フィクション
耳が痛くなるほど静まり返った夜の中では鎖を揺らす音すら、自分の位置を不用意に知らせる合図のようだ。煤だらけになってしまった手で開けた扉の向こうに足を踏み入れた瞬間、境界を越えてしまったような気がした。
この廃墟に誰もいないことなど、子どもだって知っている。ただ奥まで行って何もない写真を撮って帰ればいい。護身用の果物ナイフも持ってきたし、体育の成績だって悪くないから、逃げる必要に迫られても問題ない。明日の昼休みには俺の怠惰を笑っていた連中に一泡吹かせてやることができるだろう。
入り口からの距離を考えれば、恐らくここが最奥だ。進むか退くか、俺の頭に二つの選択肢が現れたのは一瞬で、ドアノブを掴んで一気に開いた。
「なんだよこれ……」
暗闇に包まれているはずの部屋を不気味に薄暗い空間にしているのは、そこら中を這いまわる管が集まっている機械だ。まるでSF映画に迷い込んだかのような光景が広がっている。そして俺の頭に嫌な連想が働いてしまった。何に使う機械か知らないが、これが動いているということは、この近くに誰か……。
「困るな。第四の壁を越えられると」
スイッチを切るような音が聞こえた瞬間、俺の意識は絶たれた。
あなたに10のお題を与えます http://shindanmaker.com/494533からのお題。
1:鎖
2:夜
3:二つ
4:境界
5:怠惰
6:手
7:果物
8:ナイフ
9:体育
10:機械




