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【天界編開始!】黄昏のウェルガリア【累計100万PV突破】  作者: 如月文人
第四十二章 華麗に美しく散れ

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第二百四十五話 快刀乱麻(かいとうらんま)を断つ


---三人称視点---



 ドラガンは炎の縄(ファイア・バインド)で拘束されて、

 ナース隊長は敵の魅了攻撃で魅了チャーム状態。

 残された面子はラサミスと後衛のメイリンとクロエ。


 正しく絶体絶命のピンチ!

 眼前のプラムナイザーも勝利を確信したように、微笑を浮かべていた。

 だがラサミスはこの状況下においても、落ち着いていた。

 無論、ピンチな事には変わらない。

 

 しかしこれまで大なり小なり修羅場を潜ってきたせいか、

 サラミスは妙に落ち着いて、この危機的状況の打破を試みる。

 

「う、ううっ……ああっっ~」


 魅了チャーム状態のナース隊長が苦しそうに喘ぎながら、

 右手に持った銀色の片手剣を構えながら、ラサミスに近づいた。

 するとプラムナイザーはその光景を見ながら、可笑しそうに笑った。


「ふふふ、これは見物だな」


「来るな、来ないでくれ! ナース隊長!!」


 と、ラサミスは悲痛な叫びを上げた。

 しかしナース隊長は「ううう」と唸りながら、手にした片手剣を振り上げた。

 勝利を確信したプラムナイザーは「勝った!」と勝利宣言をした。

 だがそれは大きな誤りであった。

 

「――『フィジカル・リムーバー』ッ!!」


 ラサミスは右手を振りかざし、状態異常解除の職業能力ジョブ・アビリティを発動させた。 するとラサミスの右手から放出された白い波動がナース隊長の身体に降り注がれた。

 そしてしばらくするとナース隊長は、正気に戻った。


「えっ……?」


「なっ!?」


 ナース隊長だけでなく、プラムナイザーも一瞬呆けた表情になった。

 そしてラサミスはその隙を逃さなかった。

 まず右手に持った雪風を黒鞘に収めて、両手で水色の盾(ブルーミラーシールド)を持った。


「うおおおぉっ!!」


 そこからラサミスは両手に持った水色の盾(ブルーミラーシールド)を前に押し出しながら、全力で床を蹴った。 完全に不意を突かれたプラムナイザーは反応が遅れた。

 そしてラサミスは一気に間合いを零にした。


「クッ、図ったなぁ!」


 プラムナイザーが苦し紛れに右手に持った黒刃の片手剣で凪ぎ払いを放った。

 だがラサミスはそれをダッキングで回避。

 そして左手に持った水色の盾(ブルーミラーシールド)を床に投げ捨てた。

 そこからラサミスは反り返るように反転しながら、右足を大きく蹴り上げた。 

 ラサミスのサマーソルトキックがプラムナイザーの顎にカウンター気味に命中!

 ラサミスの右足に確かな感触が伝わった。


「ごふっ!?」


 会心の一撃が決まり、プラムナイザーの顎が砕かれた。

 それと同時にラサミスは軸足を左足から右足に変えた。

 つまり左構え型(サウスポー)から右構え型(オーソドックス)にスイッチしたのである。

 不意を突かれて、強烈な蹴りで顎が砕かれたプラムナイザーの眼が虚ろになっている。 


 ――さあ、ここからが本番だぜ!

 ――このオレの最強コンボを喰らうが良い!!

 ――実戦で使うのは、初めてだがコレが決まればオレの勝ちだぁっ!


「――フィギュア・オブ・エイトッ!!」


 ラサミスはそう叫んで、八の字を描くように、身体をウィービングさせた。

 それはまるで振り子の反動を生かしたような動きであった。

 そして自身の編み出した独創的技オリジナル・スキルを全力で放つラサミス。

 ラサミスはまずは真横から左フックでプラムナイザーの右脇腹を強打。 

 「ぐはっ」と呻くプラムナイザー。


 そこから返しの右フックでプラムナイザーの左耳を殴打。 

 「ぐああぁっ」と叫ぶプラムナイザー。

 今の一撃でプラムナイザーの左耳の鼓膜が破れた。 

 だがラサミスは躊躇しなかった。 

 ラサミスは更に左右のフックを叩き込む。


「――フィギュア・オブ・エイトッ!!」


 再度、独創的技オリジナル・スキルを放つラサミス。

 ラサミスは何度も何度もフックを叩き込む。

 身体で八の字を描き、体重ウェイトをたっぷり乗せる。 

 そこから何度も左右のフックを叩き込んだ。

 

 

「がはあぁっ……あああぁっ!?」


 と、口から唾液と血液を飛ばすプラムナイザー。

 相手は魔族と云えど女。

 本来であればラサミスも女相手にこのような真似はしない。

 

 だがこの場においては違った。

 ラサミスは更に殴る、殴る、殴る、全力で殴る。 

 拳が痛むが更に殴る。 殴打、殴打、殴打。

 とにかく殴る、殴った、殴りつけた。


 次第にプラムナイザーの顔は血だらけになり、両眼を腫れて塞がり、鼻も骨折状態。

 牙も歯もボロボロで何本も折れた状態。 最早、完全に戦闘不能状態だ。

 だがラサミスの両拳も想像以上に傷ついていた。

 だからラサミスは止めを刺すべく、次の手を打った。


 ――もうそろそろ拳も限界だな。 ならば次の一撃で全てを終わらせる。

 

「はあああぁっ……『黄金の息吹(ゴールデン・ブレス)』!!」


 ラサミスは全魔力を解放して、『黄金の息吹(ゴールデン・ブレス)』を発動させた。

 そして右腕に全魔力を注いだ光の闘気オーラを宿らせる。


 ――この一撃に残りの全魔力を使う!

 ――これが決まれば、確実に此奴を倒せる筈だぁっ!

 ――喰らいやがれ、コレがオレの全力の「とおし」だぁっ!!


「ご、ご主人様! あ、危ない、逃げてぇ!」


 と、主人の傍で叫ぶ使い魔の猫の妖精(グリマルキン)

 だがプラムナイザーは既に死に身体状態。

 故にミアンの声は彼女に届かなかった。


 ラサミスは瞳がぎらりと光せて、プラムナイザーの懐に入り込んだ。

 そこから「ハア――」と大きく呼吸して、右手を開いたまま大きく前へと突き出した。

 そしてラサミスは眩く光った右手でプラムナイザーの胸部を全力で強打。

 次の瞬間、凄まじい衝撃がプラムナイザーの体内で爆発する。


「ぐ……ぐはあああぁぁっ――――」


 ラサミスの右手に伝わる確かな衝撃。

 プラムナイザーは口から胃液と血液を逆流させながら、

 物凄い勢いで後方に十メーレル(約十メートル)程、斜め後ろに吹っ飛んだ。

 そして背中から教会の壁に衝突。 するとそのままずるずると床に倒れ込んだ。

 それと同時にプラムナイザーは「がはっ」と嘔吐いて、両肺を潰された口から大量の血液の泡を吹き出していた。


「ハアハアハアハァ……」


 全魔力を使い切ったラサミスは呼吸を乱しながら、

 見下ろす形で地べたに倒れ込んだプラムナイザーを見据えた。

 

「ご、ご主人さ……まァ……アアアァッ……」


 プライナイザーの傍に浮遊する猫の妖精(グリマルキン)のミアンの身体が明滅し始めた。

 ミアンはプラムナイザーの魔力で生み出された使い魔である。

 故に使役者であるプラムナイザーの命が尽きれば、当然使い魔であるミアンも消滅する。

 そしてミアンの身体が徐々に消えて行き、

 最後は一つの魔石となって、その姿は完全に消滅した。


 するとプラムナイザーの顔から生気が抜け、その双眸も急速に輝きを失う。

 そして意識が薄れゆく中、彼女は最後にこう思った。



 ――まさかわたくしがヒューマン如きにられるとはな。

 ――しかしそれも仕方あるまい。

 ――単純にわたくしが弱くて、ラサミス()が強かったのだ。

 ――だからその結果も甘んじて受けよう。

 ――だがこのわたくしが……五百年生きた吸血鬼ヴァンパイアが……

 ――こんな所で朽ち果てるというのか?

 ――しかしそれも最早変えられない宿命。

 

 ――ならば無駄な足掻きは止めて、甘んじて死を受け入れよう。

 ――最後は……華麗に美しく……散ろう……



 そしてしばらくすると五百年生きた女王吸血鬼クイーン・ヴァンパイアの命の灯火ともしびが完全に消え失せた。

 ラサミスは無表情のまま、プラムナイザーの亡骸を見据えていた。

 その胸中には達成感も高揚感もなかった。

 だがこれで終わりではない。

 ラサミスの戦いは、連合軍の戦いはまだ続くのだ。


 そしてしばらく経つと、プラムナイザーの亡骸は灰と化して完全に消滅した。

 ラサミスはその光景をぼうっとした表情で見据えていた。

 それは全てを出し尽くした戦士の横顔であった。

 するとしばらくするとラサミスの全身に強い力が沸き起こった。

 

「っ!?」


 一瞬何事だ、と警戒するラサミス。

 だがすぐにそれはプラムナイザーを倒した事によって得た膨大な経験値エクスペリエンスと悟った。

 すると急に緊張感が消え失せて、身体の力が抜けた。

 そしてラサミスは左膝を床につけた。


「ら、ラサミス! だ、大丈夫!?」


 と、メイリンがラサミスの許に駆け寄った。


「……やるじゃない、アンタ。 良い男になりそうね」


 と、クロエも傍によって来て、そう告げた。

 しかしラサミスは何処か達観した表情でこう返した。


「オレ一人の力じゃないさ。 皆のおかげさ。

 それより負傷した仲間の介抱を頼む、オレも体力が戻ったら回復ヒールするから……」


「う、うん」「分かったわ」


 この勝利によって、連合軍はザンバルドに続き、敵の幹部を新たに倒す事に成功。 そしてラサミスはこの勝利によって『吸血鬼(ヴァンパイア)殺し(スレイヤー)』と呼ばれるようになった。 だが本人はそれに対して特に感情の色を見せず、何処か達観した感じでその現状を受け入れた。 後にして思えば、この時からラサミスは英雄ヒーローとしての道を歩み出したのかしれない。 しかしいざ憧れの英雄ヒーローの道を歩み出した本人は、その称号と周囲の評価に何処かシニカルな笑みを浮かべて、特に何も云わなかった。


 だが今この瞬間は生き残れた事。

 誰一人として仲間に犠牲を出さなかった事に満足しながら、

 疲れた身体と精神を休ませる為に浅い眠りにつくのであった。



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― 新着の感想 ―
ラサミス、金星おめでとう! 刀使いのスキルはもちろん、積み上げてきた体術スキルとのくみあわせがつかんだ勝利。 ここまでの努力が着実に報われてきてるなあ、とうれしくなります。 英雄としての風格も育ってき…
[良い点] プラムナイザー大物らしい潔い散り際が あっぱれでしたね。 刀使いになったラサミスの戦いぶりが、 素晴らしかったです。 [一言] 上陸戦になってからの、 連合軍の勢いは止まらない。 でも局地…
2021/08/18 06:58 退会済み
管理
[良い点] ついに、遂に倒しましたね!! お疲れ様、ラサミス~~。ライル兄ちゃんに続いての弟の活躍。またもユニオンとしての名誉が上がりましたね。 これで、アイザックの部下であるボバンも名前で覚えてくれ…
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