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転生図書館その10

装備なんて飾りですよ。

 現状の再確認をしよう。


 カルマポイント 残り160

 世界知識1 魔法知識3 種族ハイエルフ(10) 職業魔導師(5) 社会的地位隠者(5)


 現在までに使ったポイントは40.

 残り160ポイントを、スキルボーナスを考慮しつつ、割り振っていくと…


 水魔法2(10)、土魔法3(15)、光魔法3(15)、闇魔法3(15)、樹魔法3(15)、空間魔法3(15)

神聖魔法1(5)、召喚魔法1(5)

 古代知識2(10)、宗教知識1(5)、世界知識2(+1で5)

 魔力増強3(15)、魔力操作3(15)、詠唱短縮3(15)


 となった。


 これにスキルボーナスを重ねていくと。


 水魔法4、風魔法1、土魔法5、光魔法5、闇魔法3、樹魔法4、

 空間魔法4、神聖魔法1、召喚魔法1

 魔法知識6、古代知識5、宗教知識4、世界知識4

 魔力増強6、魔力制御5、詠唱短縮5

 聞き耳1、錬金術3 算術4、教育4、


 で、残りポイント0である。

 『装備』?『能力値』? 知らない子ですね。


 

 ぶっちゃけ装備は欲しい。

 誰も裸同然で見知らぬ土地に放り出されたいとは思わないはずだ。(特殊な性癖の方は除く)


 「必要最低限の装備は付けてくれるだろう、というのは甘えだな」


 なにせ『装備』という項目が存在するのだ。必要だと思うなら、ポイントを払って確保すれば良いだけだ。

 たまにある、転生ボーナスだけ付与して、持ち物、服装は現代のままという、異世界転移とはタイプが違う。

 こちらの物品は持ち込めないだろうし、あちらで所持金があるかも疑わしい。


 

 ところで少し気になったのだが、転生の書は人体の再構成なのか、それとも前世の記憶のフラッシュバックなのかという点だ。

 前世の記憶だけがあって、あちらでの記憶がすっぱり抜け落ちてるタイプは、記憶喪失で一般常識の無さを誤魔化しつつ、周囲に溶け込んでいくパターンが多い。

 そうではなく、あちらでの生活の記憶もありつつ、前世を思い出したタイプは、突飛な行動をとらなければ普通に日常が続いていくはずだ。

 

 再構成タイプだとしたら、森の奥やダンジョンの中に放り出されるタイプはまあ良い(いや当事者にとっては死活問題なのだが)。

 しかし職業で工房の職人やギルドの職員を選んでいたとして、街の中にポンと出現したら周囲の認識はどうなるのか?という疑問が残る。


 「ある日突然、貴方の隣に、職場の同僚だと名乗る見知らぬ人物が座っていたとしたら…」


 自分たちの工房は4人で切り盛りしていたはずなのに、なぜか5人目がいて、それを誰も不思議に思わない。

 一人だけ違和感に気づいた男が、周りの同僚に訴えかけるが、誰もとりあってくれない。


 「どうして皆気が付かないんだ!アイツは昨日まで存在していなかった!!」


 「おやおや、記憶操作が不十分な個体がいますねえ。上書きし直しますが、ちょっと頭痛がしますよ。大丈夫、痛いのは一瞬だけです。ほら、逃げないで、抵抗すると痛みが増しますよ、ほら…」


 

 住民まるごと記憶操作は無理があるか…


 既存の工房に放り込むよりは、遠くの都市から引っ越してきたベテラン職人というふれ込みの方が、受け入れやすいかもしれない。職人ギルドの推薦状でもあれば、どこの職場でも雇ってくれるだろうし。

 冒険者ならそれこそ、ギルドに登録してあれば問題ないだろうしな。


 「そして引き篭もりには、そんな心配は一切いらないのだ」


 素性を詮索してくる隣人も、何かに取り憑かれたのではと心配してくる幼馴染も存在しない。


 『友人を作らなければ、人間強度は下がらない。』

 

 名言である。



 話がそれた…


 『装備』に回せるポイントは無いという話だった。

 正確に言えば、搾り出せない事もないが、その搾りかすでさえスキルに回したいということだ。


 たとえば、


「エルフ以外はゴミだね。手を貸す意味も知恵を授ける価値もないよ」


 という差別主義者になってみるとか。


「従魔は1体で十分さ。もっと強いのが従属できたら、前のは捨てれば良いし」


 という合理主義者になってみるとか。


 限界まで無理をすれば10ポイントはひねり出せる。


 しかしその血涙のポイントを、革の鎧や鋼の剣に交換できるのか?


 「俺には無理だな」


 5ポイントあれば、水魔法か宗教知識か世界知識がランク5にできる。

 もしくは神聖魔法か召喚魔法がランク2にできる。

 火魔法や死霊魔法を覚えておくこともできるのだ。


 それが10ポイントともなれば、ロマンはさらに広がっていくのだ…



 「まてよ、ワンチャン『装備』か『能力値』の項目に(△)があるやも」


『装備』で(△)は考えづらいが、『能力値』なら初期数値を削ることでポイント還元があるかもしれない。なぜそこに気付かなかったのか。


 『ピンチはチャンス』


 異世界転移の先達もそう言っていた。あきらめない事が大事だと…




 結論から言うと『能力値』に△は無かった。


 『能力値』は上昇させる為の簡潔な説明文があるだけで、初期値を削ってポイントをもらう事はできなかった。


 「まあ、やりすぎて筋力1とか知力1にする考え無しが出るのを防ぐには当然の処置か」


 箸さえも持てない大魔道士とか、知能が蟲並みの剣聖が転生しても、周囲に迷惑をかけるだけで、生き延びることさえできないだろう。


 ちなみに能力値は1上昇させるのに(10)で、種族上限まで上げられる。

 ハイエルフは、知力・精神・魅力上限が21で、筋力・体力・敏捷の上限が15だった。

 他の種族は検証できなかったが、世界知識によれば、人族の能力値の上限は18らしい。

 (もちろん付与魔法やポーションなどで、一時的にそれを越えることは可能である)



 逆に『装備』には一つだけ(△)が存在した。


 それがこれ、


 □こも (△5) 裸に素足で菰を被っている状態。賭場で一文無しになると、この格好で外に放り出される。

 なお、これを選択すると他の『装備』は全て選択不可になる。


 「人間としての尊厳さえもチップに換えて、スキルにつぎ込めというのか…」



 ちなみに、救済特典なのか、


 □巡礼者セット(0) 貫頭衣、サンダル、水袋 所持金無し


というのがあった。


 「よかった、葉っぱ1枚で戦闘する必要はなくなったな…」


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