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紅の術者  作者: 結城光
第1章・2節 学年別トーナメント編
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第54話 王都フレイス

取り合えずここからしばらく王都編かなぁ……


「お前はここまでだっ!!」


フードを取ると、そこには執事服を着た見るからに体を鍛えています的な人が不適な笑みを浮かべながらこちらを見る。おかしい。剣が触れた瞬間に、武器が切れずとも少なくとも感電はしているはずなのに


「この程度の電撃で武器が、ましてや俺を昏倒させる事が出来るとでも?」


「くっ!!」


魔力をつぎ込み、更に質を上げる。空間に響く音がドンドン酷くなっていく。しかしヤツの武器は欠ける事も無く、かといってヤツ自身が倒れる事も無い。

良く見れば向こうの剣も青白く光っており、おそらく魔力を流し込んでいるのだろう。だったらその体自体に電流を流せば――


「甘いッ!!」


そう言われて、気づくと俺の手の中にあったはずの剣が思い切り吹っ飛ばされる。空中で回転しながら、剣はその身に宿した電撃の色を失う。そして首筋につめたい感触が伝わるのは、もはや必然の事だった。


「……やはり聞いていた通りか」


「はぁ……?」


ゆっくりと剣を自分の鞘へと入れて、男がそう告げる。殺されるとは不思議と思わなかった。しかし男は何かを見定めるような瞳をしたまま、こちらを見ている。

良く分からないが、敵では無いのか……? だけど……ッ!!


『イツキィ!!』


後方から悲鳴にも似た叫び声が聞こえ、瞬間俺を護るようにして6人が現れる。さっきの男を囲うようにして、陣形を取る。

その光景に一瞬だが男はたじろいだ。それが運のつきだったのだろう。


「ヨミッ!!」


「はい、お嬢様」


ティアとヨミが先陣を切る。いや、正確にはヨミがティアの先を走りながら男の背後へと回り込む。前を防げば後ろから、後ろを防げば前から攻撃が来る。しかし普通に剣を抜いて、戦闘態勢であれば間違いなく防げたはずだ。いや、そうでなくとも素手でも防げるはず。

しかし彼は一瞬だけ後ろのもう1人のフードを見ると、途端に殺気が消えた。


「取り合えずうちの糞虫の件でのお礼ですッ!!」


風を纏った短剣が背中にあったソレを弾き飛ばす。くるくると回りながら飛んでいく剣。しかし地上では、まさにフードの男が吹き飛ばされていた。


「ちょっ!? 少しは手加減をっ!!」


「するわけ無いでしょ? アンタ馬鹿ァ!?」


魔法では弾かれると思ったのか、意外にもティアは接近戦を繰り広げ始めた。しかしおかしい。ティアとて男の能力を見誤ったわけではない。明らかに近接戦闘では、彼女の方がかなり分が悪い。

そう、魔法を抜きにしたらであるが。


「遅延魔法」


「なっ!?」


その瞬間、後ろに居たはずの全員の魔方陣も同時に展開される。……キヨルを除いて。

近距離のセイウェンですら、自分の大剣を鳳雨へと変えつつ魔法陣を展開している。


「えぇっ!? な、なんやそれ!? 打ち合わせとかなかったで!?」


キヨルの叫びはむなしくも、このフィールドに響くのみで誰も助ける事はおろか説明すらしない。


『氷撃一閃 烈火陣』


何その必殺技みたいな名前……? 女性陣全員が声を揃えながら魔方陣を発動させる。5人それぞれの得意元素の魔法を組み合わせ、上手く混じりあいながらキヨルと男を飲み込む。そう、キヨルとだ。

こんな時もネタ扱いされるのは……仕方ないな。うん。


「さて、アナタが首謀者よね? 顔を見せて貰うわ」


「あっ……」


女の声? しかもまだ幼いような声だ。しかしこんな事をしてくる組織のリーダーなのだから何があってもおかしくない。俺は体を起こしながら、何とか立ち上がる。

幸い体にダメージは無いので、別に問題は無い。あるとすれば心の方だが……。


「うそっ……」


顔を見たティアが驚いた顔でこちらを見る。いや、正確には俺以外の全員が驚いた顔で少女を見る。

髪の色はティアよりも明るい金色をしていて、瞳は燃えるような赤。顔は幼いが、何処か覚悟を決めたようにしっかりとしている。


「お前ら知ってるのか? このちびっ子?」


そう言った瞬間、全員の目が血走った。ヨミにいたっては、俺に短剣をぶん投げてくる。もちろん心臓と頭の両方に。まぁ適当にあしらうが


「わらわはちびっ子ではないっ!! フレイス・ビン・ナルフィアじゃっ!!」




◇◆◇◆◇



「おいこらおっさん。アンタ国王の前に親として娘をどうにかしろよ?」


「ははっ。それはもっともな事だな」


「ちょっとイツキッ!!」


結局あの後ナルフィアとか親衛隊とかをこちらが引き連れて、堂々と王宮へと入っていった。すると何処かで止められる事も無く、すんなり王様の所へと通してもらえた。どうせこうなる事を知っていたようだ。入った瞬間、意外と早かったななんて抜かしたからな。

それでナルフィアと例の男とかを渡して今に至る。


「あのな、ティア。確かに国王は偉いぞ? だけど王は王以前に1人の人間だ。間違いを犯す事だってあるんだ。それを間違っていると言って何が悪い?」


「アンタねぇ……。下手したら首飛ばされるかも知れないのよ!? それ以前に王様に向かって失礼でしょ!!」


「ナフィー家の娘で確かティスティアと言ったな? 君の敬意は嬉しいが、彼の言う事は正しい。もしここで彼の首を飛ばそうものなら、自分が気に入らないから殺す独裁者と同じだと思うが?」


この国王様は結構凄い人なのか? 自分で言ってなんだが、少しは怒られる事を覚悟していた。だけど仲間を危険な目にあわせて、一歩間違えたらと思うと言わずには居られなかったと言う訳なんだが。


「このフレイス・ビン・ガインがナルフィアの父として謝罪しよう。すまなかった」


「母として私も」


国王と后様に頭を下げさしてしまった。いやいやいや、ここまでするつもりなんて無かったのに!?


「いや、そんな頭なんか下げないで下さいよ!?」


「そうは行かん。詫びとして、イツキ・ジングウジを我が娘の伴侶にしても良いと考えているほどこちらは真剣だ」


ニヤリと笑いながら、ガインは宣言する。瞬間この空間の空気が凍った。

ヨミはガインと同じ様に笑いながら断ったら殺すと言わんばかりに短剣をならしていた。そして残りの4人はそれぞれの武器に手をかけながら、断らなかったら殺すと小さな声で呟きながら俺へと近寄ってきている。

ゴメンナサイ。皆さんの愛は重すぎます。それは本当に俺を案じているのでしょうか? 


「冗談を言ってないで早く始めましょう? 予定は結構詰まってるはずですよ?」


「冗談ではないのだがな」


それが怖いって言ってるんだよ。

だが実際の所、王宮の中での任命式の後には取材やらなんやらで今日は1日王宮に居る事が決まっているのだ。宿泊ももちろんここで。

だからあまり遊んでいる時間など無い。


「ガイン様、イツキさんの言う通りあまり時間はありませんわ。こうしてお話出来るだけでも光栄な事ですが、私達にも責務を全うしなければなりませんので」


「そうだな。もう少しこの時間を楽しみたいと思っていたのだが、叶わぬかな。まぁ良い。任命式を始めるとするか」


そう言われて、代表者である俺だけが国王たるガインの近くへと招かれる。他の者は后であるアリッサが何かを渡しに行っている。


「汝らを今年度の1年生徒会として任命する。学園へと降りかかる火の粉を払い、自身が更に飛躍する事を祈っておる。フレイスの加護あれ」


そう言って渡されたのは、ピンバッジだった。後ろを向いてみてみるが、何か俺のだけ他の人のヤツとは違う。

会長特権? 何か良くわかんないけど、とりあえずこれで俺達は紅では無く生徒会として認めて貰えたわけだ。


「あなた達はこれから学園の代表として、様々な事を行ってもらいます。是非そのチームワークを発揮して下さいね?」


アリッサが満面の笑みを浮かべながら、元居た席へと戻っていく。

もっと何かあるかと思ったけど、本当に形式だけで1分と掛からなかった。あまりにもあっさりと終わってしまって、拍子抜けしてしまった。

結局そのまま俺達は予定で、ガイン達は仕事で忙しいと別れたのだった。


そして俺達も予定を順調にこなして夜。やはりと言えばそうだが、俺達は王都の方で取材を受けていたのでそっちで晩飯を食べた。ガイン達には早々と連絡をしておいたので問題はなかった。

流石に王宮の近くとあって、結構な値段がする場所ばかりだったが値段以上の味に舌鼓を打ちながら俺達は王宮へと戻った。

全く緊張が無かったと言えば嘘になるが、多忙やら初めての事やらで疲労が溜まりに溜まっていた俺達は直ぐに割り当てられた部屋へと行ったのだった。


俺も何気に疲れたので、風呂は入らずにシャワーだけでさっさとベッドに横になる。

そして睡魔に誘われるまま、俺は眠りに……


「おい、少し良いか?」


ゴンゴンと荒っぽいノックが2回程された後に、男の声が扉の向こう側から聞こえる。

確かナルフィアの親衛隊長の……ゴルゴッサ? だっけ。


「あぁ……」


寝かけていた事もあったが、昼間の事もある。必死に目を擦りながら、扉を開けてゴルゴッサへと視線を移す。


「悪いな、寝てたか?」


「別に? んで、何のようだ?」


「昼間の事だ。ここじゃなんだから、場所を変えよう」


端的に目的だけ告げると、踵を返して通路を歩き始める。

広い廊下を男と2人。しかも夜。何が悲しくてこんな風になってんだろうな……。

幾つかの部屋を通り越して階段を上り、そしてある部屋の前へと到着する。しかしこの間一切会話なし。


「入ってくれ。くれぐれも無礼な態度は取るなよ?」


そう言ってゆっくりと扉が開けられる。

部屋には誰かが居るようで、既に明かりはついている。ゆっくりとイスに座っていた人物が立ち上がる。

だが俺はそちらには視線を向けない。

部屋の内部から2人程の視線を感じたからだった。当然のようにイスに座っていたのだ。


「一瞬武器を展開しようかと思いましたよ?」


振り返ったのはナルフィア。しかしそれ以外にも俺の良く知った人物がこちらへ視線を向ける。


「ねぇ? イオリ先輩、ヤスラ先生?」

その内新キャラ含め、新しいキャラクター紹介しないとなぁ……。

えっ、要らない? またまぁ


そういえば紅で出来なかった事を別の小説でやるかも。

わかんないけど。

碧い人が出てくるかもしれない。

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