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7Days to the Dead 12th

 現在の月齢は、『ステラ』が下弦の月で、『ルーナ』が半月です。

 これから二つの月が新月に向って暗くなっていき、7日後には完全な新月となります。


 それが秋の終わり、冬の到来を知らせる新月であり、闇の精霊が最も活性化する日でもあるそうです。

 

 「なので、これからは日が経つごとに奴らの攻勢が強まるはずだ」


 こちらでは新月の日は外を旅しないのが常識らしいです。

 二つの月が両方隠れる、本当の闇夜に慣れていないのもありますが、年に5回ある闇の祭日でもあるからだそうです。

 その中でも、秋の終わりの新月は万霊祭と呼ばれ、全ての闇の精霊が真夜中に百鬼夜行する日と言われています。

 その夜に子供が家の外にいると、精霊の行列に連れ去られてしまうという逸話があるそうです。


 あっちのハロウィンに似ていますね。

 あちらでは、悪さをされないように魔物の扮装をしますが、こちらでは扉を閉ざして魔除けの紋章を翳して家に篭るそうです。


 「本来なら、もうキャラバンの先触れが来てもおかしくない時期だ。こちらに危険があるのは狼煙で伝えてあるから、出発はいつもより遅れているとは思う。だが、遅くとも2・3日中には到着するはずだ」


 闇の祭日に屋外で野営をするのは自殺行為と言われています。

 夜が明けたら、キャラバンの隊員の半数が行方不明になっている事もめずらしくないそうです。

 ましてや万霊祭の夜に、屋外に留まるのは山賊でもやらないとか。


 「今は敵も魔力の回復に努めていると思われる。ワイトが暴れているときに、ゾンビの襲撃はなかったから、その補給も必要なのだろう」


 ネズミや狼は死骸が入手しやすいでしょうけど、大鷲や熊は数が少ないはずです。

 そうは補充が利くとは思えません。


 本来なら、取り巻きが減っている今が攻め時なのですけど。


 「問題は敵の本拠地が判っていない事だ。もしかしたら、そんなものは無い可能性もある」


 なにせアンデッドですからね。

 食事もいらないし、寝る必要もないわけです。

 寒くもないし、獣に襲われもしません。

 実はキャンパー向きなのかも。


 「あちこち移動されてると、捕捉するにも一苦労だ。なにせ偵察が出来ない状況だからな」


 少数で偵察すれば各個撃破でしょうし、大部隊で行動すれば逃げられる可能性もあります。

 また、村の防衛にも隙ができてしまうでしょう。

 ヌコ様なら、ヌコセンサーで的確に居場所を突き止められると思いますが、不在のときを狙って相手が何か仕掛けてくるかもしれません。


 「いざとなったら、それも止む無しだ。聖獣に道案内を願って本体を急襲する。その間の村への襲撃は覚悟するしかない」


 マッコイ爺さんも腹を括った模様です。


 「それでもマリアが復帰するまでは待つしかない。死亡者を安置できないと危険すぎるからな」


 マリアが魔力を回復させれば、魔道具を使って『祝福』と『聖句』が唱えられます。

 前回は、彼女が負傷者の治癒に魔力を使い過ぎて、魔力切れで昏倒してしまったので、アンデッド化を防げませんでした。

 

 なお、あたしも魔道具を借りて使おうとしてみましたが、発動させることは出来ませんでした。

 単純に光魔法がランク2あれば使用可能かと思ったんですけど。

 マリア専用なのか、信仰の違いが原因かも知れません。

 あたしは宗教知識も無いですしね。


 ここの教会の主神は、冒険と開拓の神『シシロン』だそうです。

 主に冒険者や開拓民に信仰されていて、どの開拓村でも主神として祭られているそうです。


 チャリオットに乗り、手にした槍を投げれば百発百中。

 チャレンジ精神旺盛で、フロンティアスピリットを大切にする神だそうです。


 「今晩までは様子見で、何もなければ明朝、こちらから仕掛ける」


 ワイトは日中も行動可能ではありますが、日光を忌み嫌うので、活動は低下します。

 戦うなら昼間の方が有利ですが、それは向こうも判っているわけです。


 鬱蒼とした森の中か、建物の地下に隠れ潜んでいる可能性が高いです。

 痕跡を追っている間に夜になれば、形勢は逆転します。


 あたしや獣人の兵士さんなら夜目が利きますが、人族の兵士さんは灯りが必要です。

 夜の戦いになればそこを突いてくるでしょうし、ワイトも本領発揮できるでしょう。


 いかに早く敵の集団を補足できるかが勝負の鍵です。



 その夜は襲撃もなく、静かに過ぎていきました。



 翌朝、特別部隊が召集されました。

 ワイト・ネクロマンサーを撲滅する部隊です。


 隊長は自警団の副団長さんです。

 その指揮下に兵士が12人付きます。


 「村の防備は大丈夫なんですか?」


 かなりギリギリの戦力だと思うんですけど。


 「承知の上です。ここで首領を叩いておかないと、いつまでたっても敵が減りませんから」


 村の警護を手薄にしても攻める心積もりの様です。


 あたしとヌコ様も同行します。

 ヌコ様は聖獣なので、副団長さんも命令はできません。お願いするだけです。


 そして、あたしはその通訳兼護衛です。

 ヌコ様はこちらの言う事は、ほぼ理解しているようですが、ヌコ様の言いたいことは副団長さんには伝わらないみたいです。


 「なぜなんでしょうね?」


 「がう」


 ヌコ様にも分からないそうです。


 

 他にもモルガンさんやダイナーさんが立候補したのですが、マッコイ爺さんに却下されていました。


 「お前らは他にやることがあるだろうが」


 確かに、武器や防具が損傷していますし、修理すべき道具も沢山でています。

 腕っ節が強いからといって、本業を疎かにするのは良くないと思いますよ。


 「なら、あたしが行くよ」


 アズサさんまでもが名乗りをあげましたが、周囲の必死の説得で撤回させることに成功しました。

 マッコイ商会の倉庫に避難している女性達の纏め役として、必要な人材ですから。

 そしてなによりマーヤちゃんを悲しませるわけにはいきませんからね。


 

 14名と1匹の集団は、静かに跳ね橋を下ろすと、そっと村を出て行きました。

 目指すはワイト・ネクロマンサーの首一つです。


 ヌコ様を先頭に、無言で森の中へと進軍します。



 それを遠くから、一羽のカラスが見つめていました…

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