ニートの日常その3
残った食材は、使い魔が美味しくいただきました。
ガチャで出した『ランチボックス』は、確率の偏在をみせて、見事にデザートセットになった。
魔法改変したので、満腹中枢もしっかり刺激する実を、食べ切れなかった俺は、フギンとムニンを任務から呼び戻して、与えてみた。
「「 ドコマデモ ツイテイキマス マスター 」」
甘味は非常に好評だった。
ちなみに使い魔にはリンクが繋がっていて、簡単な指示は離れていても伝わる様になっている。
「戻れ」 「待機せよ」 「周囲を警戒」
などは、10kmほど距離があっても伝わる。
さらに、使い魔に何かあった時も、主人は感知できる。
攻撃を受けて傷ついたとか、HPが0になって送還されたとかだ。
「お前たちの目や耳を通して、遠隔地を知覚できれば良いんだけどな」
ランクの高い使い魔召喚呪文だと、それができる。
ただし、その場合には呼び出される使い魔は、より強い種族に限定される。
狼や大鷲など、従魔に近いタイプになるのだ。
別に、感覚器官の共有ならばワタリガラスでも問題なさそうだが、呪文のランク的には3は欲しいということなのか。
MPの継続供給で、フギンとムニンは固有化が進んでいて、このままいけば指定召喚もできるようになるだろう。
そうなったときに、偵察に他の使い魔を使うのもどうかと思う。
できれば慣れた2羽に活躍して欲しい。
「指定召喚できるようになったら、魔法改変でもしてみるかな」
そしてやることが無くなった。
俺には自己鍛錬で上昇が見込めるスキルが、魔法とその補助スキル以外にほとんどない。
知識系は、図書館などの資料が必要だし、算術はこれ以上のランクはいらないだろう。
聞き耳を鍛えるよりは、空間魔法を訓練した方が効率的だし、教育は弟子か生徒がいないと向上しない。
唯一、錬金術だけが候補にあがるのだが、道具や触媒が足りなくて思うように自己鍛錬できない状態である。
魔法の訓練はMPを使うわけで、無詠唱を併用すれば、凄い勢いで減っていく。
先ほども、午前中の早いうちにMPが半分に減ったので、一度訓練を停止している。
MPは自然回復するのだが、それも魔法改変スキルの試行錯誤で、回復するそばから減っていく。
しばらくは、ぼぉーとしながら、MPの回復を待つしかすることがなかった。
ちなみに、MPは24時間で満タンに回復する。
つまり1時間に最大MPの24分の1ずつ自然回復することになる。
さらに睡眠をとると、これが3倍の速度になる。
MPがほぼ無くなっても、8時間の睡眠をとれば全部回復するわけだ。
エルフは、睡眠をとらなくても安静にしていれば3倍の速度(+200%)でMPが回復する。
さらに『瞑想』というスキルを使うと、急な動作をしたり精神の安定を破られなければランク3でも2倍の速度(+100%)で回復する。
この瞑想スキルを、エルフは擬似睡眠と併用して使用できる。
つまり4倍の速さ(+300%)でMPを回復できるわけで、6時間安静にしながら瞑想してるだけで全回復することになる。
この強力なMP回復力が、魔術師としての継戦能力に繋がっており、エルフという種族が術者として恐れられている要因の一つになっている。
(他にも魔術師の弱点である接近戦の弱さを補える回避能力ならびに潜伏能力。種族特性による高いMP等があげられる)
「瞑想スキルでも持ってればなぁ…」
ぼぉーとしてればスキルが上がりそうで楽ちんなんだけど。
(そんなわけない)
ここで時間と暦の話をしておこう。
こちらの世界でも、時間の単位は秒・分・時・日である。
ただし若干のズレがあって、こちらの1秒はあちらの1.06秒ぐらいの違いがある。
まあ、普通に生活している分には些細な違いではあるが、年単位で計ると20日分ぐらいのずれができる。
60秒で1分、60分で1時間、24時間で1日なのも一緒である。
7日で1週間だが、1ヶ月は8週間になる。さらに6ヶ月で1年となる。
これだと1年が336日になるのだが、1秒の長さが違うので、1年間の長さはほぼ一緒になる。
この1年の長さが一緒なのが、何を意味するのかはわからないが、あちらとの時間的感覚が同じなのは少し嬉しい。
なにせ長命種族なので、1年に20日間のずれでも、18年経てば、丸一年ぐらいの誤差が生じるからだ。
「俺も18年前にこっちに飛ばされてなぁ」
と先輩ムーブしているときに、空白の1年とかが発見されると、
「おじいちゃん、もうボケてるんだ」
と後輩転生者に、生暖かい目で見られそうだから。
1ヶ月が8週間なのは、2つの月の周期がそれぞれ28日と56日だかららしい。
長いほうに合わせてあるわけだ。
そして6ヶ月(336日)で1年なので、惑星の公転と衛星の自転が綺麗にそろっていることになる。
「まあ、ここまでお膳立てが揃っていれば、こういう暦になるよな」
ゆっくり巡る月『ステラ』が、6度の新月を迎えると季節が巡るのは体感でわかる。
これで1年は336日で、6ヶ月にしようとなるだろう。
1ヶ月は56日だが、1週間は7日と8日の二つが候補になる。
しかし早く巡る月『ルーナ』は28日周期だから、8日だと中途半端になってしまう。
そこで1週間は7日になるというわけだ。
1日は惑星の自転で決まっているわけで(日の出、日の入り)、これが21時間や28時間ではなく24時間に分割されたのは、単に利便性の問題かも知れない。
もしくは、最初は6分割(1年は6ヶ月だから)だったのが、後に細分化された可能性もある。
(世界知識3だと、そこまで細かい暦の成り立ちはわからない)
「とにかく一ヶ月が8週間だということさえ、気をつけていれば良いのがありがたい」
まあ村人と会話する機会があって、暦が違ったとしても、それは種族が違うからでごまかせるだろう。
(暦は全種族共通です)




