第九章 解決策を求めて
政府も事態を重く見て、【SNS健全化委員会】をようやく設立した。
委員長には元裁判官の川田氏(67)が就任した。
「我々は、SNSにおける過度な集団行動を規制し、健全な議論文化を構築する必要がある」
委員会は更に3ヶ月かけて報告書をまとめた。
その内容とは
炎上の定義を明確化
過度な批判を規制するガイドライン策定
SNS事業者への監視義務付け
デジタルリテラシー教育の強化
報告書の発表会見で、川田委員長は自信満々に語った。
「これで、無秩序な炎上は終わりを告げるでしょう」
しかし、報告書が公開されると、すぐに炎上した。
『政府による言論統制だ』
『表現の自由の侵害』
『官僚の利権拡大』
『#言論統制反対』
川田委員長は困惑した。まさか自分が炎上するだなんて夢にも思っていなかったからだ。
「我々は炎上を防ごうとしただけなのに、なぜ炎上するのか」
副委員長の田所氏(52)が答えた。
「委員長、それは炎上を防ごうとしたからです」
「意味がわからん」
「炎上を防ぐこと自体が、新たな炎上の原因になるんです」
川田委員長は深く溜息をついた。
「では、どうすればいいんだ?」
「何もしないことです」
「何もしない?」
「はい。でも、何もしないと『政府は何をやっているんだ』という炎上が起きます」
手も足も出ない状況で、口だけ出されることに、委員長は頭を抱えた。




