異なるモノ
凍てつく湖畔を前にして、いつの間にかポケットに入っていたチョコレートクッキーをかじっていた。
私の記憶では、さっきまで夕暮れの道を歩いていたはずだ。
途切れた記憶や周りの奇妙な造形の動物、そしてここを通りかかる人の姿を観察した結果、どうやらここは異世界か異星だという結論になっていた。
「あっ、あんた!」
「ん?」
声の方に目をやると、昼間は見なかった顔の男性がちょっと恐ろしい表情で走ってくるのが見えた。
「こんな美人さんが一人でいると危ないじゃないか! うちに来んさい!」
「あ、ど、どうも……」
マジックでも起きたような幸運だ。人さらいなのかと疑ったが、彼の家に招かれると奥さんがとても親切にしてくれた。
そういえば、こないだこんな漫画を読んだっけ。ある星の不細工な女の人が宇宙に追放されてしまう。そしてたどり着いた別の星ではなぜか歓迎される。その星の価値観では彼女は美人だったのだ、という話。私もそうなのかと思っていた。地球で不細工と言われたことはないはずだけど、とちょっぴりへこみながら。
ところが、真相は風呂場の鏡を見たときに判明する。
「私、やっぱり宇宙人に攫われちゃったんだな……。しっかり実験してやがった」
とにあ様からのお題。
凍てつく湖畔、マジック、チョコレートクッキー。




