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フルカネルリだ。草津に来たのでとりあえず温泉に浸かることにした。露天は混浴で湯衣着用が義務付けられているようだが………まあ、ちゃんとつかれればいいか。

ちなみに一人一着レンタル無料。二着目からは五十円で、破ったりしたら三百円取られるらしい。


まあ、問題ないな。


……ふう…………。


《お年寄り臭いヨー》


実際、人間にしてはそこそこ年寄りだからな。ナイアも入ってきたらどうだ?


《そうするヨー》


そう言うとナイアは姿を消した。かわりに視界に入ってきたのはクト。こんなところでもクトゥグアとの差異があるようだ。


「……お風呂はいいね~………」

「……そうだな………」


…………ふぅ。


「………露天の方にも行ってみない~……?」

「……今は……いい………」

「……そっか~……」


一人の人間と一柱の邪神が、同じ風呂に浸かる……か………。なかなか……できなさそうな体験だな………。

……それも、炎の邪神だ。………風呂に入るのが好きな炎の邪神……………それ自体が珍しそうだな………。


「お兄ちゃんは~、お父さん似で~……私はお母さん似なんだよ~………」

「…………ほぅ……そうか……」


……風呂は……いいな。


「……和むよね~…………」


…………まあ、隣の男子風呂からの視線がなければもっとよかったのだがな……。

アブホースに伝えておけば無くなるだろうか?


「……ちょっと待ってなさい。すぐに終わらせるから」

「頑張ってくださいね~……」


クトは風呂で蕩けているため、あまり頭が働いていないようだ。そうでなければ覗きを殲滅しに行ってもおかしくないしな。


腕を温泉からあげると、僅かにとろみがついているように見える湯が私の腕をつたって水面に落ちる。

ぴちょん……と音を立てて水面が揺れ、


「あなたたち!何をやっているのっ!!」

「げぇっ!? なんでバレたっ!?」

「蹴り潰してあげるわ馬鹿共っ!!」

「ギャーーーっ!!?」

「……フー。クトゥグアも馬鹿だネー……」

『そうねぇ………はぁ…………♪』


止めてやれ、ナイア。私は別に見られても平気だが、嫌がるものだって居るのだから。


「あとでネー……」


……やれやれ。面倒臭がりだな。知っていたが。




食事もそこそこに終わらせ、私は風呂に入る。貸し切りゆえに自由に入ることができるようだ。

ただ、二時から五時には掃除があるため入れない。まあ、仕方ないな。


朝風呂は内風呂を使うことにしよう。汗まみれでも構わないが、できれば風呂には入りたいしな。


「フルカネルリちゃんも好きだね~……」

「水質解析のついでだがな。どうせなら気持ち良い方がいいだろう」

「…………それと、小学生にしては結構なものをお持ちで……」

「触れたら仕置き用のハリセン(アルミ製)で叩くぞ」

「それは嫌かな」

「ならやめてくれ。見るだけならある程度は構わないがな」


……まあ、見るほどの価値があるとは思えないが。近くにはアブホースが居るわけだし。


「アブホースさんのは大きくて圧巻で、フルカネルリちゃんのはそこそこだけど綺麗なの」

「嬉しくないぞ」


……それにしても、私は女になっても‘女’になっても変わらんな。少しくらい変わるかと思ったのだが、そんなことは全くなかったし。

これでは私の血族が途切れてしまうが………まあ、いざとなれば科学の力でなんとかするか。クローンなりなんなりでどうにかなるだろう。


ならなかった時のことは考えない。まずなんとかなるし、なんとかするからだ。


…………それはともかくとして、温泉は良いな。


「良いよね……」

「良いよね~……」


いつの間にやら白兎が入ってきていた。驚きだ。


「お前も来たか」

「まあねー……お風呂は好きだから~……」

「良いことだよ~……」


白兎の言葉にクトが答える。やはり緊張感が欠片もない声で。

……まあ、今は緊張感など必要ない場面だから、構わないが。


………土産は温泉饅頭と木刀と破魔矢と梓弓。どれにしようか……。


「温泉卵もいいよね……」

「……ああ、それもいいな。候補に入れておくとしよう」

「温泉の素は?」

「それはいらん」


家にはかなりたくさんあるからな。使っているのになぜか増える一方の温泉の素の箱詰めが。


……まあ、後で考えよう。今は解析と湯を純粋に楽しむことだ。





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