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【天界編開始!】黄昏のウェルガリア【累計100万PV突破】  作者: 如月文人
第三十八章 追風(おいて)に帆を上げる

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第二百二十話 中原に鹿を逐(お)う

累計ユニーク15000人達成!

これも全て読者の皆様のおかげです!



---ラサミス視点---


 円卓会議に参加するのは、まず主催者である猫族ニャーマンが、大臣とマリウス王子、山猫騎士団オセロット・ナイツの騎士団長レビンの計三名。


 ヒューマンはハイネダルク王国騎士団の騎士団長バイスロン・アームラック。

 副団長のエルリグ・ハートラーといういつもの顔ぶれ。


 エルフ族の穏健派からは、巫女ミリアムとナース隊長と魔導師ソーサレスリリアの三名。

 竜人族は族長のアルガス、オレ達となじみ深い傭兵隊長のアイザックの二名。

 そしてドラガン、兄貴、オレを加えた十三名で円卓会議が行われた。


 前回同様、壁を背にして猫族ニャーマンの大臣が上座に座り、

 その左隣にレビン団長、右隣にマリウス王子が座る。


 大臣の右手側の席に巫女ミリアムとナース隊長、リリア、

 ヒューマンの騎士団長アームラックと副団長ハートラーが座っていた。


 大臣の左手側の席にドラガン、兄貴、オレ。

 そして下座には族長アルガスとアイザックが座っている。


 独特の緊張感が室内に充満して、誰も口を開こうとしない中、

 猫族ニャーマンの大臣が落ち着いた口調で沈黙を破った。


「では四大種族による円卓会議を始めたいと思う」


 大臣はそう言ってから、軽く咳払いして一呼吸を置いた。

 そして次のように二の句を継いだ。


「既にご存じかもしれませんが、先日、我が四大種族連合軍の海軍艦隊が、大猫島に攻め込んだが、見事に返り討ちにあった。これによって我が軍の海軍戦力は低下したが、再起不能という状態ではない。 まだ詳しい情報は伝わってないが、どうやら敵には海戦のエキスパートが居たようです」


「海戦のエキスパート?」


 と、騎士団長アームラックが怪訝な表情でそう問う。


「ええ、端的にお答えしましょう。

 魔王軍にダークエルフを中心とした海賊艦隊が加勢していたようです」


「なっ!?」


 大臣の言葉に巫女ミリアムが驚きの声を漏らした。

 ダークエルフを中心とした海賊艦隊?

 そんな連中がなんで魔族に加勢したんだ?


「ミリアム殿はその海賊に心当たりがあるのですかな?」


 そう一石を投じたのは、竜人族の族長アルガスだった。

 するとミリアムは少し考える仕草をしてから、こう答えた。


「ええ、恐らくダークエルフ海賊の連中でしょう。

 我々、穏健派も奴等には手を焼いておりますわ」


「ふむ、つまりそやつ等が魔王軍と手を組んだ、というわけですかな?」


 ヒューマンの副団長ハートラーが勿体つけた口調でそう言う。

 そんなの話の流れを聞いてたら、普通に分かるだろ!

 と、思いつつもオレは周囲の会話に静かに耳を傾けていた。

 どうせオレには発言権ないからな。


「まあそういう事になるでしょうね」と、巫女ミリアム。


「それは厄介な事態ですな。

 それで猫族ニャーマンの大臣殿はどのような事をお望みなのでしょうか?」


 族長アルガスが大臣をちらりと見ながら、そう言った。

 すると周囲の者の視線が自然と大臣に向いた。

 だが大臣は毅然とした態度でこう答えた。


「端的に云いましょう。 我々も海賊と手を結びたいと思ってます。 具体的な案としては、セントライダーとうを拠点とする猫族海賊ニャーマン・パイレーツと手を組むつもりです」


「「「猫族海賊ニャーマン・パイレーツ!?」」」


 と、各種族の代表が声を揃えて、そう言った。

 『猫族海賊ニャーマン・パイレーツ』かあ~。

 オレもその名前は噂で聞いた事がある。


 なんでも連中は竜人領ラムローダの北東にあるセントライダー島を拠点とする海賊らしい。

 だが奴等は只の海賊ではないらしい。 実際に連中は奴隷運搬船を襲って、奴隷を解放したり、私掠品を貧しい者に分け与えたりする義賊ぎぞく的な側面もあるという噂は有名だ。


 まあ俄には信じがたいが、猫族ニャーマンならあり得る話かもしれん。

 どうにも猫族ニャーマンという種族は子供じみた純粋さや正義感を持っているからな。

 それはさておき、個人的には猫族海賊ニャーマン・パイレーツと手を組むことは賛成だ。


 正直、今の連合軍は海戦や艦隊戦の経験があまりないからな。

 そりゃ海賊討伐や不可侵海域で小競り合いくらいはしたことあるだろうが、

 本格的な海戦や艦隊戦は第一次ウェルガリア大戦以降されてないからな。

 そういう意味じゃその道のエキスパートを雇うのは悪くない案だ。


「ああ、彼等か。 確かに彼等とは手を組んでもいいかもしれませんな」


 と、族長アルガス。


「でも海賊ですよ?」と、ハートラー。


「確かにそうだ。 だが猫族海賊ニャーマン・パイレーツは、海賊というより義賊的な側面が強い。 奴隷運搬船を襲って、奴隷を解放したり、私掠品を貧しい者に分け与えたりするという話は有名じゃ」


「でもそれらは全て違法行為ですよ?」


「だからどうした? 平時へいじならともかく今は戦時せんじなんじゃぞ? 多少の違法行為なら目をつぶっても構わん。 それにけいにはもう一つの可能性が見えないのか?」


 族長アルガスはハートラーの言葉を一蹴しながら、逆に問いかけた。


「……もう一つの可能性? それはなんでしょうか?」


「……なんじゃ分からんのか?」


 と、アルガスは少し突き放すような口調で言った。

 するとハートラーは露骨に不愉快そうな表情になった。

 その険悪な空気を変えるべく、マリウス王子がアルガスに向かって言った。


「それは猫族海賊ニャーマン・パイレーツが敵――魔王軍と手を組むということですかニャ?」


 すると族長アルガスは満足げに「うむ」と頷いた。


「そう、それこそが問題なのじゃ。 敵の敵は味方という言葉があるが、この状況下で猫族海賊ニャーマン・パイレーツまで魔王軍に加勢するのは状況的にまずい。 なので我等、竜人族としても彼等と共闘することに反対はしない」


「うむ、我等、猫族ニャーマンとしても彼等と共闘したい。

 この件に関しまして、ヒューマンやエルフ族の意見をお聞かせ願いたい」


 するとアームラックやハートラー、それに巫女ミリアムもしばらく沈思黙考していた。

 まあそう簡単に結論が出る問題じゃねえよな。

 というか結論が出ていても、ここは駆け引きとして相手の様子を伺う場面だ。

 だが思ったよりも早く巫女ミリアムが賛成の意を示した。


「我々、穏健派としては猫族海賊ニャーマン・パイレーツと共闘に異論を挟むつもりはありません。 ただし我々はダークエルフ海賊の奇襲を警戒する為、北エルドリア海にある程度の警備艦隊を配置する必要があります。 なので次の大猫島の戦いで、新たな艦隊を派遣する余裕はありません」


 と、賛成しつつ自分らの戦力は割かない事を明言した。

 彼女の隣席のナース隊長とリリアも――


「ええ、正直その余裕はありませんな」


「ナース隊長の仰る通りです」


 と、相槌を打った。

 まあ彼等の主張も分かるが、上手い具合に逃げた気もするな。

 穏健派といえどこういう部分はエルフ族らしいな。

 そしてそれに便乗するように、ヒューマンの騎士団長アームラックが口を開いた。


「我々としても猫族海賊ニャーマン・パイレーツと共闘に反対するつもりはない。

 だが我々はあくまで王国騎士団、陸の戦いの専門家ではあるが、海の戦いの専門家ではない。 なのでこの件に関しては海軍の提督方と話し合って欲しい」


「アームラック団長の言うとおりです。

 我々にはこの件には決定権がない……ということでよろしいですかな?」


 と、副団長ハートラーが得意顔でそう言った。

 なんかこいつ嫌いだわ、ヒューマンの悪いところを凝縮したようなタイプだな。

 

「でも基本的に賛成ということでよろしいかな?」


「まああくまで私個人の意思ですがね」


 大臣の問いにアームラックはやや憮然とした表情でそう返した。


「では基本的に皆様方の賛成も得られたので、我々の中から猫族海賊ニャーマン・パイレーツの拠点であるセントライダー島に向かうメンバーを決めたいと思います」


 大臣はそう言ってから、一呼吸を置いた。

 そしてやや勿体つけた口調でメンバーの名前を読み上げていく。


「まず我々、猫族ニャーマンからは大臣である私、それと王族の代表としてマリウス王子。

 それとレビン団長を初めとした山猫騎士団オセロット・ナイツの団員達。 そして我等の護衛役として竜人族の傭兵隊長アイザック殿、更には『暁の大地』の団員にも同行してもらいたいのですが、よろしいかな?」


 まあ悪くはない人選だな。

 どうせオレ等には決定権はないだろうが、手を組む相手の事はよく知っておきたい。

 だからドラガンも「ええ、構いませんよ」と即座に答えた。

 それに同調するようにアイザックもこう言った。


「私も構いませんが、一応族長の許可を取る必要があります。

 アルガス族長、私も彼等に同行してよろしいでしょうか?」


「ああ、構わんよ。 というかワシも同行させていただきたい」


「アルガス族長もご同行なされるというのですか?」


 族長アルガスな意外な申し出にそう問い返す大臣。

 するとアルガスはやや語尾を強めて言葉を返す。


「ああ、我等、竜人族は彼等――猫族海賊ニャーマン・パイレーツとの共闘に強く賛成する。 それを彼等に直に会って伝えたいと思う。 彼等としても支持者が多い方が良いだろうしな」


「……そうですね、ではアルガス族長もご同行する、ということでよろしいですか?」


「「「異議なし」」」


 と、アームラックや巫女ミリアム、マリウス王子が声を揃えてそう言った。

 しかしなんか素直に喜べないな。

 族長アルガスは老獪だからな。 何か裏があるような気がする。

 とはいえ現時点で彼の同行を拒むことは出来ない。

 すると大臣は表情を緩めず、事務的にこう告げた。


「では今後の事は猫族ニャーマン領のホルトピックで話し合いましょう。 尚、『暁の大地』の団員の方々はこの会議に参加する必要はありませんので、先に港町クルレーベへ向かってください。 それでは3日後の1月11日にホルトピックのお会いしましょう」


「了解しました」と、ドラガン。


「うむ」と大きく頷く族長アルガス。


「では本日の会議はこれにて閉会します。

 次の会議は猫族ニャーマン領のホルトピックで行います。

 日時は三日後の十一日の予定です。 それでは解散します」



 こうして円卓会議は無事に終わった。

 まあ個人的には悪くない話し合いだったと思う。

 だが竜人族の代表アルガスの動きが気になるな。


 あのオッサンは食えない性格してるからな。

 そういや最近は馬鹿息子のアーガスを同席させてないな。

 まああんな奴の顔など見たくねえけどな。


 とりあえず三日後の会議はオレ達には関係ない。

 だからリアーナで一日くらい休んでから、クルレーベに向かうか。

 しかし猫族海賊ニャーマン・パイレーツか。


 噂では結構評判が良いが、その実態はどうなんだろうな。

 それをこの目で確かめてみるか。

 とにかく今日は疲れた。 飯食って、シャワーでも浴びよう。

 明日の事は明日考えればいいのさ。




次回の更新は2021年4月24日(土)の予定です。


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― 新着の感想 ―
 次は猫族海賊の取り込みですね。海の戦いは慣れないときついですから。  魔族の戦いでも様々なシチュエーションがあり、飽きさせませんね。  とてもよいです。ではまた。
[一言] 次の目標は、猫族海賊。 すんなりと仲間になってくれるかなぁ・・・
[良い点] ラサミス、上級クラスの昇進おめでとう♪ しかし、あの大会はかなり露骨だった。なんだか、あのルーベンも可哀想だよ。運営に利用されてる感じは分かってても最後までプライドを捨てずにやりましたし…
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