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伝説のシャベル  作者: KY
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4-8 迎合

視界を塞ぐ劣化クリスタルの層を突破して侵入する。後続組4人を待機させておき開けた空間へと身を躍らせる、地面までは多少の距離があったが体のクッションを活かし着地。丁度目の前にはある程度年を重ねてそうな壮年のドワーフがいた。古びた服を着ているが栄養状態は悪くなさそうだが・・・今はその表情に驚きを浮かべている。


「うわあ!驚いたぁ、あんたらぁどこからきたんだぁ?」


 少々聞きなれないイントネーション、言葉は通じるが聞き取りにくい。カタコトの言葉を聞いている様だ、平成の世に住む人間が鎌倉時代まで遡ったら言葉が通じるがどうか怪しい。


「・・・外だ、地上から来た」


「ん?ちじょうってのはわからんがぁ、外からなんぞよう来れたのぉ!おお壁にでっかい穴があいとるわ、こりゃこりゃますます驚いたぁ!!しかしまぁ随分と変わったお客様だぁ、外のヒトってェのは何ともおっきかったりちっこかったりするんだなぁ!!うん、親方呼んでくるからぁ少しばかぁまっててくれェ」


 奇妙な走り方で背を向けるドワーフに言われたとおりしばし待ちつつ周囲を見回す。外からも見えたとおり、この空間は非常に広大のようだ。住居の入り口と見られる穴も多く見られるが、今まで見てきた中との大きな違いは植物が生えていたことだ。畑のようなものが各所に見ることが出来、農夫と思われるドワーフ達が働いているのが見える。少しばかし遠くを見てみるとさらに面白い光景が見えた、それはこの空間の一番上より落ちてきている滝だ。今までその傍を掘り進んできた大滝に比べれば遥かに小さなものではあるが、それでもかなりの高所から落ちる水の姿は面白い。落下地点周辺は湖および農地となっている様だ。水を汲んでいるドワーフの姿もまた見られた。


「おじ様」


「何だ」


「さっきのヒトの左足、すごーく捩じれてたネー」


「ああ・・・いや、他にもいる」


 ここから見えるドワーフは20人程度。半分以上は目に見える異常は無かったが、後は四肢に異常があったり身体に肥大化した部位が見えたりしている。だがここにいるヒトビトはそれを気にしたような様子も無い、彼らにとってはこれが日常なのだろう。


 入り口の穴から飛び降りてくる後続組を受け止めつつ地面に下ろす。発見された生存者の多さと奇形を持つ者の多さに驚きを隠せずに興奮した様子で色々と話をしている。今は代表者を呼んでもらっている状態だと伝えると好奇心に満ちた様子の包帯教師が見て周ろうとするその足を止め恥ずかしそうに顔を赤らめた。ここから見渡す風景は『平和』、久々に感じる牧歌的な雰囲気に4人の表情が明るくなっているように見えた。ただ、この『平和』が悠久に続くことは無いと自分は知っている。遅かれ早かれセカイ全てがいずれはクリスタルから開放される日が来るのだろうから、それが何百何千年先かは分からないが。諸行無常。


 そんなこんなで待っていたがさっきから遠巻きにこちらを見るドワーフの姿が増えてきている、物珍しいのだろうか。住居であるアナグラからもドワーフが出てくるが、ざわめきと共に道が開け杖をついた白髪のドワーフが何人かの壮年のドワーフを連れて近づいてきた。


「お主らがぁ、外からの客人かぁ。聞いていたよりもぉ4人ばかぁし多いが。外から来たなんてェ信じられなかったがぁ、この穴を見ればぁ納得するしかないのぉ。いやいや口伝の通りぃ、色んなヒトビトがいるもんじゃなぁ!長生きはぁするもんじゃぁ!・・・おうおう、挨拶がぁ遅れたのぉ、ワシはここの親方でェ、ジジンと言うのじゃ!客人もよぉ来た、よろしくのぉ」


 

 名乗りには名乗りで返す、目の前の老年のドワーフの言葉もイントネーションは聞き取りにくい部分もあったが先程のドワーフよりは幾分聞き取りやすかった。挨拶もそこそこに、この場所について教えてもらう事にする。また話に出てきた口伝についても聞いてみることにする。



 中々に聞き取りがたい長文であったが現在の此処の状況というものが多少は見えてきた。まず、数え切れないくらい昔から代々ここで生活をしてきているという事。現在は200人ほどがここで暮らしているという事。口伝においてはかつてはもっと広い場所で主要な4つの大種族の内の1つであったが未曾有の危機に襲われ気が付けばこの場所に居たということが伝わっているらしい。また、かつては代表者を大親方と呼んでいたらしいが口伝に伝わる時代にマジュウたる災厄によって命を落とした大親方を偲び、現在では代表者はただ親方と呼ばれているとの事。



 さて、このようなパターンは初めてだった。遥か昔に時の楔から開放された集落は大分見てきたがその全ては荒廃し生存者などいなかったのだ。遠くに見える細い滝と広大な敷地、この2つの存在が他の場所と異なり今日まで命のバトンが繋がれて来た要因であると推測された。そして、奇形が多いのもかなりの年月を閉鎖空間で過ごすこととなった影響なのだろうか。


 こちらも地上の状態や今まで知り得たことの情報を伝えたのだが、今ひとつ実感が沸かないのか煮え切らない反応を返すのみであった。とりあえず、今からこの居住空間を巡りながら案内をしてくれるようなので付いていくことにする。聞きたいことは多くあるがまずは一通り見せてもらってからにしようと思う。相手にとってもこちらにとっても互いに未知な部分が余りにも多すぎるのだ、まずは情報を集めなければ建設的な話にもならないだろう―――。

 


 

 


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