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新しい日
学校までの近道にある高架下で、スプレーを弄んでいる川瀬を見かけた。
「おい、新年度だっていうのにこんなところで何やってんだ」
「もちろん仕事だ」
あくまで本人の談だが、こいつは暇なときに人を笑顔にする仕事をしている。
「それはもしかして、この壁一面に書いた落書きのことか」
「落書きじゃないが、その通りだ」
昨日までひび割れた灰色のコンクリートでしかなかったところには、地平線から太陽が顔を出す瞬間が現実よりポップに描かれていた。
「俺が実際に見てきたものをここらの人たちにも見せたいんだ。すげえだろ?」
「こら! またお前か!」
遠くで叫びながらこちらに走ってくる老人が見える。彼の仕事が認められる日はまだ遠いらしい。
三種のお題組み合わせったーhttp://shindanmaker.com/192905からのお題。
「新年度」「地平線」「スプレー」




