異世界編 4-4
フルカネルリだ。面接はすぐに終わり、あとは結果を待つだけだ。
試験の結果は三日後にネット上に上げられるらしいので、それまでは暇だし実験と行こうか。この世界では学ぶものは少ない(科学は一つ目の世界に十数段劣り、魔法に関しては二つ目と三つ目の異世界の混合型。魔法科学は私の独学に数段劣る)が、それでも無いわけではない。
例えば、この世界の人間の魔力の源はなにか、ということもそうだ。
二つ目の世界では、魔力を外から取り込んで自分の魔力にしていたり、自分自身を構成する魔力を魔術に転用していた。
三つ目の世界では、自分が内包する世界から魔力を引き出し、その魔力を使って自分の中の世界を少しだけ外の世界に表出させるという方法で魔導を使っていた。
それでは、この世界では一体何を源に魔力を作り上げている? その方法は? 効率は?
少ないとは言ったが、それでもやはり疑問は尽きない。いくらでも湧き出てくるものだ。
と、言うことで実験だ。用意するものは魔法を使うことができるそこらの軽犯罪者が数人と、魔法を使うことができない軽犯罪者数人。
まずは魔法を使うことができる犯罪者を解析し、体のどの部位に魔力が一番集中しているかを見る。
基本的に胸の中心の少し左寄りの部分、つまり心臓の位置に集中していることがわかったので、次はもう少し深く、その魔力溜まりが実体を持つか否かを解析する。
魔力溜まりは心臓の形をしていて、しっかり拍動もしている。魔法を使おうとすると血管を通るようにして魔力が移動し、指先から放出されて魔法を形作ろうとしているのがわかった。
そこに私から魔力を少しぶつけて魔法の術式を壊してやると、壊れたところから魔力が漏れ出してうまく発動することができなくなってしまったようだ。
魔力で編んだ術式を可視化させるのがこの世界では普通のようだが、それではこちらがどんな術式を使っているか、どの魔法を使おうとしているかがわかってしまって不利になると思うが………まあ、私は可視化させなければいいというだけの話だな。
口語詠唱は特に必要なく、技術さえあればどこまでも強く早い魔法を使うことができるというのは、私の研究者魂を刺激する。
さて、それでは研究を続けよう。魔力の源とはなんだろうか。
ちなみに、今のところ一番確率が高いのは精神力だ。魔力と精神力は別物らしいが、切れると気を失うというのは実にらしいとは思わないか?
だが、精神力だった場合はどうやって精神力を魔力に変えているのか不明だし、精神力でなかった場合はではなんだという話になる。
まあ、全力で解析すればわかるのだろうが、それではあまり意味がない。やるときはやるが。
時間制限は、魔法学校の合否がわかるまで。恐らく合格していると思うがな。
「や、やめろっ!俺達に何をする気だっ!やめろ、やめろよっ!!」
「くそっ!なんで俺がこんな目に会わなくっちゃいけねえんだよっ!」
「何をすると言う質問には、実験のための実験動物にすると答え、なぜお前たちがそんな目に遭うかと言えば、お前たちが私を襲ったからだと答えよう」
運が悪かったと思って、諦めろ。
防音を完全にした部屋の中に、いくつもの悲鳴と絶叫が響く。私は既に聞き慣れたが、気の弱い者が聞いたら泣いてしまうかもしれんな。
まあ、言った通り、私にはなんの関係も無いことだが。
……ふむ。この世界の魔力は壊れた人間ではあまり回復しないのか。意思も感情も失った人形のようにしてやる壊し方と、怒りなどの感情を持たせたままの壊し方ではどのような違いが出るのだろうな?
わからない。わからなければ実験だ。
《レッツトラーイ!》
ちなみに、魔法学校の入試は楽に合格したことをここに明記しておく。
『……フルカネルリならぁ……落ちる方が難しいでしょぅ………?』
いやいや、わかっても書かなければいいだけなのだから、落ちる方が楽だぞ。あまり変わりはしないが。
フルカネルリ、合格。




