懐かしき対面と修羅場
評価を……、評価を下さればやる気メガ盛りMAXです(欲しがりお化け並感)
「ア、アンネリーゼ皇女殿下!」
「そのままでいいわ、エーメリッヒ」
「そういう訳にはいきません!」
突如現れた来訪者を目にして、エーメリッヒは驚いてすぐにベッドから抜け出る。
それから格別に美しい、気品溢れる女性に対して失礼のないようにかしずいた。
「ほんと真面目よね、あなたって」
対する女性――アンネリーゼは、呆れるように笑った。
「しかし……どうしてここにいらっしゃったのです……?」
「宮廷魔術師採用試験で、凄い受験生がいるって聴いてね」
アンネリーゼは黒のローブに身を包むルミラに視線を向ける。
ルミラは視線だけを向けて、いまだ椅子にかけたままだった。
「駆けつけた頃にはびっくりよ。あろうことか、我が国の最高宮廷魔術師であるあなたが圧倒されて、医務室送りにされてるんだもん」
そう言い切ったアンネリーゼは、どこか嬉しそうだった。
「――ッ! 我が国の品位を著しく下げてしまったこと、死してお詫びいたしますッ!」
愛国心の強いエーメリッヒは、すぐさま謝罪する。
「なんて物騒なことを」と、聴く人が聴けば全力で止める場面だが――
「だってさ、ルミラ君? 責任重大だねぇ?」
「そんな気、さらさらない癖に」
アンネリーゼはからかうように、ルミラに視線を向けるのみだった。
対するルミラも、ふっと笑みを浮かべるのみだ。
「どうやら、そのつもりで来られたのではないのか」と、エーメリッヒはひとまず安堵するが――
――この後、二人の関係にはらはらとしてしまうのだ。
「ただいま、アンネリーゼ」
「おかえり、ルミラ君」
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「こっ……皇女殿下を呼び捨てとは……ッ!」
なんという無礼だと、エーメリッヒはルミラをすぐに注意しようとするが――
「いいのよ」
アンネリーゼは、軽く右手を振って制止してしまう。
(なっ……! 二人は一体……どういう関係なのだ……!?)
「ル……ルミラ君? アンネリーゼ皇女殿下と……知り合いなのか?」
恐る恐るそう問いかけるエーメリッヒに、ルミラはまたもや笑ってしまう。
「貴方には、話しておきましょうか」
それからゆっくりと、二人の出会いを語り始めるのだ。
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「――なるほど、そんなことが……。それでは、戦闘中のあの話は……」
一通り説明されたエーメリッヒは、納得して回想する。
やはり彼は、本当に"大英雄レギナ"様の生まれ変わりだったのかと。
それではこれからは言葉遣いを改めねばと、そんなことを考えていたのだ。
――が。
これから彼は、アンネリーゼの言葉を皮切りに、会話の外に追いやられてしまうのだ。
「それで?」
「……?」
アンネリーゼは突然不機嫌になりながら、ルミラに視線を送る。
「久しぶりに再会したのに、何かないの?」
「何かとは」
「察しなさいよ、それくらい」
あの頃よりずっと美しく、大人びた顔つきになったアンネリーゼは、ぷくっとふくれ面にしてルミラを非難するが――
「まさか気絶していた高齢の男性を、有無を言わさずかしずかせる趣味があったとは」
「そんなことさせてないでしょう?」
「冗談だよ、相変わらず偉そうだなって」
「違うでしょう?」
対するルミラは、まったくまともに取り合わなかったのだ。
「いい加減にしなさい」と今にも言わんばかりに、我慢の限界を迎えそうなアンネリーゼ。
そんな彼女を見て、ルミラは軽く笑みを浮かべてから、ようやく口にする。
「綺麗になったよ。あの頃よりも、ずっと」
「遅すぎるわ」
いまだ怒っている素振りを見せるアンネリーゼだったが、悲しいことに口角の上がり方は偽れなかった。
そんな可愛い彼女の一面を見て、ルミラはどこか懐かしんでから言葉を続けた。
「それで、俺はどうかな」
その言葉と共に、ルミラは深く被っていたフードをあげて顔を見せた。
「――ッ!」
ずっと男らしい顔立ちに成長したルミラを見て、アンネリーゼはかぁっと赤面してしまう。
くそ、こんなの反則だ、きっとこれは弄ばれているんだと、いらいらとしたアンネリーゼは――
「随分と子供になったわねッ! からかい方が特にッ!」
彼女が考えうる限りの、精一杯の悪態をついて、ぷいと顔を背けてしまった。
しかし、誰がどう見ても照れ隠しにしか思えなかった。
そして、そのあまりの分かりやすさは、そばにいたエーメリッヒも、思わず苦笑いしてしまうほどだった。
――だが。
笑っていられるのは、ここまでだったのだ。
「そこまでにしてもらおうか」
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――ズズッ……!
「"神魔サタン"!」
昔と同じように、渦から登場するサタンに対して、アンネリーゼは笑顔で迎えた。
あなたにも会いたかった、懐かしいわと、再会の言葉をかけるつもりだった。
――だが。
「我が主」
「ん?」
「我はもう、知らんからなっ!」
この後、渦から次々と現れる神魔達を前に、アンネリーゼは言葉を失ってしまったのだ。
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「こっ……黒翼の女の子達……まさか……ッ!?」
渦から次々と現れる黒翼の神魔達を見て、アンネリーゼは驚愕する。
まさかこれも、ルミラ君の神魔達なのかと、それならば一体どれほどの力をつけたというのかと、思考が一杯になってしまっていたのだ。
「アンネリーゼよ」
「な、何……?」
――が。
アンネリーゼが本当に驚くのは、まさにこれからだったのだ。
「ここにいる神魔は全員、我が主に打ち負かされ、身も心も捧げておる。よって、お主の入る余地はない」
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「どういうことかな」
突如現れた神魔、ルシファーの言葉。
言葉の真意を問いただすため、アンネリーゼは冷たい視線でルミラを見る。
「誤解だ! "神魔召喚"に応じてもらうには、己の力で打ち負かす必要があっただけだ!」
「そしてその後、熱い夜を……」
「過ごしてない!」
「優しくベッドに押し倒して……」
「そんなことするか!」
「抱き合って添い寝して……」
「抱き合っては……ッ!」
(ま……まずい……ッ!)
そこまで現れた神魔達の言葉に対して、全て否定していたルミラだったが――
「添い寝は否定しないんだ」
先ほどよりさらに冷ややかな視線と言葉に、肝を冷やしてしまう。
「いやっ……その……」
「私が三年間、どんな思いで過ごしてきたか」
「そっ……その……な……?」
もはや、どのような言い訳も意味がない――
そう考えたルミラは、素直に謝罪しようとするが――
「……ま、仕方ないか」
「えっ……?」
本当に突然のことだった。
意外にもアンネリーゼは、はぁと溜息をついて、怒気をおさめてくれたのだ。
当然に、「何故そうなった」と、ルミラは疑問に思う。
「言い忘れたけど」
そう一言断ってから、ルミラへとゆっくりと歩み寄るアンネリーゼ。
「……?」
そして――
この後のアンネリーゼの大胆な行動に、ルミラはさらに頭が混乱してしまうのだ。
ちゅっ……
「はぁッ!?」
「――ッ!?」
「私も、捧げる準備はできてるから」
次回、完全に修羅場です……。
次回は明日9/13中にアップします!
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