表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/18

sideデクテット・デュエット子爵令息視点?


◆sideデクテット・デュエット子爵令息視点?

 ──僕はデクテット・デュエット。13歳です。デュエット子爵家の第2子であり長男として生まれ嫡男として育てられています。


 家族そろって水色の髪と琥珀色の瞳なので、うん。どこからどうみても家族で姉弟だと間違いようがないと思う。たぶん?


 違うのは僕が母親似で美人らしく最近まで女性とよく間違われてたこと……否、今でもかな……


 姉は逆に精悍な父親似で、美形で、男装しているせいか余計に女性たちからもてもてなこと。最近は女性らしい色気とかそういうものもちゃんとあるけど、それでも女性たちには受けがいいんだよね。


 姉のクインティナ・デュエットとは3歳差。姉は幼少の頃から美形で、誘拐されそうになった時に女性騎士の中でも有名なソロン辺境伯夫人に助けられてから憧れるようになっただけでなく、才能もあったのでしょう。







 15歳でデビュタントしてからは、将来はさぞや優秀な女性騎士になるだろうと他の女性兵士見習いたちと共に訓練や雑用をこなしてるんだ。


 けれどそこに至るまでの道は決して楽ではなかった。助け出された日から子爵家の年配の騎士に弟子入りしようとするも、大剣を持たせられて、


 『この重さの剣を丸一日、いや……1か月間素振りできないようなら無理だ。』と断られた。


 騎士は女性だてらに、と断るためと諦めさせるつもりで出した条件だったのでしょう。


 しかし姉は諦めず、本当に丸一か月間素振りし通して根性を見直され、見事弟子入りの座をもぎ取り、ただし直接の指導ではなく、実践で覚えた方がいいと騎士達と一緒に混ざっての修行と訓練をすることから認められた。






 16歳になった現在は新人兵士として頑張ってる。非番の日や休日や貴族令嬢としての催事などの知人たちとの集まりでは、男装の麗人としても多くの貴族令嬢たちから人気があり、フェルマータ・カルテット侯爵令嬢という高位の親友までいる。


 フェルマータ嬢とは、お互い貴族に見えないようなお忍びの格好で町で買い物していた時に、ひったくりを姉が捕まえた時に出会ったのがきっかけらしい。


 被害にあって倒れて擦り傷を負った老人や、犯人が逃げ出す途中で巻き添えに合って殴られて泣きわめく子供を助けたフェルマータ嬢の姿に、世の中捨てたモノじゃないと姉が感心したそうだ。


 ほとんどの……偏見かもしれないけど、特に高位の貴族ほどとても尊大で偉そうで上から目線で、庶民を馬鹿にしたり無視するのが普通だから。フェルマータ嬢の行いは普通の貴族としては人間として珍しかったようです。


 逆にフェルマータ嬢も、女性騎士はソロン辺境伯夫人である叔母様がいるので知ってはいたけど、男装の姉を華奢な男性だと思ったことに驚いたらしい。……やっぱりそっちだよねえ……





 そんな姉とバリスにいさん……バリストン・ソロン辺境伯令息とは剣大会で出会った。女性騎士部門に出場した姉は、踊るように舞を舞うような流麗な動きで相手をいなして順当に勝ち上がってた。


 決勝で女性にしては力とスピードに長けた2剣流の相手に僅差で負けてしまったけど、堂々の準優勝だった。


 その姉を最初に見初め一目惚れしたのは、なんと姉の憧れのソロン辺境伯夫人だった。それから夫人を介して将来の義兄になるだろう予感のあったバリスにいさんとも会うようになり、さらに姉が従妹のフェルマータ嬢と親友だと言うこともあり、辺境伯家と侯爵令嬢との交流が増えていったんだ。


 けれどフェルマータ嬢が、姉達が異性に関しては奥手で無口になるため仲を取り持つようになったせいで、婚約者さんとの仲が剣呑になり別れてしまうなんて……


 姉がフェルマータ嬢が最近会ってくれないと言い出した頃、バリスにいさんから二人の破局話をこっそり教えてもらい、婚約解消のショックで面会してくれないのだろうと推測した。


 さらに数週間後、前々から隣国のキナ臭い情報が軍部の雑用をこなしながら女性兵士として働いていた姉や、隣国との国境を守る辺境にいるおかげで肌で感じたバリスにいさんたちにはわかったらしい。


 とうとう本格的に隣国が戦争を仕掛けてきたと。辺境と隣国との境にある平原が紛争地帯になったと情報が国全体にもたらされた。


 バリスにいさんは辺境伯家に優秀な騎士や英雄と呼ばれるほどの人材達がたくさんいるそうだし、姉は戦争に直接関わるような役職や部署ではなかったけど、バリスにいさんは辺境の要所である砦を守るために物資や医療の支援を、姉は新人兵士なので後方勤務で物資の搬入をすることになり、医療や食料を扱う我が子爵家も提携しながら手伝うようになった。


 それと、トリオ伯爵家から考案された画期的な輸送事業を担う大手の商人や、僕よりもまだまだ若い将来はさぞや立派な当主になるだろうテノール君などとも提携し合って、戦争が他人事だとは言えなくなってきた。


 僕は子爵家の跡継ぎとしての勉強をしながら姉達の搬入の手伝いをし始めてたある日、トリー ……レガートリータ嬢からフェルマータ嬢の様子を知らされ、搬入で子爵領にきていた姉やバリスにいさん、それにテノール君と共に何とか手助けしたいと相談し合った。






 本題に戻る前にトリーについて少し知っておかないとね。


 彼女は幼少の頃から貴族の令嬢としては庶民的な行動が多くお転婆だったらしい。しかし彼女の真価は行動ではなくその発想にあったらしい。


 彼女の姉のフェルマータ嬢も幼少時から努力家な上に才能もある才女だったらしいけど、トリーは奇抜で画期的なアイデアを侯爵家にもたらしていたそうだ。


 本来は極秘だけどここでの話だけ。侯爵が手掛けた鉄道事業も極秘だが実はトリーが発端らしいし。【うどん】や【和菓子】なる料理も彼女の発想らしい。


 化粧品は昔からあったけど、トリーに言わせると中には水銀という人体に危険な影響を及ぼす材料を使っている粗悪品があるらしい。侯爵家は外国から化粧品を取り寄せていたので危険な材料の混ざった物はなかったらしいが、トリーは母親の侯爵夫人のためにさらに天然の植物からとった【白粉】を考案したそうだ。


 他にも。固形石鹸はあったけど液状石鹸の【しゃんぷう】や、蜂蜜から作った【りんす】という髪専用石鹸も発明した。


 糊とセロファン紙はあったけど、両方を合わせた【糊せろふぁん】を発案したのも彼女らしい。


 化粧粉と糊セロファンを転用した指紋鑑定方法もトリーの発案だ。そんな彼女のおかげでフェルマータ嬢に関する事件を解決できたんだ。






 フェルマータ嬢と婚約者さんとの仲が破局してから、フェルマータ嬢は男性不信になり社交の場に出なくなった。


 けれどフェルマータ嬢が外出を控えたのは婚約破談のせいだけじゃなく、貴族でのひどい噂も原因の1つだ。


 トリーがフェルマータ嬢やトリー自身に下心を持って近づく男性を誘惑していた行動や、トリーたちの母親カルテット侯爵夫人の虚言がなくなり、むしろフェルマータ嬢の悪評を失くそうと努力し続けたおかげで、フェルマータ嬢を貶めるひどい噂はかなり少なくなった。


 そう……それなのに冤罪に等しい噂は全く消えなかった。クインティナ姉上やフェルマータ嬢の友人たちや、僕たち知人も噂を払拭しようと社交の場で声をあげてた。


 それでも改善しないフェルマータ嬢の噂の出処を突き止めるために、僕たちは地味で大変だけど、家令や執事、侍女頭やメイドたちに誰から聞いた? どこで聞いた? としらみつぶしに本当の嘘吐きの出処を辿って行った。


 そして偶然、トリオ伯爵家のファルセット嬢が、以前没落したある男爵家で働いていたメイドで伯爵家の侍女の一人と仲が良かったと言うことで拾い上げて雇用した娘がいるのだが、非番の日に知り合いだと訪ねてきた相手が話していたのを聞いたそうだ。


 庭で遊ぶ幼いファルセット嬢を侮っていたおかげもあるようだ。しかし聡明なファルセット嬢は、しっかりはっきりとした口調で兄のテノール君に話の内容が子供では理解できないために相談したらしい。


 彼らの兄であるアルト氏の婚約が破談になったからといってカルテット侯爵家との交流までなくなったわけではない。むしろ2人の今後を気にして家族ぐるみで改善しようとしていた。


 そこから姉のためにと精力的に動いていたトリーに、率先してトリオ伯爵家やソロン辺境伯家、僕たちの子爵家にまで足を延ばしていたおかげで伝わり、本当の嘘吐きが見つかったのだ。


 フェルマータ嬢の話を基に捜査すると、噂を流布し続けていたその裏でアルト氏に横恋慕していたらしいメイドだったことをつきとめた。






 先ずはトレモロリア侯爵夫人の証言により、フェルマータ嬢のデビュタントの時にエスコートパートナーを侯爵夫人からアルト氏には既にエスコートを別の人に頼んだからと嘘を吐かせ、逆にアルト氏に問い合わせても断るように仕向けた犯人は誰か?


 また、アルト氏の先ぶれが来て訪問するのがわかっていたのに、フェルマータ嬢が出かけてしまったり、不在だったり、半分は侯爵夫人自身にも原因があると認めてくれたが、じゃあそれ以外のフェルマータ嬢自身が出かける用事があると告げられたのを知っていたのに、報せなかったのは誰か?


 その結果、犯人はわざと黙っているか、侯爵夫人に進言することで、侯爵夫人をわざと矢面に立たせ母娘の仲までも引き裂こうと仕向ける結果を作った……それは誰か?


 それらの嘘を吐いたのは誰か? それは犯人が進言したからだと侯爵夫人が教えてくれた。






 テノール君とファルセット嬢の証言により、アルト氏がバリスにいさんや男装したクインティナ姉上との仲を、まるで恋人同士であるかのように密告していたのは誰か?


 ファルセット嬢が聞いた、犯人と伯爵家の犯人の知人のメイドが話ししていた中に、例のひどい噂を流してくれと言われた以外に、主人を密告するようで辛いのだがアルト氏にどうしても伝えた方がいい……と浮気をしているという話もあったというのだ。


 そのせいでアルト氏とフェルマータ嬢の仲を引き裂こうと、犯人が嘘を吐いていたことが判明した。






 オクテットさんと配達屋の人達の証言により、犯人は配達屋が来る時間になると必ず最初に配達物を受け取っていたのが発覚した。また、配達人たちからの証言により、同様に侯爵家の配達物を誰が受け取っていたのかも判明した。


 侯爵家の重要な書類や物資はセバスチャンさん、それ以外は宛名にある本人、重要でない侯爵家宛ての宣伝とか親戚や知人たちからの手紙などは主人である侯爵夫人に必ず渡さなければならないそうだ。


 しかしアルト氏とフェルマータ嬢の手紙や贈り物だけを盗んだり破壊して庭に捨てていたのを、オクテットさんは目撃していた。


 フェルマータ嬢が病気で自室内から出なくなったり、リハビリが始まっても邸内から出ない日々が続く原因の1つになったと気付き、以前は何をしているのかわからなかったが、僕たちが捜査したことで、あれはそういう意味だったのかと気付いたらしい。


 もちろん、オクテットさんや配達人の証言だけでは逃げられたりとぼける可能性が高い。壊されたり破かれて埋められたアルト氏の贈り物の成れの果てを庭師のオクテットさんのせいにされる可能性もある。


 しかしトリーの指紋鑑定という重要な証拠が判明する方法で、指紋の持ち主の犯人だけがアルト氏とフェルマータ嬢の手紙や贈り物を盗んだり破壊して捨てることができたのだと、ぐうの音も出ない方法で追い詰めた。


 もちろん、それ以外の指紋も検出されたが、オクテットさんではないことが証明されただけだ。配達人たちの指紋はあったけど、邸内に入ることができないはずだし配達時に指紋がつくのは当たり前なので除外。残ったのは恐らくアルト氏と犯人の指紋だけだった。


 またフェルマータ嬢が贈ろうとしていた物に付いていた指紋は、執事さんや数人のメイドの指紋もあったが、しかし共通して必ずついていた指紋はフェルマータ嬢と犯人の指紋だけだった。






 さらにトリーの証言により、自分の衣装部屋の中の配置が微妙に変わったり、衣装や宝飾品自体が減らされているという違和感を覚えた。


 小さい頃の衣装なら成長したため侍女頭や母親の侯爵夫人が片付けさせただろうと考えたが、それにしてはおかしいと。


 そこで彼女は衣裳部屋の扉に小さな紙切れとよく折れる小枝を挟んで、自分が着替えるためにメイドや侍女が出入りする時以外に、何者かが出入りしていると確信した。


 そして手袋をはめたまま、例の指紋鑑定で調査した。特に一番指紋が多く見つかり触られていたのは、喪中時にしか使わないはずの衣装や靴や宝飾品が納まっているケースで、その中に身に覚えのない手紙や宝飾品を見つけ、やはり同じ指紋の持ち主の犯人に突き付けた。






 侍女頭の証言により、犯人は二人の令嬢の世話係として衣装部屋に入りたい放題の特権を悪用して、ドレスや宝飾品迄盗み売りさばいていたことが発覚した。


 侍女頭の指示の下、犯人の部屋を捜索すると、お菓子の缶に入れられたアルト氏の手紙や一部の贈り物、さらに侯爵夫人や令嬢たちの宝飾品の一部までもが発見された。


 これにはテノール君の証言により、アルト氏の事業の輸送事業で中古品を取り扱った時に見覚えのある商品が混ざっていたことで発覚した。


 伯爵家嫡子としてのテノール君が、お兄さんのアルト氏が購入した商品のリストを提供してくれたおかげで遠慮なく照らし合わせることが出来た点も大きい。


 またセバスチャンさんや侯爵夫人からの証言により、侯爵家で侯爵夫人である奥様本人やフェルマータ嬢やトリーのために購入した見覚えのあるドレスや宝飾品が、知り合いの業者や商人や質屋で売られていたのに気付いたおかげだ。


 特注で侯爵家から購入したデザインを取り扱った一点ものの商品をセバスチャンさんがとてもよく覚えていたおかげと、こちらももちろんリストの提供で照らし合わせることが出来た。


 また侯爵夫人手ずから編んだこの世に二つとないレースが使われていた点も大きかった。






 バリスにいさん、クインティナ姉上、トリー、僕、テノール君は、カルテット侯爵家の執事のセバスチャンさんや侍女頭、庭師のオクテットさんたちにも協力してもらい確実に証拠と証人と証言を固めると、侯爵家に乗り込んで、メイドを取り囲んで追い詰め断罪した。


 「──リリコ嬢。ちょっとお時間いただけますかな?」


 「し……執事さん、それに奥様に侍女長……お嬢様たちまで……い…… 一体あたしに何の御用ですか?」


 「リリコさん。貴方自身に何の咎も覚えもないというのなら、どうしてそのように怯えているのかしら? 身の潔白を主張したいなら、もっと堂々としなさい!」






 バリスにいさんや男装したクインティナ姉上の色仕掛けの手練手管で、犯人本人にも自白させた。犯人は、フェルマータ嬢のひどい噂を昔馴染みの伝手を使って流布させていたこと。


 アルト氏からの贈り物や手紙を盗んだ動機は、あまりにも邪悪で浅墓なものだったことを、べらべらと自慢そうに白状した。


 また侯爵夫人を利用したのは、……利用していたのではなく、尊敬し敬愛していたからだ。フェルマータ嬢はアルト氏には相応しくない。自分こそがアルト氏の横に立つに相応しいと認めてもらうためだ。


 だから憧れている侯爵夫人に自分を売り込んで見直してもらうために進言したのだ。と聞くに堪えない内容だった。


 またアルト氏がフェルマータ嬢の顔を恥ずかしくて顔を赤らめて横を向いた時に、たまたまこのメイドがいたとか、それを自分が好きだからこっちを見てくれたのだとか、最終的には自分に会いに来るために侯爵邸に来てくれてるのだとか醜悪なお花畑な内容だったのだから。


 だから天が自分にご褒美をくれたのだとか。だからアルト氏に気に入られるために彼に相応しいドレスと装飾品を身に着けるのは当然だろう? とか。


 だから侯爵夫人や令嬢たちのドレスや宝飾品は自分に与えられた当然の権利だ。あれらは贅沢三昧な彼女たちが使うのに相応しくない。


 それに失くなっても気付きもしなかったし、1度しか使わずにすぐに飽きて放り投げたり捨てて新しい物に変えるのを、自分が有効活用しただけだ。


 さらにこの犯人がおこなったことで一番許せない罪は、フェルマータ嬢にわざとアルト氏が一番危険な激戦地へ行ったことを教えたことだ。


 しかも言い訳がこれまた見苦しかった。フェルマータ嬢がアルト氏が何のために、何をしに訪問してきたかどうしても知りたいから教えてやっただけだ。自分は何一つ悪くない。悪いことをしたとは思っていない。むしろ親切ごていねいに教えてやったことの何がいけないのだ! とかほざきやがった。


 「……そんな……そんな理由? ……そんなくだらない理由で、お姉様は自殺までしたと言うのに! 許せない……許さないわ!! ……」 僕は涙をためて悔しがるトリーを落ち着かせるために、肩を抱き寄せて慰めることしかできなかった。






 犯人に僕たちが次々と証拠を上げていくと、髪を振り乱して顔面を真っ赤に染めて怒り狂い暴れ回ったため、侯爵家の護衛騎士たち二人掛かりで取り押さえなければならなかった。


 唸り声を発し、悪態を吐き続けるメイドのリリコだったが、将来の僕の義兄予定のバリスにいさんが格好良く決めてくれた。


 「そんなのは愛情なんかじゃない! 幼稚なままの幼児が気に入った玩具に対するだけの、自分勝手で利己的なただの執着心だ!!」


 可愛い従妹であるフェルマータ嬢を追い詰めるような行為をしたことが余程お冠だったみたい。


 クインティナ姉上も、僕もトリーも、オクテットさんも侍女頭も、フェルマータ嬢のために、ひどい言い訳と醜く歪んだ行き過ぎた行為に胸糞が悪くなったとお互い慰め合った。


 テノール君からは、兄とフェルマータ嬢との仲違いをさせる原因をわざと作ったとして、厳重な罰を与えてほしいと進言された。


 侯爵夫人からはフェルマータ嬢をわざと憎ませるような進言をしてきたことで、娘との交流を邪魔し続けた罪も合わせて解雇された。


 セバスチャン執事からは奥様である侯爵夫人と断罪したこの場にいるみんなの総意だと、紹介状も給料もなしに放逐することになるが何処にも雇ってもらえないだろうと言われ、顔面を蒼白にしていた。


 ただし盗んだドレス代や宝飾品代などを弁償させなければならないと、1箇所だけ紹介状を書いてやるから、そこで罪を償えと身一つで追い出された。


 セバスチャン執事に聞いてもどこを紹介したのか教えてくれなかった。たぶんどこかの娼館か、リリコみたいな醜悪な人間こそ気に入るような加虐趣味のある貴族か富豪の商家だろう。







 紹介先の主人から定期的に慰謝料とか弁償代とか送られてくるらしいが、ある時を境にぷっつりと途切れたらしい。


 逃げ出したわけではないとあとでこっそり教えてもらったが、それ以上支払う必要がなくなったか、あるいは……因果応報な末路を迎えたことだけは確かだ。──


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ