4-19 引き合う宝具、閃光
汚れた手や口を拭うと本来の目的を果たすことにする。そう、宝具を入手することだ。ついでにゴブリンロードが使用していた黄色の宝玉についても入手したい。あれだけの大きさの宝玉をどこから仕入れてきたのかも気にかかるが。
「分かるか?」
「ここのチョイと下くらいダヨ!そんなに深くは無いと思うケド」
「そうか」
フィアが感じた地点、ゴブリンロードが這い出てきたすぐ近くの地点から下へと掘り進めることにする。大分楽にはなってきたものの存外に電気による傷というものは内面にダメージを与えるらしく右手がまだ痛む。無理をすれば動かすことはできるのだが掘り進める際には使いたくない、そのため不慣れながらも左腕だけで時間をかけつつ穴を掘ることとなった。これもまた訓練の一環と考えればそう悪くは無いかもしれない、利き腕が使えなくなる事態も今後十分起こり得る事だ。
ここで余談ではあるが、このシャベルが腕に与える負荷というものが身体能力が向上してもそこまで軽減されていない。どうにも血を吸った凶器という比喩ではなく実際にその質量及び強度が向上しているようだ。よく見てみれば心なしか最初のときに比べてサイズが大きくなっている気がする。ブッシュナイフも同様で、地球の金属というものがこちらでは極めて奇妙な特性を持つようだ。
最初は慣れずとも同じ作業を続けていけば自然とその動作は最適化される。シャベルを地面に突き立て、足裏で押し込み、柄を持って倒すようにして左腕で持ち上げ土を投げ捨てる。勿論両手での作業に比べれば効率は格段に悪いものの着実に穴は掘れていた。
シャベルにコツンと固いものが当たる。掘り出してみると大きな黄色の宝玉が出てきた、強力な雷撃の魔法を放つことのできる宝玉。威力はそこまででは無さそうだが大盾として使っているヘルハウンドの頭蓋についている橙色の宝玉、巨大爆発魔法に比べれば使い勝手は良さそうだ。
何か加工して上手く使えるように考えていきたい。そう思いつつ手に取った瞬間、何か見覚えの無い景色が脳裏に浮かぶ、紅の空、黒き木々に多種多様なモンスター達、そして急にゆがむ景色に叫び戸惑う獣達。景色がぐにゃりと歪み、細くなって空間ごと何かに吸い込まれるように―――「・・・さま!」
「おじ様っ!!大丈夫!?」
「っ!・・・ああ、問題無い」
ヘルハウンドを殺したときにも見慣れぬ風景の幻覚が見えた。今回もヘルハウンドの時よりは断片的なものであったがその幻が見えた気がした。一体これは何を意味しているのだろうか?答えを出すには情報があまりに足りなかった。
小休止を取り頭を落ち着かせる。少し掘ると、案外あっさりとお目当ての宝具が出てきた。十二面体の美しい結晶、そこに乱雑に紐のようなものが巻かれていた。ネックレスのような使い方をしていたのだろうか・・・もしかするとこれがゴブリン達の王冠の役割を担っていたのかもしれない、それは最早永遠にその真実が分かることは無い疑問だが。手にとってみる、すると前回と同じように光り輝くとフィアから表情が消え何かを喋りだす。
「・・・キ・イガイマ・・ク・ターン・ンシュツ・・・ロト・・・イタ・・ウチョ・・カンリョ・」
「ガイ・・・コア・・シュツ・・ダイサンマル・・・ゴウプロ・・ム・・シ・・キョウシ・・-ン・・・トラ・・・・・」
「おい!こちらの声が聞こえるか!」
「・・・オーケ・・カイ・・」
「聞こえていないのか?・・・なっ!」
ハロイドで入手した宝具、そして今手の上にある宝具が激しく共鳴しあうように振動し眩い光を発する。堪らず目を瞑り、そして開けると未だ意識の無いフィアの額に小さな菱形の宝石が輝いていた。




