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ニートの日常その4

 「フギンとムニンの青空教室ーー」


 「「 カアカア 」」


 「突然始まった青空教室ですが、暇を持て余した私が、使い魔相手に魔法の講義をするという趣旨です」


 「クア?」


 「質問は挙手をして、指名されてから行うこと、いいね?」


 「クア!」


 「はい、フギン君」


 「ナゼ オレ ジャナインデスカ?」


 「そこからですか、職場では礼儀正しくする、これは常識ですね」


 「ククア!」


 「はい、ムニン君」


 「マスター デシ フタリヨイノ?」


 「ああ、良い質問ですね。私は魔導師の誓約として弟子は一人と決めておりますが、使い魔は弟子にはカウントされません。あくまで使い魔との連携強化の為のミーティングと思って下さい」


 「ナラ ナゼ アオゾラキョウシツ?」


 「二つ質問するなら再度の挙手が必要です。まあ、今回は多めに見て答えてあげましょう。それは『教育』スキルの訓練の為です」


 「「 ブッチャケタヨ コノヒト 」」



 本来の目的は、使い魔を固定化して再召喚を確実に行えるようにすることである。

 そして将来的には、知覚の共有化と呪文の譲渡を目標にしている。


 召喚ランクがあがれば、より特殊な能力を持つ使い魔が召喚できるわけだが、その能力の中に、呪文の発動位置を、使い魔基点にするという補助能力がある。


 術者が使い魔の知覚を通して、遠距離から呪文を放てるという壊れ性能である。

 残念ながらランク5相当の呪文効果なので、ランク1の使い魔に付与するには、魔法改変を最大限行っても難しいと言わざるを得ない。


 そこで呪文の譲渡である。


 神聖魔法には、高位の神官が同じ神の信徒へ、簡単な呪文を譲渡する呪文が存在する。

 これは従魔士から従魔、もしくは魔術師から使い魔でも可能なので、俺にもできる。


 譲渡の呪文は神聖魔法ランク2と4に存在し、それぞれスペルランク2と4以下の呪文を対象に譲渡できる。

 この場合のスペルランクとは、呪文のランクの合計という意味で、スペルランク2ならランク2呪文1つか、ランク1呪文2つとなる。

 スペルランク4なら、ランク4以下の呪文を合計で4ランクまでである。


 また譲渡の意味は、一時的な貸与であり、術者は対象がその呪文を使用するまで、貸与した呪文に必要なMPが最大MPから引かれることになる。

 対象が貸与された呪文を使用したり、死亡や解呪により貸与が無効化された場合は、術者の最大MPは元にもどる。

 (ただし減っていたMPの回復には通常の時間がかかる) 


 「まあ、まだ先の話だけれどな」


 使い魔との知覚共有も、神聖魔法のランク上昇も未来の話である。



 ただし準備は進めておこうというわけで、フギンとムニンに魔法の基礎を叩き込もうという算段である。

 ランク1の使い魔にどこまで教え込めるかは未知数だが、そこは2羽の可能性に賭けよう。


 「なんといっても『理解』と『記憶』だからな」


 「「 クア!! 」」



 そして青空教室は始まった。


 「まず、魔法とは何か?」


 「クア(ゴクッ)」


 「ここは面倒なので飛ばします」


 「「クアッ!(飛ばすんかい!) 」」


 「深く追求すると沼に嵌るし、殆どの術士はそんなこと考えずに魔法を使っています」


 「カア(確かに)」


 「なので真理の探究は学者に任せて、我々は実践を主に学びます」


 「クア(了解です)」



 実際に『魔法とは何か』を質問しても、相手によって多種多様な返事が返ってくる。

 駆け出しの魔術師なら、「4元素の精霊力を引き出して、具現化している」と答えるだろう。


 これが神官なら、「神の恩寵です」 だし、祈祷師なら、「偉大なる英霊の助力である」と答えるに違いない。

 このように、それぞれの理論と技術で呪文を唱えているわけだが、結局は魔法という同じ分類になるわけだし、『ディスペルマジック(魔法解呪)』の呪文でどれも打ち消すことができる。


 つまり深く考えずに、自分に合った理論で理解してれば問題ないというわけだ。



 「魔法には、属性、ランク、消費MP、射程、効果範囲、効果(威力)、効果時間がある」


 「クア!」


 「はい、フギン君」


 「クア?クア?(射程と効果範囲って違うものなんですか?」


 「大変良い質問ですね。ここ間違い易いので良く覚えてください」



 射程とは、魔法を発動できる基点が、術者からどれくらい離せるかという指針である。

 射程が『0』なら術者が基点になる。『接触』なら手足が触れられる距離だ。

 

 ランク1の呪文は基本的に射程は『30m』のものが多い。

 その場合は、術者から30m以内に基点を置けるということになる。


 対して、効果範囲は、基点からどれくらいの範囲に影響が及ぶかを表している。

 『術者本人』から始まって、『接触した対象』、『10m半径』『前方30mの扇形』『1辺が3mの直方体』など多種多様な種類がある。

 

 ここで注意が必要なのだが、射程が0で効果範囲10m半径の呪文と、射程が30mあるが、術者の足元に効果範囲10m半径の呪文を唱えた場合に、同じように見えるということだ。


 これが射程と効果範囲の混同に繋がっている。


 また、攻撃呪文では攻撃が届く範囲が射程であると勘違いされ易い。

 実際には、射程の端まで基点を延ばせば、そこから効果範囲の分は影響が広がるので、ダメージが与えられる距離はのびる可能性がある。


 「よって、射程と効果範囲の違いは、しっかり復習しておくように。いいですね」


 「カカア…(宿題でちゃったよ)」



 「さて講義を続けましょう。呪文にはランクによって、大体の基本数値が定められています。もちろんこれには例外もあるので、一応の目安だと思っておいて下さい」



 ランク1 消費MP1 射程30m 効果範囲10m半径 効果2D3ダメージ 効果時間10分

 ランク2 MP2 射程60m 範囲20m半径 効果4D4ダメージ 効果時間1時間

 ランク3 MP4 射程120m 範囲30m半径 効果6D6ダメージ 効果時間1日

 ランク4 MP8 射程240m 範囲60m半径 効果8D8ダメージ 効果時間1週間

 ランク5 MP16 射程500m 範囲120m半径 効果10D10ダメージ 効果時間1ヶ月

 ランク6 MP32 射程1km 範囲240m半径 効果12D12ダメージ 効果時間1年


 ランク7は魔法知識がないのでわからない。

 


 「この様に、呪文のランクが上昇するにつれて、各要素も上がっていくわけですが、消費MPが完全に比例直線を描いているにも関わらず、効果範囲や効果時間では不規則な上昇をしているランクもあるので注意が必要です」


 射程はほぼ等倍だが、効果範囲はランク3まで緩やかで、ランク4から急激に倍化している。

 効果時間はランク3だけ24倍になっているが、他はほぼ6~8倍ペースである。

 なお、効果のXDYは、1~Yまでの乱数をX回試行して合計した数値を意味する。範囲攻撃などは、対象の位置や遮蔽物の有無によってダメージに振れ幅が発生するので、この表記になっている。


 ランク3の『ファイアーボール(火炎球)』に巻き込まれた場合、運が良ければ6ダメージで済み、直撃したら36ダメージ受ける可能性があると考えてくれれば良い。

 そして放つ側は平均して21ダメージを与えられるものとして、相手の損害度を測ることになる。


 実際にはこれに、攻撃側の魔法攻撃値と防御側の魔法防御値の比較が加わるので、単なる目安にしかならないのだが。


 

 「ここで理解して欲しいのは、ランク6の呪文を操る魔導師が戦場に存在した場合、1km離れた地点から、半径240m(直径480m)の広範囲に、最大144ダメージ(平均78ダメージ)の魔法攻撃が炸裂するということです」


 もちろん索敵能力や隠蔽能力によって、接敵距離や先制攻撃をどちらができるかは変化するが、ランク6の魔道師が、それらを疎かにしたり、劣っていることは考えにくい。


 「故に、ランク2までを対個人攻撃魔術、ランク4までを対集団攻撃魔術、ランク5は戦術級魔術と呼び、ランク6からは戦略級魔術と呼び習わされています」


 ランク5の攻撃魔法は、軍隊の戦術に対抗でき、ランク6の攻撃魔法は国家の戦略を覆す。


 「古来より大魔導師のことをWarlockウォーロックと尊称しますが、まさにWar(戦争)をLock(膠着状態に)することさえできるという意味なのです」


 「「 カアアーー!(おおーー!) 」」


 「まあ、今ではランク5が使えると名乗ったりしてる輩も多いらしいですけどね」


 「「 カア??(おお??) 」」



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