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転生図書館再びその2

前話で誤字がありました。ご指摘頂きありがとうございます。

そんなこんなで、目的地に到着。


「ここか~、なんか本がいっぱいあるね」


扉の丸窓から覗き込んでいると、ドアが勝手にスライドして開いた。


「うわっと、ビックリしたぁ」


 倒れこむように部屋の中に入ると、受付の女性と目が合った。


「あ、どうも、204番、谷川翔子です」


 ぺこぺこ頭を下げたけど、無反応だ。

 女神っていうより図書委員長だよね。


 「その認識で合ってる」


 ぼそっと女性がつぶやいた。


 「うひっ、心読んでます?」


 口に出していない事に、同意されて、めちゃあせる。

 しかしそれには答えてくれず、手招きだけされた。


 「ちょっと、勇気がいるかも…」


 あたしをビビらすとは、この図書委員長ただものではないぞ。


 「いいから来る」


 「は、はいっ。」


 慌ててカウンターに走り寄る。


 「これ」


 またもや言葉少なく渡されたのは一冊の本だった。


 「え?これ読めってことですか?」


 説明書にしては、分厚いんですけど…


 「持てばわかる」


 「あ、そういう仕様なんですね?」


 さすが、転生委員会(仮称)、ダウンロードもオートなんだ。


 そう思って本を手にすると、ちょっとだけ光って、あたしの名前が浮かび上がった。


 「谷川翔子 著 って、まだ何も書いてないし、どういうことです?」


 「読めばわかる」


 相変わらず、ぶっきら棒な答えだね。

 でも仕方ないか、図書委員長だからね。


 「了解しました~」


 こういうタイプの人は逆らったらダメなんだよ。言われた通りにキビキビやること。

 そして視線から奥の個室へ行けと言われてる気がする。


 「それで正解」


 もう心読まれても驚きませんからね。

 逆に以心伝心で、便利なぐらいですよ。


 「あ、そういえば」


 「なに?」


 「あたしと一緒にいた、モーリー先生はどうなりました?」


 「モーリー?」


 「そそ、森本だからモーリー、というのは表向きで、若い頃のモリアーティ教授の中の人に声が似てると評判の」


 「なら、あそこ」


 指さした方向には、ずらりと並んだ個室(閲覧室だっけ)にひとつだけ明かりがついていた。


 ああ、やっぱり転生組なんですね。と同情したり仲間意識を持ったりしたけど…



 『次は俺のターンだ!』


 ノリノリの叫び声が、漏れ聞こえてきたよ。

 学習塾では、教え方は上手いけど、陰キャだって噂になってたんだけどなぁ…


 「あ~、うん、まあストレスとかいろいろ有るよね…」


 振り向いた先の、受付カウンターの図書委員長は、オコだった。


 「あの、あたしの部屋は防音効果最大でお願いします」


 「了解した」



 「モーリー先生、玉砕覚悟の教え、このショーコ、しっかり受け止めました。」


 明かりのついた個室に向かって敬礼しながら、3つ離れた閲覧室へとこっそり入るのであった。

 



 個室に入って、目に付くのはアンティークな書斎机と椅子だ。


 「おお、センス良いね。ワンセット欲しいかも」


 あまり本は読まないけど、洋風な書斎には憧れる。 ヴィクトリア風のメイドさんが紅茶を入れてくれると、なお好し。


 「にしても分厚いよね、この本」


 全部に目を通すのにどれくらいかかるやら。


 「ねえ、音声ガイダンス機能はついてないの?」


 読むのが面倒で、ダメ元で話しかけてみた。

 すると、


 『了解しました。これ以降、日本語音声で対応いたします』


 と、滑舌の良い女性の声で答えが返ってきた。


 「おお、言ってみるもんだね」


 『呼びかけ名を決めてください』


 「あ、了解。う~ん、本だから『アレクサンドラ』で」


 本好きが高じて、転生先で図書館国家を作った司書さんの話もお気に入りだったからね。


 『登録いたしました。私はアレクサンドラ、転生の書の案内人です』


 「あ、はい、あたしは谷川翔子、この本の著者なのかな?」


 『すでにマスターとして登録されています。転生の書にはこれからのマスターの選択と、その後の人生が自動書記で書かれていく為に、自叙伝として扱われます』


 「え?プライバシーは?」


 記録が残ることは別にいいけど、やらかした事まで書かれるのは、ちょっとね。


 『転生の書は、ここ転生図書館に保管され、部外者には公開されません』


 「つまり、関係者なら見れるってことでしょ?」


 あの図書委員長さんとか。


 『それは、彼の方の業務引受条件ですので』


 まあ、仕方ないか。お医者さんにお腹痛いの隠しても、治るわけじゃないからね。



 「じゃあ、アレクサンドラ、案内をお願い。まとめサイトの切り抜きで」


 『…了解しました』


 あ、ちょっと不満そう。

 出番だって張り切ってたのかな?でも長々説明されてもわかんないし。



 『まず、前世から引き継ぐデータです』


 そう言って、勝手にページを開いてみせてくる。



前世名 谷川翔子(18) 女性 

筋力13 体力14 敏捷力15 知力12 精神力13 魅力14

HP21 MP19 攻撃力13 防御力14 魔法攻撃力12 魔法防御力13

スキル: 算術3 応急手当3 料理2 釣り2 動物知識3 植物知識2 

      弓術2 回避2 野営2 解体1 罠1 聞き耳1 視認1 追跡1

カルマ: 190


 「ん~能力値も引き継ぎか~。これって高いの?低いの?」


 『日本人の成人女性の平均が12ぐらいですので、高い方かと』


 「そっか、まあ運動能力には自信があったけど、最低値が知力って…」


 『人族の種族的最大値が18ですから、敏捷力とかは素晴らしいと思いますが』

 

 「慰め、ありがとね。それで、MPがあるって事は魔法も使えるようになるの?」


 『はい、魔法知識が別に必要になりますが、魔法スキルを習得すれば』


 「それは夢が広がる話ね」


 やっぱり転生するなら魔法使いは外せないよね。

 で、スキルを取得するってことは。


 「このカルマがスキルポイントになるの?」


 『はい、スキルに限らず、種族、職業、社会的地位、装備、能力値に振り分けて、転生先の素体の構築をします』


 つまりはキャラクター・メイキングってことかぁ。

 選択科目が多すぎて、面倒だよね……



 「うん、それならアレクサンドラにお任せね」


 『はあ?』


 「あたしが好みそうな感じでよろしく~」


 『それは…』


 「あれ?できない?そっかそこまで多機能じゃないのか」


 『お ま か せ ください』


 アレクサンドラは凄い勢いで点滅し始めると、パラパラと何度も往復しながらページを捲っていく。

 やがて…


 『できました』


 「おお、流石に早い(パチパチ)」


 『ふふ、当然です』


 そうドヤりながら、検索結果を表示してくる。


 『おまかせプラン』


 種族 ウッドエルフ(10) ■非金属防具のみ(△5) ■オーク嫌い(△5) ■火・闇魔法禁止(△15)

 職業 狩人(10) ■毎年最初の獲物は神に捧げる(△5) ■不必要な狩りはしない(△5)

 社会的地位 猟師(5)

 スキル  水魔法1 風魔法1 土魔法2 光魔法2

      魔法知識3 動物知識3 植物知識3 ダンジョン知識3 世界知識2 

      弓術4 回避4 料理2 釣り2 算術3 応急手当3 

      野営3 解体3 罠3 聞き耳3 視認3 忍び足2 潜伏3 追跡3 警戒2 登攀1

      魔力増強2 魔力制御1 詠唱短縮2

      照準2 潜伏射撃2

 装備 冒険者セット(10) 弓矢(5) 野営セット(15)

 能力値 筋力13 体力13 敏捷力18 知力13 精神力13 魅力14

     HP20 MP20(+30) 攻撃力13(+5) 防御力13(+5)

     魔法攻撃力13 魔法防御力13


 なるほど、なるほど。エルフで弓使いで狩人なのね。

 中学から始めたアーチェリーが、ちゃんと役立ってるのが嬉しいね。

 解体とか罠とかは、猟師だったお祖父ちゃんに教わった分に、職業とかで上乗せされていると。


 「■(△)って何?」


 『それはデメリットの選択肢とそこから還元されるポイントですね。外すことも、もっと厳しいデメリットを選ぶことも可能です』


 「ほうほう、エルフなのに菜食主義はついてないの?」


 『初期デメリットにはありますが、グルメなマスターには不要かと思い、外しました。選択し直しますか?』


 「いえ、お肉食べたいです」


 『ですよね』


 ううむ、食い意地が張っているとこまで、お見通しとは、お主やりおるな。

 魔法のランクが低いのが気になるけど、ポイントがギリギリなんだろうね。


 『実は、矢の補給に心配があるのですが、弓職人の技能までとれなくて』


 「まあ、そこはなんとでもなるでしょ。魔法もあるんだし」


 思ったより広範囲でスキルもあるし、十分十分。



 「よし、これで決まりね」


 『えっ!本当に良いんですか?』


 「大丈夫、大丈夫、アレクサンドラのお勧めだもん」


 『うわ、根拠の無い信頼が重い…』


 あたしは、まだぶつぶつ言ってるアレクサンドラを抱えながら、閲覧室を後にした。



 「早い…」


 図書委員長も目を丸くして見ている。


 「はい、完成です!」


 カウンターにアレクサンドラを乗せると、ずいっと押し出した。


 「後悔しない?」


 委員長が質問してくるけど、答えは決まってる。


 「するわけ無いじゃないですか。足りないものがあって当然なんです。それをなんとかするのが楽しいんですよ。」


 胸を張って答えるあたしに、委員長が初めて笑顔をみせてくれた。



 『貴女なら大丈夫そうね。良い転生でありますように』



 そして、あたしは旅立った。


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