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ニートの日常その2

 『ドライヤー』の呪文を開発してみる。

 たんに裸で待つのが暇だったから。


 風魔法で、実際に風を吹かせる呪文は3つある。

 ランク1の『ブリーズ(そよ風)』

 ランク2の『ゲイル(烈風)』

 ランク3の『コントロール・エア(気体制御)』

 の3つである。


 ランク1の『ブリーズ』は、手のひらから、そよ風程度の風力を送り出す呪文で、室内の換気や充満した煙の排出、焚き火の火力アップなどに使われる、いわゆる生活魔法である。


 ランク2の『ゲイル』は、術者の正面に対して幅10m、長さ60mほどの激しい風を吹き付ける呪文で、狭い通路で使えば、敵の接近を阻害することもできる。

 広範囲の霧や、沼に漂う毒ガスなども吹き散らすことが可能である。


 ランク3の『コントロール・エア』は、気体なら大抵のものを制御することが可能で、その結果、風を吹かせることもできるが、風速はそれ程でもない。(ブリーズとゲイルの中間ぐらい)


 俺は風魔法はランク1しか使えないので、改変するのはブリーズ一択になる。


 「まあ、風速40mの温風を吹き付けられても困るだろうしな」



 基本的な改変は水魔法『シャワー』と同じになる。

 出現位置を指定可能にして、風力と温度を固定、効果時間も10分のままで良い。


 これがコスト2でできる。

 MP増加と詠唱複雑化で代償を払うのも一緒である。


 「温かき風よ、我が願う位置から、吹き続けよ『ドライヤー!』」


 これで正面から温風機から吹いてくるような、ほどよい風が吹き付けてくる。


 「良し良し、成功したな」


 髪の毛を手櫛でワシャワシャしながら、乾かしていく。

 髪が終わったら、温風の正面に仁王立ちして、身体全体を乾かす。


 (ここモザイク入れといて)


 身体も乾いたら、服を着て食事にするとしよう。



 『森の果実』は、一粒で1日分の栄養素が摂取できる。


 もしあちらに存在していたら、

 

 『これたった一粒で、成人男性が必要とするカロリー、ビタミン、必須アミノ酸が全部とれます』

 

 と、通販番組で絶賛されていたはずの代物である。

 さらに満腹中枢は刺激しないので、いくらでも食べれるし、栄養過多で健康被害がでることもない。


 エルフが、スタイルが良くて、しかもベジタリアンでいられるわけである。


 デメリットは、味に変化が無いこと。

 毎食これで済ませていると、食事が楽しみでは無くなっていく。


 「こういう積み重ねが、生き飽きた長命種の自殺に繋がっていくんだろうな」



 そこで『魔法改変』だ。


 味にバリエーションを作り、噛み心地や舌触りにも変化をつけたい。


 ただし、そこまでやると別のランクの呪文になってしまう。

 いわゆるバージョンアップ版である。


 『魔法改変』ではランクの変更は許されないので、ここは元の呪文をデチューンしてバランスを取るしかない。


 一粒で一日分なのを、10粒全部食べて一食分になるように効果を下げるのである。

 さらに取得できる栄養素も、一粒毎に数種類だけに限定する。


 ここまで縛りを入れて、さらに代償を払うことでランク1の呪文として維持できる。


 代償はMP増加にしておこう。

 ランク1呪文なら、元の消費MPが1なので、2倍になっても誤差の範疇である。


 そして完成したのが、樹魔法ランク1呪文『ランチボックス』と命名。


 『ランチボックス』は、10個の植物性の実を具現化する呪文である。

 生み出す10個の種類は、術者が選択できるがランダム選択も可能となる。

 選ぶのが面倒な日や、サプライズを期待したい日に最適なはずだ。


 メニューは


 米の実     見た目は手毬寿司のシャリ。 味は塩結び。 

 小麦の実   見た目はボール形のフランスパン。 食感は予想より柔らかめ。 

 大麦の実   見た目は松ぼっくり。 崩すとフレークになる。

 コーンの実  見た目は丸っこいヤングコーン。 味はスイートコーン。

 ポテトの実   見た目はそのままジャガイモ。 薄皮は簡単に剥くことができ、中は茹で上がった男爵。

 キャベツの実 見た目はミニキャベツ。 味は春キャベツ。

 トマトの実   見た目はプチトマト。 味は普通にトマト。

 林檎の実   見た目は小ぶりの林檎。 味は紅玉で皮ごと食べられる。

 バナナの実  見た目は丸いバナナ。 皮は薄く、中は完熟バナナ。

 カカオの実  見た目は大きなカカオの実。 割ると中にチョコレートが詰まっている。


 となっている。


 主食と野菜が多目なのは、植物性に限定された為だ。もう少し副食が欲しかったが、それは後の研究成果を待とう。

 デザートが充実しているのがポイント高めである。


 「さっそく実食してみるか 『ランチボックス!』 」


 まずは10種類を一つずつ選択して、味見をしてみる。


 「うむうむ、どれも問題ない。成功だな」


 主食3品は、どんなオカズにも合うように、また食べ飽きないように普通の味になっている。

 炊き込みご飯やハチミツを混ぜた食パンなどは、美味しいけれど続くと飽きるから。

 それと大麦のフレークは、牛乳がないと食べ辛い。あとで代替用の豆乳の入手方法を考えてみようと思った。


 副食は、コーンとポテト、キャベツ、トマトである。

 サラダじゃないかと突っ込みたくなるが、肉・魚・卵を封じられると場に出せるカードはこれぐらいしかない。

 小麦の実と合わせて 『BなしLTサンド』 などはお勧めの一品である。


 寂しい副食に比べて、デザートは豪華である。

 林檎の酸味とバナナの甘味がお互いを引き立てる。

 バナナにチョコレートをかけてもいける。


 結論としては…


 「飯が食い足りなくて、オカズは味が薄い、デザートはちょっと量が多い」


 であった。


 まあ、これは米の実の数を増やす代わりに、デザートの粒を減らせば済むことだ。

 しばらくはメニューの選択で、暇つぶしができるに違いない。


 ちなみにランダム生成も試してみたが、キャベツx2、バナナx3、林檎x3、カカオx2だった…



 「どうしろと…」


 今日の教訓。


 『ランダム・ガチャは危険』




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