ニートの日常その5
日も暮れかけてきたので、青空教室は終わりにして、寝る準備をする。
使い魔は、いったんシェルターの付近に集合させて、MPを補給して延長しておく。
「今晩も見張りをよろしくな」
「「「「 ホッホー 」」」」
フクロウの使い魔達には、まだ個別の名前はつけていない。
フギンとムニンとの違いを研究するためである。
ついでに神聖魔法の訓練の為に、バフを掛けまくる。
「ブレス(祝福)」 「シールド オブ ピエティー(信仰の盾)」 「レジスタンス(抵抗)」
ブレス(祝福)は、ランク1神聖呪文で、術者から10m以内の味方に、戦意高揚(命中に+1~4)を付与する。効果時間は10分で、対象は最大で6名である。その中に術者を含めても良い。
また、武器や防具に付与することで、対邪特効を得られる。この場合は射程が接触になり、対象は1つの物体に限定される。
シールド・オブ・ピエティー(信仰の盾)もランク1神聖呪文で、術者から10m以内の味方に、物理防御、魔法防御を4ポイント上昇させる付与を与える。
効果時間は10分で、対象は最大で6名であり、術者を含めても良い。
レジスタンス(抵抗)は、同じくランク1神聖呪文であり、接触した一人の味方の全ての抵抗値に+1の付与をする。
効果時間は10分である。当然だが術者本人に付与しても良い。
これらの付与呪文を、威力マシ、時間延長でかけていく。
もちろん、10分が20分に延長されたとしても、夜通しで監視任務につくフクロウ達を守りきることはできない。
あくまでこれは呪文の訓練であり、寝る前にMPを使い切らないまでも、減らしておこうという作戦である。
MP使用を繰り返すことで、MP自体が成長することは無い。
ただし、長期の筋トレで筋力が上昇する様に、呪文の反復使用により知力が上昇することはあるそうだ。その結果、MPの最大値が上昇する事はあるらしい。
なのでMPに余裕がある間は、呪文を唱えて訓練するのは無駄にはならない。
まあ、ランクの高い魔法スキルは中々上がらないだろうけれど。
「まずは風魔法と神聖魔法、召喚魔法に期待だな」
ともにランク1なので、一番上がり易いはずである。
呪文の練習もこの3つを重点的にこなしていく。
風魔法からは、『ウィンドカッター』と『ウィスパー・ウィンド(囁く風)』及び『ドライヤー』
神聖魔法は先に上げた3種類を。
そして召喚魔法からは、『サモン・インセクト(蟲召喚)』『マジックサークル(魔法円)』を選んで繰り返し唱えていく。
ウィスパー・ウィンド(囁く風)は、風魔法ランク1の呪文で、離れた相手に囁き声を届ける呪文である。
射程は50m、効果範囲は1体、効果時間は10分になる。
対象が味方であった場合は、射程内であれば位置が不明でも声は届く。そうでない場合は、視認するなど位置の特定が必要である。
「もしもし、聞こえるか?」
『カアー(聞こえます)』
射程は魔力制御で倍に伸ばせるから、100mは届く。
使い魔はリンクしてるから必要度は低いが、パーティーメンバーに指示を出すには便利な魔法だ。
「ぼっちな俺には不要だけどな」
サモン・インセクト(蟲召喚)は、召喚魔法ランク1の呪文で、その名の通りに蟲を召喚して使役する。
射程は30mで、効果時間は10分。 召喚できるのは1体である。
『ジャイアント・アント』
体長60cmはある巨大な蟻。強い顎の噛み付きと、3m届く強酸を吐ける。力持ちで自分の6倍の大きさの荷物を運べる。穴を掘るのも得意。
『ジャイアント・ビー』
体長30cmほどの巨大な蜂。飛行能力と尾針の毒が持ち味。毒針は刺した後も抜けたりせず、何度でも刺せる。熊の天敵。
『ジャイアント・センチピード』
体長30cmほどの巨大なムカデ。潜伏能力による奇襲が得意。壁や天井を苦にしない移動能力と、強力な毒を持つ大顎で侵入者を撃退する。
「効果時間が短いのがネックだが、時間延長かけて、連続して呼び出せば牽制ぐらいにはなりそうだな」
ランク1呪文なので瞬間発動できるので、2連続での召喚が可能だ。
準備時間があれば、10体ぐらいは簡単に呼び出せる。伏兵としてなら十分だろう。
マジックサークル(魔法円)は、召喚魔法ランク1の呪文で、地面や壁に魔法円を描くことができる。
大きさは10m半径以内で、射程は30m、持続時間は10分であるが、MPを補充することにより延長できる。
魔法円は簡易結界として作用し、主に召喚した対象を円内に留めておくか、円内にいる召喚者を対象から護る働きがある。
しかしその効果は召喚者の力量に左右されやすく、無謀な召喚であっけなく打ち破られることも多い。召喚魔法のランクが上がれば、より強固な結界を張れる呪文も習得できる。
なお何も支点の無い空中には、魔法円を描くことはできない。
そして床と天井もしくは左右の壁に、同じ魔法円を描けば、強度は2倍になる。
というわけで、蟲を召喚したり、バフを掛けたり、囁いてみたりした。
「はい、順番にならんで。バフが掛かったら魔法円の中を隊列組んで行進すること」
「「「 チキチキ 」」」
「はい、風刃飛ばすから避けてー。次は逆風が吹くから突破してー」
「「「 チキチキ?! 」」」
そのうちに召喚した蟲の数が増えすぎて、収拾が着かなくなってきた。
「ああ、そこ、魔法円から脱走しようとしない。穴掘りは禁止ね」
「チキー」
「威嚇音だしてもダメ、あと3周」
「カチカチ」
「うわっと、足元でじっとしてるのもダメ、怖いから」
「シャカシャカ」
謎の調教は、日が暮れても夜間照明を灯して続けられたという。
「「「 チキチキチキ!! (召喚蟲にも権利を!!)」」」




