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7Days to the Dead 11st

いつも誤字脱字のご指摘ありがとうございます。

 マッコイ爺さんの呼びかけで、急遽、作戦会議のメンバーが召集されました。

 爺さん、モルガンさん、アズサさん、それから薬師のジョンソンさんとあたしです。


 マリアは今も魔力回復の為に爆睡中で、自警団副団長は警護の数が足りないので欠席です。

 ヌコ様も遺体の監視で安置室を離れられません。


 会議の場所も以前と同じモルガンさんの仕事場です。

 この建物は耐火建築なので、火事の被害には遭わなかったそうです。


 「さて、ハイエルフ殿に使わした、使者が戻ってきたので、その情報の共有からだ」


 今回もマッコイ爺さんが司会です。


 「結果から言えば、ご本人の救援は断られたが、錬金術師としての支援はしてくださるそうだ」

 

 「それは助かるののう。もとよりハイエルフが出張って来てくれる事は想定しとらんしの」

 

 モルガンさんの意見に、周りの皆も頷いています。


 「それで、ポーションはどれほど用立てていただけたので?」


 薬師のジョンソンさんの興味は、やはりそこにあるみたいです。


 「それなんだが…」


 言い淀むマッコイ爺さんに、皆の顔も暗くなります。


 「想定以上に数が多くてな」


 「なんだい脅かして。数が多くて悪いことなんてないだろうにさ。ショーコが頑張って交渉してくれたんだろ?」


 「え?ええ、まあ、はい」


 アズサさんのお褒めの言葉も、素直に頷けないあたしです。


 「なんだか、歯にものが挟まったような物言いだね。いったいどれくらい揃えてくれたんだい?」


 「えっと、正規のヒールポーションが6本と…」


 「ほう、この短期間で…さすがハイエルフ様ですな」


 ジョンソンさんの常識でも6本は上出来の部類みたいです。


 「簡易ヒールポーションが24本と…」


 「ちょっと待った。簡易ヒールポーションなんぞ、ワシは聞いたことが無いぞ?ジョンソン知っとるか?」


 モルガンさんの疑問にジョンソンさんも首を横に振っています。


 「残念ながら私も初耳です。それは普通に効果のあるものなんでしょうか?」


 「それは大丈夫だそうだ。保存期間が1週間なだけで、治癒効果は保証してくれると聞いている」


 マッコイ爺さんの念押しに、あたしもしっかり頷く。


 「それが24本ですか…長期保存できないなら、ショーコさんが話を持っていってから製作したんですよね…錬金術師として一流、いや超一流と言わざるをおえません」


 すいませんジョンソンさん、これだけじゃないんです。


 「ちょいとお待ちよ。ショーコは『と』って言ってたよね?」


 あ、アズサさん、いい所に気が付きましたね。


 「はい、それと投擲型聖水が300個ほど…」


 会議室に沈黙の天使が通り過ぎていった。



 動揺していないのは、あたしとマッコイ爺さんだけです。


 「ん?何か奇妙な単語が聞こえたんじゃが?」


 「偶然だね、あたしも自分の耳を疑ったとこだよ」


 「聖水?投擲型?300個??」


 3人の混乱を収めるのに5分ほどかかりました。



 「とにかく、師匠殿はこちらの予想を遥かに超える支援をしてくださった。わしらに出来るのは、これらを有効活用して、村を守りきることだ」


 マッコイ爺さんが強引に纏め上げました。

 まあ、あたしも賛成です。

 村が無事なら教授の老後の収入も安定するでしょうし、嗜好品や錬金素材などの交易拠点として便利に使ってくれるでしょうから。


 「そうだな、ならワシが聖水を自警団に配ってこよう。一人3個もあれば十分じゃろう。なに、銀の短剣でワイトと接近戦するよりよっぽど安全じゃ」


 「なら避難所にも少し融通してほしいね。胡桃大なら女子供でも投げやすいし、それでゾンビラットなら一撃で倒せるんだろ?安心感が違うさね」


 「そういうことでしたら、私は簡易ポーションで負傷者の手当てをしてきます。正規のポーションは予備で保管しておいて下さい」


 3人が急いで出て行こうとするのを、マッコイ爺さんが止めました。


 「まてまて、まだ話は終わってない。今後の対策を決めてからだ」


 そう言われて納得した3人は席に戻りました。



 「今回の大規模なアンデッドの襲撃は、邪教徒のネクロマンサーによるものらしい」


 「「「 ほう 」」」


 邪神教徒ではなく、邪教徒ですからね。そこの所はお間違いなく。


 「戦力は、首領がワイト・ネクロマンサー、幹部にワイト・ウォーリアーとワイト・ローグ。そしてそれに率いられるアニマルゾンビの群れだ」


 「それは確定なのか?」


 「かなり高い精度の情報だ。わしは信用しても良いと思っている」


 マッコイ爺さんの、師匠に対する信頼度が急上昇しています。

 まあ、ヌコ様とアインさんの情報を元に、教授が推測したのですから、違ったとしても誤差の範囲内でしょう。


 「それにしちゃあ、ゾンビどもの数が多すぎないかい?ワイト・ネクロなら操れて16体ぐらいだろうにさ」


 アズサさんが歴戦の猛者のような判断をしてます。

 この人の過去を聞くのがだんだん怖くなってきました。


 「それなんだが、ウォーリアーが狼の獣人で、ローグが鼠の獣人らしい。眷属支配のスキルを継承している可能性があると見ている」


 「なるほどね、それで鼠と狼なのかい。なら熊や大鷲は本人の操作だね」


 「あとゾンビ・ビーバーが確認されている。まあそっちは野良になってるかもしれんが」


 「川上でダム作って舟を堰き止めてました」


 あたしは情報を追加しておきます。


 「地味に効く嫌がらせじゃのう。川上はまだしも、川下からの舟での支援は、こっちも期待していたからのう」


 モルガンさんの意見に賛成です。

 絶対に川下にもダムは作ってあるだろうし、なんならゾンビ・ビーバーの数もそっちの方が多いはずです。


 「だけど、クラス持ちのワイト3体だけなら、この村の戦力でもヤレるさね」


 「問題は、こちらの戦力は徐々に削られているのに、相手はほとんど無傷なことだ」


 アズサさんの意見をマッコイ爺さんが否定します。

 確かに自警団の戦力は2割は低下しています。軽傷者が全員復帰できたとしてです。


 それに反して、敵が失ったのは召喚したゾンビとワイトばかりで、それらは素材さえあれば、短時間で補充できるものです。


 「だとしたら、どうするのじゃ?」

 

 「こちらから打って出るしかない」


 モルガンさんの問いに、マッコイ爺さんがきっぱりと答えました。


 「それはどうでしょうか。聖獣様もエルフ殿もいてくれるのです。師匠様からいただいた聖水もある。これならキャラバンが来るまで持ちこたえられるのではないでしょうか?」


 ジョンソンさんが篭城戦を提案します。


 「確かにキャラバンの戦力が合流すれば勝てるだろう」


 「でしたら…」


 「だが、キャラバンが狙われるとマズい事になる」


 「それは…確かに」


 マッコイ爺さんはジョンソンさんの提案に否定的みたいです。


 「じゃが、警護の冒険者には範囲魔法の使い手ぐらいおるじゃろう。警戒もしておるだろうし、そうそう負けるような事はなかろう」


 「いや、危ないかも知れないね」


 楽観的なモルガンさんの意見を、今度はアズサさんが否定しました。


 「キャラバンの主目的は物資の輸送さ。前方に危険があるのにのこのこ出張っては来ないさね」


 「じゃが村の自警団も同行しておるぞ。奴らが村の危機を放っておくまい」


 「なので、キャラバンと冒険者の護衛を後方に待機させて、自警団だけが前進してくるはずさ」


 なるほど、被害を最小限に抑える手ですね。


 「そして途中で先行部隊を出すだろうさね。騎馬兵がいれば2人、いなければ歩兵で4人てとこかね」


 さすがに全員で突っ込んではこないでしょうからね。


 「むうー、そうなるか。だが、その数では…」


 「まず間違いなく喰われるね」


 モルガンさんもアズサさんも同じ予想のようです。


 「最悪なのは減った兵士が敵の戦力になることだ。自警団長が判断を間違えると、彼我の戦力バランスが逆転する」


 マッコイ爺さんが言い切りました。


 「ゾンビならともかく、ワイトが増えたら大事だ。それこそこの開拓村の壊滅の危機だ。なのでキャラバンの戦力は当てにせず、早期の決着を目指す」


 その意見に反対する人はいませんでした。



 

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― 新着の感想 ―
[一言] >村が無事なら教授の老後の収入も安定するでしょう 老後って何百年後!?
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