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フルカネルリだ。戻ってきたこの世界は、やはりなにも変わっていない。

私がいない間はほとんど動いていないからだろうが、それでもここまで変わらないでいてくれるというのは少し嬉しい。


今は六月。丁度雨の多い時期で、図書館も空いているだろう。

多少黴臭いかもしれないが、私はそんなことは一切気にしない。その程度で私の健康が害されることは無いしな。


《その程度ならボクのかけた健康の呪いを抜くには足りなさすぎるヨー!》

『……ナイアのかけた呪詛はぁ………強力だものねぇ…………♪』


そうだな。流石高位の神。邪神とはいえこの程度のことはお手のものか。


まあ、ナイアのお墨付きも貰ったことだし、図書館に行くか。禁書の棚の本は増えているだろうか?

あそこの本は明らかに狂人が書いたとしか思えないものばかりだからな。私と似たような者達の本は面白い。人の生皮を張ってある本とか。


《……そレー………ルルイエ異本じゃないノー?》


確かそうだったはずだ。なにか心当たりでもあるのか?


《あるヨー。すっごいネー……》


ほう? やはりあるのか。

ところで、読む前に聞いておくが……私は平気か?


《……ンー………まあ、平気なんじゃないかナー? 神位共通言語もわかるから発狂もしないだろうしサー》


そうか。信じるぞ?




図書館に到着。すぐさま禁書の棚に入り込んで中の本を読んでいく。

色々と書いてあるが、外れているのか別世界のことなのかがわからなかったり、明らかにどろどろとした悪意が溢れているような本を見付けたりもした。喜んで解析したが。


悪意が満載の本。そんなものはこの世界では作れないからな。ほぼ確実にこの本は異世界で作られたものだろう。

……もしかしたら、この世界に流れ着いた異世界の本の全てがこの図書館にあるのではないかと思っていたりする。


例えそうだったとして、いったい誰がどうやってそれらの物をここに集めてきているのかは知らないが。


誰がやっているのやら。


《アトラク・ナクアじゃないノー? ここの図書館の館長兼司書長だシー》


知り合いか?


《読書仲間だヨー。たまに本と結婚したいとか言ってボク達を引かせるけどネー》

『……変態なのかしらぁ………?』

《ぶっちゃけそうだネー。と言うか邪神でまともなのっているのかナー?》


さてな。私は知らんが……想像しにくいな。

アブホースはどうなのだ? それなりにまともに見えなくもないが。


《アブホースがまともだったらボクもまともになるヨー》


《それはねえよ》

《ナイアさん。さすがに無理があります》

《あんたと一緒にしないでよ》

《残念だが、君の方が数段異常だよ。ナイア》


…………とのことだが、なにか言いたいことは?


《………バーカ。クトゥグアのバーカバーカ。アブホースなんてクトゥグアと幸せになりすぎて幸せ死ねばいいヨー》


なんだそれは。


《? どう言うことだ?》

《……あんたは黙ってなさい。そして死になさい》

《何でだよおい!?》


クトゥグアはやはり鈍いな。いつになったら気付くことやら?


《いつになっても気付かないっていうのがクトゥグアだヨー…………ネー?》

《……ぶっ殺すぞ?》

《気付かなかったあんたが悪いんでしょ。さっさと新しい恋でも見付けなさいな》


………それをアブホースが言うか。いまだに気付かないアブホースが。


《あの二柱は似た者同士なんだヨー》


そうだな。お互いの想いに気付かないところはそっくりだ。本人達は否定するかもしれないが、周りから見ていればわからない方が難しい。

なにしろ、前世ではそういうことにひたすら疎かった私でもわかるほどの物がわからないという者が二柱もこの場に居るというのだから。珍しい話だな。


とはいえ、神から見ればたった百万すら生きていない小娘が何を言っているかという話だろうが。


《そうでもなかったりするんだよネー。長く生きれるから頭の中身や行動が子供だったりとかはよくあることなのサー》

『……経験の密度の違ぃ………それがありすぎるってことねぇ……♪』


そういう事だろうな。

……その点では、私は神に産まれずにすんでよかったな。もし神に産まれていたら私はこうして研究の内容を多方向から見るといったことができなくなってしまう可能性が高いしな。

それに、こうしてナイアと話すこともなくなっていただろうし。


…………さて。私はそろそろ読書に戻るかな。今日の収穫は大漁だし、色々と読みとかなければならない書籍が多々ある。ルルイエ異本もその一つだし、その他にもやりたいことは色々ある。

犬も食わないような喧嘩は、是非とも私の目の届かないところでやってもらいたいのだがな。


《砂糖でも吐きたくなっター?》


別に? ただ、少し鬱陶しかっただけだ。






フルカネルリ曰く、『犬も食わない』ような喧嘩を続けるバカ二柱ふたり。いつも通りだネー。

こうやってクトゥグアとアブホースが喧嘩をしているところを見ていると、懐かしい中学時代を想い出す。………いや、高校も同じだしどこでもいいんだけどさ。ほんと変わらないし。


いつでも二柱が喧嘩して、それをボクが笑いながら煽るか仲裁して、クトゥルフが慌ててハスターが興味深そうに眺める。ずっとずっと変わらないボク達だからこそ、こうして懐かしい気持ちに浸れるんだけどネー?

アー、懐かしい懐かしい。会うのが久し振りだから余計にそう思うんだろうネー。今回の旅行は結構長かったシー。


……それじゃあ、いつも通りにからかおっかナー?






  年寄り臭いナイアの思考。




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