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異世界編 2-35

 

大会で優勝し、白金貨二十枚を受け取った私は今。

「お前達!こいつがこれから新しく騎士団に入ることになったディオだ!」

……なぜか、いきなり騎士団に入ることになっていた。

…………本当に何故だ? 正直に言って理解しがたい。

……まあ、面倒だとは思うが別に嫌ではないので、構わないと言えば構わないのだが。


事の始まりは簡単だ。試合の途中で言っていた騎士団の入隊を進める言葉。どうやらあれはかなり本気の事だったらしく、決勝戦が終わってすぐに私の所にやって来た。

……最後に私が使った魔術は確かに急所には当たらなかったとはいえ直撃のはずだったのだが……なぜここまで傷が少ない? 少しばかり自信を無くしてしまいそうだ。

そう思っていたら騎士団長についてやってきた魔術師が苦笑して教えてくれた。どうやら岩の塊の殆どを大剣で弾き飛ばし、残った岩は鎧と筋力に任せて無理矢理弾き、最後の爆発は衝撃と爆風で気絶してしまったが鎧が致命傷からは守ってくれたらしい。

……最後の爆発で多少のダメージと気絶だけ………なんだ、この騎士団長も化物か。


それからあれよあれよと入団が決まり、こうして多くの者達の前で紹介されているわけだ。

「……なお、ディオには最初に全員が受ける叩き上げを受けてもらう。いいな?」

「別に構いませんが暴言吐かれたら切れますよ?」

いやこれは本当。旅の途中で母さんの悪口を言われた時に気付いたんだが、どうも私は家族の事になるといきなり沸点が低くなるらしく、その男と私を止めようとした者全て跡形もなくなってしまった。その店も含め、辺り一帯が。

その後は当然逃げた。幸い(?)目撃者など一人も残していなかったので何事もなくこうしているが、あれは反省しなければならないだろう。

……なぜ私はあの場で殺してしまったのだろうか。もっと痛々しいことはできなかっただろうか。

そう考えると私はまだまだ精神修行が未熟だと思う。

とはいえ、母さんたちを馬鹿にされて切れない私は私だろうか? 母さんは昔友人を馬鹿にされたときにその相手の家族と三十親等以内の家系全てに衰弱の呪いをかけてやった事があるらしいが、私も同じようにした方が良かったか?

……今更だな。あまりにも今更過ぎる。もう既に終わった事だ。そんな事を言っている暇があるなら剣を振っている方がよほど建設的だ。面倒だし。


叩き上げの試練を受けてみたのだが、大したことはない。母さんの特訓の下から三番目の方がよっぽどきつい。

……ちなみに内容は島巡り。島中を歩いて渡り、七色の結晶の体を持つ魔物達の長と戦ってくると言うものだ。

正直に言って、死ぬかと思った。むしろ死なないわけがないと思ってしまうほどに厳しかった。いやまあ生きているが。

因みに抜け道があり、戦ってくるだけなので勝たなければいけないわけではない。そこで見つけては喧嘩を売ってすぐさま逃げ出すと言う事を続けたのだが、それでも死ぬかと思った。特に無色と黒の長。

魔力そのものを固めて作った槍をあらゆるところから撃ち出してくるのも、どこまで逃げても影を使っての瞬間移動で追ってくるのは反則だと………。本当に死ぬかと思った。

もちろん他の長も強かった。白の長はあり得ない速度で突撃してきたし、黄の長はいきなり地面に呑まれて潰されそうになったし、赤の長は超広範囲を焼き払う勢いで炎をぶちまけてきたし、青の長は津波を起こして危うく飲まれるところだったし、緑の長はなんといきなり周囲を真空にしてきた。後0.2秒遅かったら内側から弾け飛んでいた所だ。

まあつまり何が言いたいのかというと、潰れるまでひたすら走るとか周りの騎士達の三百人抜きなんて楽々できると言うことだ。

「……化物か」

「あの魔術の直撃を受けて二時間で自分の足で動けるような人には言われたくない」

「…………恐らくだが、お前もできるだろう?」

「当然だな」

叩き上げはこうして三百人もの騎士達のプライドがへし折れる音と共に終了した。






「……どうやらディオは元気でやっているようだな。良いことだ」

「そのようですね、造物主様」

フルカネルリは研究所の鏡の前でのんびりと紅茶を啜りながらディオの行動を覗いていた。

「いヤー、それにしても世界って狭いネー? あの騎士団長って昔フルカネルリに喧嘩売ってきたパーティの一人でショー?」

「……あぁ……道理で、どこかで見た気がぁ……するわけねぇ……♪」

「ああ、そうだな」

そこには当然のようににこにこと笑っているナイアと空中に浮かびながら陽炎のように揺れているアザギもいる。全員が実体化しているが、ハヴィラックもプロトも驚いた様子は見せていない。

「……気紛れで生かした男だったが…………随分と強くなったようだな」

「目標があると、人間は伸びやすくなるからネー」

「……あらぁ……? ……亡霊だって、おんなじよぉ……?」

「もちろん神様だっておんなじサー」

「そうか」

フルカネルリとナイアは鏡を見ながら幽かに笑う。

「…………さて。そろそろ研究に戻るとするか」




  久々に登場フルカネルリさん。こちらは異世界でもやっぱりいつも通り。




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