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野良猫―夜

 部活を終えて地元に帰り着く時間は時計の上ではまだ夕方なのだけれど、冬の間は辺りが真っ暗になってすっかり夜になっている。やるべきことから逃げているときには焦らされるような気分になることもあるけれど、私は基本的にこの感覚が好きだ。たまに真夜中に町を歩くのも、こういった性質からきているのだろう。

 駅から離れるのと比例して人の数が少なくなってゆく。白い街灯の光が作り出しては消える何人もの私の影を伴いながら、家路を辿る。

「あ」

 野良猫がいた。

 塀の上で、子猫に寄り添っている。昨日今日生まれた様子ではないし、どこかから拾ってきたのだろうか。

 ああ、今朝はもしかして子猫の面倒を見ていたから……。


 私が猫の向いてる方向から帰って来たからか、真っ直ぐ私を見ているような気がする。私は毎日が変わらないと嘆きながら、本当は変わってしまうことを拒んでいたのかもしれない。いつかこの猫が本当に私の目の前から姿を消したとき、必ず私は出会ったことを後悔してしまうように見切りをつけていた。

「あんた、私のこと好き?」

 一度周りを見回して、話しかけてみる。猫は動かず、鳴きもしない。ただじっと私を見上げていて、そのうちふいっと顔を背けた。

弥塚泉からのお題。

引き続き『野良猫』。


この作品はこのお話で一旦終了し、来年からはまた新しいことに挑戦したいと思います。


あらすじにも書いておりますが完結後も、お題をいただければその都度完結設定を解除して続きを投稿いたしますので、その際はどうぞご遠慮なく。

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