表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アビス・グランブルー 〜クラン追放された最底辺ダイヴァー、わたしはやめたくなかった〜  作者: ロートシルト@アビス・グランブルー、第四章も毎日20時更新!
第4章 居場所

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

82/90

第75話 軽やかな朝、潮の呼ぶほうへ

 朝の光が、カーテン越しに差し込んでいた。


「……ん……」


 ナナミは、ゆっくりと目を開ける。


 木の天井。

 潮の香り。

 宿〈海辺の子ブタ亭〉の、いつもの部屋。


(おはよう、ナナミ)


「……おはよう、アストラル……」


 ベッドの上で、軽く伸びをする。


 その瞬間──

 ナナミは、はっとした。


「……あれ?」


 身体が、軽い。


 昨日よりも。

 いつもよりも。


 指先を動かし、胸の奥に意識を向ける。


 ──すう、と。

 魔力が、自然に巡る感覚。


「……魔力……」


 滞りがない。

 重さもない。


 むしろ──


「……すごく、いい……!」


(でしょう?)


 アストラルの声が、どこか誇らしげに響く。


(順調よ……魔力の総量も、循環も、きちんと伸びてる)


「……ほんと……?」


(ええ)

(ナナミが毎日積み重ねてきた成果よ)


 その言葉に、ナナミは小さく笑った。


「……えへへ……」


 胸の奥が、くすぐったい。


「これなら……今日、潮騒の宴と一緒でも……足、引っ張らないかなあ……」


 一瞬の間のあと。


(もちろん、大丈夫よ)


 きっぱりとした声。


(今のナナミなら、ちゃんと“一人のダイヴァー”として並べるわ……自信、持ちなさい)


「……うん」


 ナナミは、ぎゅっと拳を握った。


「……行ってくるね」


* * *


 身支度を整え、階下の食堂へ。


 朝の〈海辺の子ブタ亭〉は、やわらかな賑わいに包まれていた。


「おはよう、ナナミちゃん」


「おはようございます……!」


 軽い朝食。

 焼きたてのパンと、温かいスープ。


 昨日ほどの驚きはないけれど、

 変わらず、ほっとする味。


「……ごちそうさまでした……」


 出発前、フロントを通りかかる。


 そこには──

 いつもの水槽。


 ぷかっ。

 ぷかっ。


 水の中を漂う、二匹のフロート・カニ。


「……」


 ナナミが立ち止まると。


 ぷかっ、と近寄ってきて──

 ちょき、ちょき。


 ハサミを、こちらに向けて振る。


「……」


 ナナミは、思わず微笑んだ。


「……いってきます……」


 すると、まるで応えるように。


 ぷかーっ。

 ぷかぷか。


 ゆっくり漂いながら、

 もう一度、ちょきちょき。


(……見送られてるわね)


「……うん……」


 小さな勇気をもらって、

 ナナミは宿を後にした。


* * *


 最初の目的地は──

 〈グリーンリーフ堂〉。


 チリン、と鈴の音。


「あら、いらっしゃい。可愛い子」


 カウンターの奥から、フィアスが顔を上げる。


「待っていたわ。仕上がってるわよ」


「……!」


 差し出されたのは、

 潜海スーツとアームガード。


 以前よりも、わずかに艶が増し、

 縫製と補強部分が丁寧に整えられている。


「スケイル・フィッシュの鱗、うまく活きてるわ」

「耐久も、動きやすさも、少し上がってる」


「……ありがとうございます……!」


 その場で装備を身につける。


 腕を動かす。

 身体をひねる。


「……軽い……」


(フィット感、前よりいいわね)


「……うん……!」


 フィアスは、満足そうに頷いた。


「今日も潜るんでしょう? 気をつけてね」


「……はい……!」


 一礼して、店を出る。


 胸の奥で、期待がふくらんでいく。


* * *


 そして──

 ギルド。


 扉を開けると、朝の喧騒。


 依頼板。

 行き交うダイヴァーたち。


 その中で。


「……あ」


 見慣れた顔。


 グレイス

 ニーナ

 ホープ


 そこには潮騒の宴の3人がいた。


「ナナミちゃん!」


 気づいたニーナが、手を振った。


「おはよう!」

「今日はよろしくね」


「……おはようございます……!」


 胸の奥が、きゅっと高鳴る。


(……ここから、始まるわね)


 アストラルの声が、静かに背中を押した。


 ナナミは、潮騒の宴のもとへと歩き出す。


 軽やかな朝。

 新しいダイヴの、始まり。


──続く。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ハイファンタジー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ