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3-32

 

フルカネルリだ。桜が咲き、そして散っていくこの季節には、毎年多くの別れと出会いが存在している。

別れは主に先輩方と。そして出会いは、新入生達とのことだ。

勿論それ以外の出会いや別れもあるだろうが、大抵の場合はそれであるはずだ。


まあ、私に親しい下級生や上級生はいないため、あまり関係の無いことだが。


《帰宅部だもんネー》

『……入部願いをぉ……蹴り続けて来たものねぇ……?』


そうだな。そして恐らくこれからもそれは変わらないだろう。なんと言っても私だからな。


《この世界に居る時のフルカネルリハー、なんだか周囲の変化を良く思わない傾向があるよネー?》


自覚はないが、そうなのか?


『……見たところぉ……間違いないと思うわよぉ………?』


そうか。まあ、何でも構わないがな。そんな私も私の一部だ。拒絶するようなことは無い。




「お願いします、僕と付き合ってください!」

「すまんな。私は他人と恋人関係になる気は無いんだ」


まったく、毎年のことだが面倒なことだ。卒業して行く者達にも、新入生にも、何故か私はこうして告白を受けることが多い。

白兎や機乃達によくからかわれるのだが、私は一応意識は爺だ。色恋沙汰には興味は無い。

私の興味は基本的には研究と探求にのみ向けられている。勿論よく横道に入るし、外道極まりないことも平然とやる。それが私だ。

まあ、諦めてくれ。


ところで、私は来月から三年生になるのだが、私の息子夫婦は元気にしているだろうか?






『あはははははは、まったく私がいるということにも気付けない下等な人間がよくもまあ私の御主人様を害そうなんて言うふざけたことを考えたものだよね。この世界において私以上に情報を収集することに長けている存在がいるわけ無いと思うんだけど、お前達はそんなことすら知らないんだもんね。ある意味では私は世界の理から外れている存在だけど、そんなのお前が私を知らない理由にはならないし、私がお前を消滅させない理由にもならないし。そんなわけでできれば死んでよできなくても死んでよいいから死んでよさっさと死んでよ消えてよ滅びろよ私の御主人様を嵌めようだなんて考えた塵屑がこうして生きていていいわけ無いだろ常識を知れよ腐れハゲが』


ぺらぺらと舌を回すウルシフィの目の前で、幾人もの人間が局所的に巻き起こる竜巻に切り刻まれて塵芥よりも細かい肉片へと姿を変える。

その間もウルシフィの舌は止まらず、自分を卑下し自らの主人を崇拝し目の前で霧粒のようになるほど人間だったものを切り刻みながら自分よりも扱き下ろす。


『魔力のせいかカリスマはあったようだけどその程度で御主人様達を妬んで自分なものにしようだなんてそんなあり得ないことを考えてるからこうして私みたいな踏まれなじられるのが大好きなド変態に切り刻まれることになるんだよ、よかったね一つ勉強になったよ? そのことは精々来世で活かすといいんじゃないかなお前たちのことなんて関わりがなければどうだっていいんだけどお前たちがわざわざか関わろうとするからこうなるんだよ言わば自業自得だねそんなことも理解できる脳味噌を持ってないんだから存在してる価値なんて━━━』


そこで唐突にウルシフィの言葉が切れる。


『……御主人様が呼んでくれてる……♪ 御主人様!私は今すぐ参ります!』


頬を上気させ、蕩けたような笑顔を浮かべたウルシフィは、つい今しがた自らが切り刻み擂り潰しぐちゃぐちゃのドロドロでミンチを通り越して最早ゲル状とも言えるような状態にまでなってしまった『かつて人間と呼ばれる生き物だった蛋白質の塊』を無視してその場から消えた。

そこにはただ凄惨な光景のみが広がっていたが、それは事件として公の場に曝されることもなく秘密裏に処理されていく事となる。




『はぁーい私の事を呼んだかな呼んだよね私の御主人様歴5年以上のベテラン御主人様ディオさん!ああもう私は嬉しくて嬉しくて頭も心も子宮もとろとろになっちゃってるよ? さあさあ遠慮なんてせずに私を殴ってくれ蹴ってくれ踏んでくれ切り刻み殴打し叩き付け首を絞め水に沈め足先からすり下ろし縛り上げて陵辱し鞭打ち腹を貫き胸に風穴を開け爪を剥ぎ取り喉を潰し両腕を千切り取り肋骨を粉砕し熱した油を頭から浴びせかけてくれ!』

「それはただの猟奇殺人犯だ」

「今回はもっとソフトに苛めるだけで我慢して下さい。ちなみに内容は、動けない程度に縛ってあげるからそのまま私達の絡みを見ること。自分で慰めちゃあ駄目だよ?」

『あぁ……はい、わかりました………焦らしながらの放置プレイですか……?』

「大丈夫、変態なウルシフィのためにとりあえずピアスは用意したから。前の穴は塞がっちゃったから、また開けないとね」


くすくす……と笑うナギの笑顔に、ウルシフィはぞくぞくと期待に身を震わせる。


「それに……水に沈めながらお尻に泥水を入れてあげます。お腹が一杯になるまで、楽しんでね?」


人間ならばまず死ぬが、死が存在していないと言ってもいいウルシフィにはそれはかなり嬉しい出来事でしかなかった。

ウルシフィは、水槽に沈められて尻にくわえさせられたホースから泥水を流し込まれて腹だけがぼっこりと膨らんだ自分の惨めな姿を思い浮かべ、ごくりとありもしない唾液を飲んだ。


『お……お願いします……御主人様ぁ……♪』


そう言ったウルシフィの表情は、情けなく蕩けきっていたそうな。





  なんだか全員悪化していた。



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