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教授とメイドその2

 ショーコ君と聖獣は、昼飯を食べてから出立して行った。

 途中までは聖獣が道案内と護衛をしてくれるそうなので、安心である。

 彼女の拠点から人族の開拓村までは、川を下るだけなので迷うことはないらしい。


 「では、お土産期待していてください」


 「うむ、頼んだぞ」


 「がう」


 ショーコ君は元気一杯に走っていった。

 背中に聖獣を担いで……


 「マスター、あれは何か宗教的な意味があるのでしょうか?」


 「いや、たぶん状況を再現しているのだと思うが、聖獣の探索力があれば必要ない気がするのだが」


 「さようですか」


 聖獣が楽したいから、彼女を丸め込んだとは思いたくないが…



 「まあ双方が合意しているなら問題あるまい」


 「片方は理解してるか疑わしいですけれども」


 アインもショーコ君には辛辣だな。

 まあ、すぐに打ち解けられないのもわかるので、ゆっくり馴染んでいって欲しい。

 ショーコ君はアインを、すっかり友達扱いだが、自分が仕出かした事の重さを、感じてないようにも見える。

 本来なら宿敵と付け狙われてもおかしくない間柄なのだ。


 そこらへんが、まだあちらの感覚から抜け出していないのだろう。



 「さて二人きりになれたので、少し真面目な話をしようか」


 「はい、マスター」


 「アインは契約魔法がランク3まで使えると言ったね」


 「その通りです。奴隷契約魔法がランク3ですので、そこまでは里の司祭より教わりました」


 なるほどな、そして解除できる呪文はランク4なので、それ以上は教えなかったわけだ。


 「だとすると、『スキル・アナライズ』は使えるわけだ」


 「さすがマスターです。古代魔法である契約魔法も全て網羅されているとは」


 「いや、知識として知っているのと、実際に使用できるかは別だ。俺は紋章知識と契約魔法は専門外だからな」


 「そうですか、ならば私がお教えできるかもしれません」


 「そう、それだ。基礎からになるが、紋章知識、並びに契約魔法の事を聞きたい」


 「喜んで」


 よし、これでスキルと能力値だけだが、ステータスを見ることができるようになる。


 「ちなみに、アインのスキル構成はどうなっている?」


 「今、お見せします。『スキル・アナライズ(技能解析)』」


 アインは俺の手を取ると、契約魔法を発動させた。

 それと同時に、彼女のステータスが理解できた。



 アイン 種族:ダークエルフ 年齢:17 性別:女性

     職業:メイド(護衛兼任) 社会的地位:ノースウッド家の使用人


     筋力12 体力14 敏捷力13 知力17 精神力16 魅力15

 スキル 弩弓術3 回避3 短剣術3 暗器3 

     火魔法3 風魔法3 闇魔法3 契約魔法3

     魔法知識3 ダンジョン知識3 鉱物知識3 世界知識2 紋章知識3 古代知識3

     魔力増強3 魔力制御3 詠唱短縮3

     毒3 毒耐性3 暗視3 聞き耳3 視力3 潜伏3 忍び足3 警戒3 礼儀作法3



 「なるほど、万能型だな」


 「里では器用貧乏と呼ばれておりました」


 「ここまで広範囲に習熟していれば、突出したスキルは必要ないだろう。というより意図的にランク3で留めたのではないのか?」


 「里での教えは司祭の言う通りにしていました。スキルがランク3になると次の課題が出されまして」


 なるほど、アインは優秀過ぎて、将来を危惧されたか。

 自分達を越えないように、上手く教育していたようだ。

 世界知識(世間の常識)がランク2で留めてあるのもその一端だな。変な知恵をつけて反抗されないようにしていたんだろう。


 「これからは好きなようにスキルを伸ばせるぞ」


 「はい、マスター」


 アインは嬉しそうに微笑んだ。



 「さて、次に俺のスキルを解析してくれるかな?」


 「よろしいのですか?」


 アインは戸惑うのも無理は無い。

 雇用側が使用人のスキルをチェックすることはあっても、その逆はめったに無いだろうから。

 俺としては、内容を見てアインに落胆される危険はあるが、それ以上に現在のスキルを把握しておきたい。

 アインの忠誠心がそれで下がったなら、それまでの事だ。


 「構わない。俺はアインを信頼しているから」


 「マスター…、そこまでのご信頼、嬉しく思います」


 そう言って、アインは再び俺の手をとると、『スキル・アナライズ』を発動させた。


 「こ、こ、これは…」


 アインは俺の手を握ったまま、その場で膝をついた。


 「ハイエルフ様の伝説は色々聞かされておりましたが、まさかマスターがこれほどの魔道師であられたとは……手の震えが止まりません」


 どうやら主人としての面目は保ったようだ。



 バークレイ・ノースウッド 種族:ハイエルフ 年齢:165 性別:男性

 職業:魔道師 社会的地位:導師:New


 筋力9 体力9 敏捷力12 知力19 精神力15 魅力16


 スキル 水魔法4 風魔法2New 土魔法5 光魔法5 闇魔法3 樹魔法4

     空間魔法4 神聖魔法2New 召喚魔法2New 

     魔法知識6 古代知識5 宗教知識4 世界知識4 動物知識3 植物知識3 鉱物知識4

     魔力増強6 魔力制御5 詠唱短縮5 魔法改変2New

     聞き耳1 算術4 教育4 錬金術3 威圧1New 論破1New


 これが俺の現状のステータスである。


 年齢が大幅に上昇しているのは、なんらかの補正又は偽装がかかっているようだ。

 一人暮らしのハイエルフの年齢が二桁なのは不自然らしい。


 社会的地位が隠者から導師に変わっている。これはショーコ君を徒弟として正式に認定したからだろう。

 そうだ、後で月謝の交渉をしておかないとな。


 能力値に変化はない。

 まあトレーニングも何もしていないのだから、筋力や体力が低下していないだけで有りがたい。 


 ちなみにアインに聞いたら、長期間牢に入れられたりすると下がるそうだ。

 少しは運動しないとダメだな。


 魔法は水魔法と神聖魔法、そして召喚魔法がランクアップしていた。

 やはりランクの低い魔法スキルは上がり易いようである。


 驚いたのは、いつの間にか魔法改変がランク2になっていたことだ。

 改変した魔法を使うことでもスキル経験値が溜まるという証明になった。

 

 そしてなぜか増えている、威圧と論破スキルである。

 たぶん試練チームと問答した結果だと思うが、えらく簡単にスキルが増えた気がする。

 強敵とはとても思えないので、彼らが女神の試練を受けていた事になにか関係しているのだろうか。


 

 一通り分析はできたので、未だに震えているアインをゆっくりと立ち上がらせる。


 「俺はアインの主人として合格かな?」


 「滅相もございません。私のような卑賤な者には勿体ないマスターでいらっしゃいます」


 「里でどういう立場にいたのかは知らないが、君は俺が見込んだメイドだ。あまり自分を卑下しないように」


 「ですが…」


 「今は、俺の使用人筆頭だ。胸を張って欲しい」


 「はい…マスター」



 どうやらアインにとって、俺のスキルは想像以上だったらしい。

 自分的には、有ってしかるべきスキルが抜け落ちていると思うのだが、世間の常識ではハイエルフは興味のある事柄以外はからっきしというのが通説らしい。

 なので魔法知識がランク6あるだけで畏怖の対象だそうだ。


 里の司祭長でも魔法知識はランク5で、魔法補助スキルもランク4が最高だったらしい。


 魔法スキル的にはランク5が最高だとしても、それが全てランク6に上がる可能性がある以上、伝説の部類に入るとアインは言っていた。

 魔力増強ランク6も聞いたことがないそうだ。


 ましてや魔法改変である。


 一応、そのような技能があることは記録に残っている。

 しかし実際に保有していると確認された者は、過去300年間で一人もいないらしい。


 まさに伝説級のスキルである。


 「あまり広めない方が良いな」


 「はい、弟子入り希望者が殺到すると思われます」


 集団で来られても、こちらには誓約があって複数は教えられない。

 ならば、今の弟子を懐柔、脅迫、へたをすれば暗殺してでも立場を得ようとする者が現れるだろう。


 「ショーコ君の身の安全の為にも、世間に知られるわけにはいかないな」


 「はい、ですが本人が喋りそうで…」


 うん、確かに『ランチボックス』を覚えたら、嬉々としてお披露目しそうではある。



 「そこは良く言い含めておこう。とくに聖獣には協力を依頼しておく」


 「それがよろしいかと」



 聖獣、まじ有能。


  


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