異世界編 5-15
フルカネルリだ。人族側の迷宮がいくつかできたので、次は魔族側の迷宮を作ってみることにした。
当然ながらそれはこの迷宮ではなく、この迷宮とさっき作った人族側の迷宮の中間程度の難易度の物を新たに作ると言うことだ。
理由としては……まあ、言わなくともわかると思うが、いくらなんでも届かないからだ。
さっき作ったアンデッドブレイブキメラを本迷宮の魔物で表すと、大体八階層のボスの取り巻きと同じ程度。つまり、相当必死に強くなろうとして、そして実際に強くなっていなければその場であっさりと死ねるわけだ。
まあ、難易度から言えば『死せる勇者の墳墓(人族用ダンジョン)』は割と初期の……適正レベル30から1500程度のダンジョン(ボス以外。放置しているとボスもボス以外の魔物も迷宮そのものもどんどん成長していくため、実際には適正レベル上限は無いも同じ)。これから作る新迷宮はおよそレベル900から5500程度の迷宮にする予定。
……で、本迷宮……『名も無き研究者の魔窟(ナイア命名)』はと言うと、表口は5000強から9000程までのダンジョンだが、用意してある隠し通路を通ってみると適正レベルの下が10000から始まるような鬼畜ダンジョンになっている。一人では確実に雑魚キャラにすら勝てずに潰されること間違いなし。
なお、隠しダンジョンは26階層から。25階のボスである『氷界の覇者』を倒して得た宝玉を一階層と二階層を繋ぐ階段にある竜を模した置物の腹部に嵌め込むと階段が空間移動用回廊になって26階の階段に繋がるようになっている。
ヒントとしてわざわざ1階層のその像は『氷界の覇者』を模してあるし、実際の『氷界の覇者』の胸の部分にこれ見よがしにある宝玉の部分に何かを嵌め込む穴が空いているので……まあ、気付く者は気付くだろう。
《ついでにいろんな所にヒントが散りばめられてるしネー》
『……詳しくは秘密だけどねぇ……ふふふふふ……♪』
秘密にしていた方が発覚した時面白いからな。その点については私も同意だ。秘密にしよう。
……さて、それはそうと新迷宮の方だ。今のところコンセプトは『死せる勇者の墳墓』と少し変えて、モンスターではなく罠で殺す迷宮を目指している。
当然モンスターもいないわけではないが、あまり力を入れることはない。入れたとしても罠と連動して凄まじく凶悪になるようにするだけで、直接の戦闘能力はそこまで高くないように調整する。
この迷宮に必要な物は罠の手入れと、それから罠の場所を把握されないようにするための内部構造の変化能力。構造変化についていけるように、この迷宮の中での主な魔物は人工物を基としたものが主体になりそうだ。
《例えばどんなノー?》
そうだな……『死せる勇者の墳墓』とは別の体系にあるゴーレム等だな。自然にできた怨念などを核に動くものではなく、確りとした魔法理論のもとに行動する方だ。
私が手ずから作ることで用途を確定し、その用途の中では最大級に役に立つようにすることができる。
この迷宮は明らかに人工的な形にして、その中に明らかに人工的なゴーレムを置くことで『何らかの意思が介入している』ことを教えるという意味もある。
……ちなみに、この迷宮内では魔物による瘴気や怨念は発生しづらいが、発生した場合は『死せる勇者の墳墓』へと即座に転送される。倒された分のゴーレムはこの迷宮そのものによって自動で補給され、魔力が尽きない限りは無限に近い数のゴーレムが常に最低限は存在しているようになる。
当然定時にある程度の数が産み出され、一定の数が揃えば最低限を残してゴーレムを溢れさせるようになっている。ここは『死せる勇者の墳墓』と同じだな。出てくるのが蟲とアンデッドの混成かゴーレムかという違いはあるだろうが、やっていること自体は変わりない。
そしてここが重要だが……人工物として残すということは、いくつか情報を残しておくことができるようになるわけだ。
この迷宮はとある研究者が当時の国から自分の身を守るために作り上げたもの。迷宮はいくつかの物が繋がっており、繋がりを残しておくと十年から二十年程度で迷宮が復活してしまうこと。復活を止めるには、繋がりのある迷宮の全てのボスが復活しないうちに倒す必要があること。迷宮を放置すると内部の魔物が野に溢れて新しく繋がりのある迷宮を作り始めたりすること等、確認できる事実と確認できない事実と確認したことのない大嘘を混ぜておく。
人族側の迷宮と魔族側の迷宮に繋がりがあり、どちらか片方を残しておけばもう片方も復活してしまうことも残しておけば、少なくともどちら側の迷宮も攻略されるまでは種族間での大きな戦はなくなるだろう。
……それを理解するまでにいったいどれだけの命がなくなるかは知ったことではない。精々必死に生き足掻き、私の研究日誌に花を添えてくれ。
……さて、それはそれとしてゴーレムだ。罠の設置にと手入れをするもの。主に壁となり冒険者達を惑わすもの。石兵八陣を作ってみるのも面白い。
それに罠は足を引っ掻けたり水をかけられたりする程度の簡単なブービートラップから、底の見えないほど深い落とし穴や無数の棘付き天井が超高速で降ってくると言った物理的に致死性のもの、炎や電撃、呪詛と言った魔法的なもの、ランダム強制転送で入り口や外部に移動したり、体の一部が壁に嵌まると言うある意味致命的なものまで多彩に用意しておくことにしよう。
……内部で侵入者の身に何が起ころうと、私は一切関知しない予定なので、壁に填まったらまず確実に死亡だろうな。自前で転移魔法が使えれば話は別だろうが、自前で転移ができる存在はあまり多くない。
だがまあ……是非頑張ってくれ。
第二の迷宮『活ける石兵の陳列棚』の製作記録




