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伝説のシャベル  作者: KY
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5-46 国落とし

火事に巻き込まれないように場所を移動して待機する。勿論フィアのレーダーで周囲の監視は怠らない、周りは全て敵だ。そしてまた、ようやく組織だって救助活動が行われている様子もレーダーが捉えていた。しばらく休むうちにオーラの総量も最大値まで回復する、その代わりに空腹感を感じたため果物を幾つか食べて小腹を満たす。




 延焼はまだ続いてはいるが多くの人数が議事堂近くの広場に集まっているようなのでそこへ向かう。物陰より様子を見るに治療等で忙しく武器をもつ兵士は少ない。そのせいか、獣人とエルフとの間で諍いも起きているようだった。少なくとも、防具を着ていれば危険性は少ないと思われたので陣頭指揮を執る長老に会いに行く。市民の殆どはこちらの情報を知らない、はじめて見るであろう大きなヒトの姿と見覚えの無い妖精の姿に困惑しているようだった。


「大分落ち着いたようだな」

 

「な・・・貴方がそれを言うのか!?見よこの惨状を!美しき都市は焼けヒトビトは皆苦しんでおる!」


「フィアは苦しんでないけどネ。あー、でも早く宝具について片付けないとおじ様の頭の上に乗れないから困るカナー」


「俺も苦しんでいない・・・まあいい、丁度良く責任者達もいるようだし始めようか。降伏宣言を」


 長老の周りには指導する立場にあるであろうヒトビトが集っていた。


「長老、まさかこの巨人めが今回の・・・殺してやる!」


「そうか」


 剣を片手に突っ込んでくるエルフ、だがあまりにも遅い。シャベルを横にして刃で切らないように、高く、高く打ち上げる。空中で血と反吐を撒き散らし、広場の中央に着弾。もちろん最早息をしていないだろう。顔面が蒼白になっている長老に話を聞く体制を作らせるよう言うと、次の犠牲を恐れてかその老齢に似合わぬ動きで取り巻きと共に奔走し始めた。



 多少のざわつきは残るものの広場にいるヒトビトがお立ち台の上に立った長老を見つけ、注目する。さらにその横にこちらも並んで立てば好奇の視線も注がれる。長老の顔色は悪い、今からの話は暴動になりかねない。思えば多少は不憫ではある、この長老という地位は長く生きてきただけのものであり、実質の為政者は他の者であったのだ。それでもその旗頭となるヒトビトは今頃議事堂でローストになっており、代表者として認められるのがこの老人だけになってしまった。確かに自分もその立場ともなれば泣きたくもなるかもしれない。


「皆の者、今より話すことは全て紛れも無い真実じゃ・・・最後まで、騒がずに聞いてほしい・・・」


 話は口調も相まり長いものとなったが、纏めるとこうなる。


 議会および妖精パーネが創造神の使徒である巨人族と妖精を罠にかけてその力を利用しようとしたが怒れる巨人の力によりことごとく命を落とすことになった。その後巨人が使徒の使命を果たすために宝具を手にしたが兵士達に囲まれ再び怒り『フーリル・ユーキー』を業火に包んだ。今この場で巨人及び妖精様に謝罪すると共に無条件で降伏する。といった内容だった。


「何だそれは!」「お前らのせいで」「何でそんなことを!」「よくも家族を!」


 勿論、群集は怒り詰め寄る。その発端となった代表者を容認していたのが自分達であることも忘れて。そして怒りのままにこちらに詰め寄ってこようとする者たちもいる、一人では不安だろうがそれが何人も続けば集団真理となりこちらが一人でいるのを見てか勝てる気でいるのだろう。


 ―-―はい、そこで機関銃の魔法。面白いように目の前が拓けていく。しかしこの魔法、中断が出来ないために詰め寄る群集の後ろにいたヒトビトまで巻き込むことになってしまった。さらに7スター・リボルバーを真上に構えてオーラを込めて爆発の魔法を発現させる。


 群集が静かになったので呆然とする長老を押しのけ台の上立つ。


「ストレンジャー・アウトローだ、こっちが妖精のフィア。騙し討ちの様に貴様らから宣戦布告を受け、そして戦い、勝った。長老は敗北と謝罪を宣言しているが、異論のある者はいるか?」


 先程機関銃の魔法で薙ぎ払われた面々の負傷者と死体はまだ地面に転がっている、静寂の空間に呻き声と子供の泣き声が微かに聞こえるのみだ。


「そうか。では、あとは・・・ケジメを付けてもらわなくてはなるまい、長老」


「こ、この都の惨状だけでは足りないと申されるか!?」


「これはただの戦闘行為の結果に過ぎん、別物だ。・・・さてどうするか」


 欲しいものといっても特に今のところは無い、食料の余剰があれば地上や『ナック』に住む者に提供するよう言いたいところだがこれは当たり前の行為としてやってもらうだけだ。


 ふと、片耳を失っている獣人がある程度の数居ることに気がついたので近くにいる一人を呼び寄せて聞く。


「片耳が無い奴が結構いるようだが」


「こ、これは罰です・・・エルフの方々に対し無礼や罪を犯したものが、犯したとみなされたものが切り取られました」


 言い直したところを見ると、嫌がらせのように、嗜虐的に耳を切られたものもいたのだろう。だが、これは使えそうだ。


「そうか。では今回の責任をもつ者・・・多少なり指導する立場に有る者は自分で片耳を落としてもらおう」


 反響が案外大きい、聞こえてくる言葉から推測すると『フーリル・ユーキー』のエルフで耳を落とすというのは最大の屈辱に当たるらしい。それはあんまりだ、酷い、再び場が煩くなってくる。台の上から遠くを眺めると余り被害の大きくない一画があった。大盾を向けて、オーラを込める。


 爆音と衝撃が広場までを襲う。地面に転がるヒトビト、逃げようとして逃げ場所がないことに気がつき呆然とするヒトビト、騒ぎ泣くヒトビト。


「黙れ!」


 一喝すると大人しくなる、もちろん恐怖の表情を浮かべて。獣人に強要しておいて自分達はやられないと思っていたのか。


「・・・皆の者、落ち着け。巨人様、その申し出をお受けいたします。故に、故に!もうお許しください!」


「許すも何も無いな長老、こちらは反抗されているために行動しているに過ぎん。最初から最後までな」


「むう・・・」



 指導者階級と見られる面々が一列に並び、剣を耳にあて一気に引き切る。思い切りやったものは幸運だ、手が震えていたり躊躇したものは半分ほど切れた状態で悶えている。何人かが逃げ出そうとしたが、群集から袋叩きにされてその挙句に片耳を引きちぎられたようだった。


 最後に場所を変え、血でぬれた耳に布を当てて止血している長老を交えて今後について話し合う。逆恨みして襲ってくる連中もいたがフィアのレーダーで事前にわかっていた為処理をしていく。魔法で狙われたときは機関銃の魔法で一帯を薙ぎ払った後、大爆発の魔法で再び一画を破壊することとなった。長老は泣いてやめてくれと言っていたのだが仕方が無い。


 もはや『フーリル・ユーキー』は半壊、いや6割方壊滅している。今後も手を出すようなら残りの4割も消えるまでだ、と言うとそれを聞いた者が必死の形相で都市内を駆け巡り反発しようとする集団を説得していた。しかし、結局7割5部は壊滅することになる。


 文書にて今回の顛末及び降伏を明記させ、さらにいくつか条件を飲ませる。


1、身分差の撤廃。2、現在の統治機構の廃絶。3、地上への余剰食糧の供給及び運搬。


 1に関しては自分から見れば獣人もエルフも大差無いからだ、更に今回の騒動において獣人のエルフへのヘイトが更に高まっているので恩を売った上でそれを助長する狙いもある、内部で争っていれば馬鹿をやる暇も無いだろう。2に関しては、隠れムラの面々をこっちに持ってきて管理させようと思っている、反抗的な組織よりも従順なほうが良いに決まっているし面倒事を全て投げることも出来る。3はついでだ、人口も減ったようなので余剰分くらい生まれるだろう。


 泣きながら条件を飲んだ長老に混乱している『フーリル・ユーキー』を纏めるように言うと駆け足でニアニアの隠れている境界の向こう側の待避所へと移動し事情を説明する。半信半疑の様子であったが『ワイバーン』を倒したこともあって信じる気になったようだ。


 隠れムラまでニアニアを担いで駆け足で戻る、『ワイバーン』が消えたことで今まで隠れていたモンスターたちの争いが激しくなっているようだ、だがその分隠れて移動しているこちらまでは注意がいかないらしく問題無く隠れムラまで戻った。


 隠れムラの長に『フーリル・ユーキー』での顛末を説明する。信じられないような顔をしていたが、二つの宝具を見せると興奮した様子で信じてもらえる事となりさらに降伏文書も渡した。長の表情は複雑だ、獣人の解放と隠れ続ける生活の終わりは歓迎すべきことだが長く生きている分仲の良い者や知人縁者も多く『フーリル・ユーキー』には残っていたらしい。しばらく祈りを奉げる様に瞑座していた長だが目を見開くと数名の獣人とエルフを呼び寄せ早速『フーリル・ユーキー』へと向かうと宣言した。



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