達の周囲に魔力が流れるような感触が走った。
そして次の瞬間に地べたに転がっていたゴーレム達が動き出した。
「……どうやら敵が先に魔力を使って、ゴーレムを稼働させたようね」
と、アイラ。
「そのようだな。 闘気が練られるか、少し試してみるよ。 ふんっ!!」
兄貴はそう云って、右手に闘気を宿らせようとしたが、無意味だった。
くっ、まさか敵の方からやってくるとはな。
仕方ない、ここのゴーレム達はまた魔力なしで倒そう。
「――見えた!! そこだァ!!」
ギランがそう叫びながら、右手に持った片手斧を投擲した。 すると半瞬程、間をおいてから「ぐわっ!」という悲鳴が前方から聞こえてきた。 成る程、この僅かな間にギランは敵の位置を咄嗟に把握したようだ。 オレは斧が投擲された方角に視線を向ける。
すると視線の先には、ローブを纏った人影の背中に片手斧が突き刺さっていた。
よし、ならばここはオレも追撃するぜ。
オレはそう思いながら、咄嗟に懐に手をやり、投擲紐を取り出した。
そこから投擲紐の紐の中央に小さな鉄球を乗せた。
そして敵の後頭部に狙いを定めて、スリングショットを放った。
「がはっ!?」
放たれた小さな鉄球は見事に敵の後頭部に命中。
するとスリングショットを受けた敵はずるずると床に崩れ落ちた。
「!?」
近くに居たローブを着たもう一人の敵が驚き戸惑っていた。
するとその間隙を突くように、ギランが手にした片手斧を再び投擲した。
「――そこだ!!」
武器を投げるのは最後の奥の手だが、ある種の賭けでもある。
だがギランの放った片手斧は正確に標的の眉間に命中した。
「ぬ、ぬおっ!?」
と、呻き声と共に前方のローブを着た敵が地面に崩れ落ちた。
この視界が悪い状況で二度も敵に投擲して命中させるとは!?
このギランという男、かなりの達人だな。
「とりあえずこれで敵を二人倒した。
だからこの場は残りのゴーレムを倒すぞ!!」
「わ、分かったよ、兄貴」
「了解よ、ライル」と、アイラ。
「了解した」と、ギラン。
やれやれ、またゴーレム狩りか。
でも文句を云ってられる状況じゃねえ。
とりあえず今はコイツらをぶっ倒す事に専念するぜ!!




