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アビス・グランブルー 〜クラン追放された最底辺ダイヴァー、わたしはやめたくなかった〜  作者: ロートシルト@アビス・グランブルー、第四章も毎日20時更新!
第4章 居場所

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第71話 比較

 アクア・ヘイヴンの港が見えてきた。


 潮の匂いと、街のざわめき。

 浮上したダインは、大きく息を吐いた。


「……ふぅ」


 装備を外しながら、ダインは口を開く。


「ナナミの奴、ブロンズ級になったからって舐めた態度とりやがって……!」


 ライアンの眉がわずかに動き、ダインに続く。


「ブレイカーのやつに気に入られてんじゃねぇの? 忖度昇格とかさ」


「ありそう」

 

 ジャンヌが吐き捨てるように言う。

 

「ホントいけ好かない。ムカつくわ」


 ダインは、黙って歩きながら考えていた。


(……アイツが追放されてから、まだ一ヶ月も経ってない)


 確かに、バニッシュ・クランで三年間の下積みはあった。

 だが──


(ソロ活動であっという間にブロンズ昇格……早くねぇか?)


 アイアン級からブロンズ級。

 自分たちですら、そこに至るまで一年近くかかった。


「……そんなに簡単に上がれるもんか?」


 思わず、独り言のように呟く。


「仮にだ」

「気に入られて、無理やり昇格させてもらったとしても……」


 ダインは鼻で笑った。


「ブロンズ級の任務に、あいつが耐えられるとは思えねぇ」


 その言葉に、ジャンヌがすぐ頷く。


「そうよ……実力なわけないじゃない」


 だが。


「……そういえば」


 ライアンが、少しだけ言い淀んでから続けた。


「今日の深度130だったよな……浅くはない。

 深度130まで一人で来てたぞ。あいつ」


 二人が、ぴたりと足を止める。


「……!」


「深度100超えると……ブロンズ級ならともかくソロのアイアン級だと危険だ。

 オレたちでも魔力の減り早くなるだろ? それに複数で現れる海魔も増える」


 ライアンは、思い出すように言った。


「でもあいつ……普通に立ってた。それも平気そうな顔で」


 沈黙。


 ダインの脳裏に、過去の記憶がよぎる。


(深度30で、息切れし顔を青くしてた奴が……?)


 胸の奥が、ざわつく。


「……」


 無意識に、歯を噛みしめていた。


「……いや」


 ダインは、わざと軽く言った。


「結局は死骸漁りだろ。俺たちの後処理」


「だよな」


 ライアンが乗る。

 

「そうよ。相変わらず、雑用係ね」


 ジャンヌもすぐ乗る。

 

「考えすぎだな」

 

 ライアンも笑った。

 

「らしくない」


 三人は、笑いながらギルドへ向かった。

 


* * *

 


〈ダイヴァーズギルド〉。


 受付に立つミストの姿を見た瞬間、

 ダインの背筋が、僅かに伸びる。


(……今日も、綺麗だ)


 それを悟られないよう、軽く咳払いをした。


「依頼、完了だ」


 ミストは、顔を上げる──が、その表情と眼は、まるで氷のように冷たく感じた。


「……バニッシュ・クランの皆さんですね。納品物をお願いします」


 抑揚もない事務的な口調。

 雑談できるような雰囲気では、まるでない。


 ダインは、少しだけ肩を落としながら素材を差し出す。


「なあ、その……」

 言いかけて、言葉を選ぶ。


 だが、ミストは先に口を開いた。


「確認しますが……応援に向かったダイヴァーに、失礼なことはしていませんよね?」


「えっ!?」

「そ、そんなことする訳ないだろ!」


 ダインは、しどろもどろになる。


 ジャンヌが苛立ったように割って入った。


「いいから、早く査定してよ」


「……わかりました」


 ミストは淡々と素材を確認し、計算板を叩く。


「──報酬は……金貨三枚です」


「はぁ!?」


 ライアンが声を荒げた。


「待ってくれよ!それ最低保証金額だよな!?

 量、こんだけあるんだぜ!?」


 ダインは、顔色を変えて黙り込む。

 ジャンヌも目を見開いた。


「なんでよ!取り尽くしてきたのよ!」


「仰るように量はあります」

 

 ミストは冷静に答える。

 

「ですが、力任せに採取されていますね」


「素材の状態が悪い……評価を下げざるを得ません」


「……」


 ジャンヌは、歯噛みしながらも黙った。


「金貨一枚ずつ……アイアン級みたいな稼ぎじゃない……」


「そんなの聞いてねぇぞ!」

 ライアンは、それでも食い下がる。


 その時。


「……またテメェらか」


 低い声が、背後から響いた。


 振り返ると──

 ブレイカーが立っていた。


「どれ……ミストの査定が不満なんだよな?

 ミストより権限がある俺が査定するし、文句も聞くぜ。」


 三人の顔が、一気に青ざめる。


「い、いえ……」

「なんでもありません……!」


 ミストから金貨三枚を受け取り、

 三人は逃げるようにギルドを後にした。


* * *


 静かになった受付で。


 ミストが、ぽつりと呟く。


「……ナナミさんの丁寧さ……見習ってほしいですね」


 ブレイカーは、鼻を鳴らした。


「まったくだ……一体どっちがシルバー級なんだか、わからん」


 ギルドの喧騒の中。

 その言葉だけが、静かに残った。


──続く。

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