第39話 トーナメント開始
そろそろキャラクター紹介を更新してこなきゃ……
といいつつ、シルビアだけはこっそり更新したので良ければこれを見る前にちらっと
「で、あんだけ格好つけたのにどういうことよ!!」
しょっぱなからティアが怒っています。えぇ、さっきまでの雰囲気ぶち壊しです。理由? 理由なら1つだけだよ。俺達は入場してそのまま試合が始まるもんだと思ったさ。そうしたらなんか試合会場にも控え席みたいなのがあったのさ。え~っと、例えるなら野球場の選手が居るベンチ
で、そこには顧問の先生が待ってるから打ち合わせしてくださいみたいな事言われて俺らはベンチに向かった。そうしたら誰も居ない。つまりヤスラ先生遅刻
「まぁまぁ落ち着きなよティア君。そう怒っててもヤスラ先生が来るわけではないだろ?」
「うぐっ……。それはそうだけど」
明らかに相手のチームが睨んでいるのが分かる。それに会場も少しざわめきが広まってる
さっさと始めろよって言ってるな、アレは
「ちょっとイツキィ~。ボクは退屈だよぉ~」
「さようか」
「おい、イツキ。さっさとヤスラ先生呼んで来い」
「お前が呼んで来い」
こっちのチームのメンバーも凄いイラついてるんですけど……。確かヤスラ先生は運営の手伝いとかしてくるって言ってたはずだったけど……
「あーもうっ、私が呼んでくるわっ!!」
「お待ち下さい、お嬢様!!」
ヨミの静止を振り切り、ティアが入ってきたゲートへと急ぎ足で戻っていく。俺達は急いで立ち上がってティアを追うが、いきなりティアが立ち止まる
「あれって……ヤスラ先生じゃない?」
●紅の術者
第39話 トーナメント開始
「えっ? あっ、本当だ。こっちに走ってきてる」
何故かトイレから全速力で走ってくるヤスラ先生。服装は一応まともな格好に着替えたのだろうけど、走ってきてるからグチャグチャ。何のためにしっかりした服を着たのか分からないでしょうが
まぁ、一応はヤスラ先生がこっちに来たので俺達は元の場所へと戻っていく。程なくしてヤスラ先生は俺達の前に現れた
「ゴメンね。ちょっとトイレに入ってたら、試合開始時刻になっちゃって~」
「大丈夫ですか?」
「あぁ、大丈夫大丈夫。出すもんは出してきたから」
オイオイ、一応アンタも女性でしょうが。しかも結婚とか考えなきゃいけないような歳なのに、そんな下品な事言ってたら色々まずいでしょうが……。まぁ俺達の為に色々頑張ってくれて、余計なモノまで溜めてたんだろうな
「いやーホントまいったぉ。いくら二日酔いが酷いからって、胃の中のモノを全部リバースするなんて想定外だったね」
前言撤回。この人ただの酔っ払いだった。しかも全部リバースしたって事は……、何も言うまい。
俺達はヤスラ先生を奥の方に追い詰めると、俺達は手前の狭い椅子に何とか5人で座った。おそらくこれ2人か多くて3人用だろ……
少し甘酸っぱいような香りがしているが俺は気にしないぞ。絶対気にしない。気にしたら色々まずい事になるって分かってるから
「やばい、ボクちょっと気分悪くなってきたかも……」
「実は私も少し気分が優れなくなってきているのだが……」
アイリとセイウェンが神妙な顔で俺に訴えてくる。でもそんな事言われたってどうしようも無いだろう……。一応空気の壁を置いとくけどさ。転ばぬ先のアレだよアレ
「う~んと、作戦会議なんて言われても正直なんも言うこと無いのよね。戦ってみたら分かると思うけど、アナタ達には物足りないモノだと思うの。よってみんなに1つずつ規制を設ける事にしました」
そういいながら1枚の紙を取り出して俺達に見せる。そこには1人1人の規制と、みんなに対しての規制が書いてあった
全員に掛けられたのはただ1つ。上級魔法を使わないという事
そして個人的な規制は……
イツキ・ジングウジ 魔法喰らいを使わない事
ティスティア・ナフィー 遅延魔法を使わない事
ヨミ 風速瞬動を使わない事
アイリ・クラン そのままの姿で戦う事
セイウェン・コウラリス 剣の解放、および回復を行わない事
「何このゆるい規制」
「まぁ普通に戦えばいいんでしょ?」
「俺のレアスキルは決勝かイオリ先輩との戦いまでは使わないって決めてるからいいや」
「楽勝ですね」
「私も剣は使ってよいのだろう? だったらなんら問題は無いな」
全員が余裕の表情でヤスラ先生の出してきた意見にコメントする。正直この程度なら余裕なはず
ヤスラ先生も早く行けって顔をしてるし、これはチーム戦だからまずくなったら助け合うって事で
「んじゃ、行くか?」
『了解』
俺達の、チーム紅の実力をここに居る全員に見せ付けるいい機会だ。噂でなら聞いた事があるとか、凄いとか言われてるけどホントは弱いんだろ言ってる奴らに見せ付けるんだ。俺達はいびつでお世辞にもいい過去なんか持ってないが、今は誰よりも強いんだって事を
転移魔方陣なんて高いものは発動されているわけも無く、会場の中央まで俺達はさっさと歩いていく。後ろから暑いだの日傘だせだの言ってるけど無視無視。日傘じゃなくて、日笠なら1名……。なんでもない
とりあえずアレだよ。あの白いロリコンみたいに反射ァ、反射ァ、紫外線を反射ァ!! でいいんだよ。あっ、出来ないのか
「おい、ずいぶん待たせてくれたなぁ?」
中央の方で待っていたのは、入学式の時に顔を見た記憶のある少年5人だった。見るからに実力で選んだわけではなく、入学式で知り合ってそのまま意気投合したようだ。いや、その方がいいんだけどな
俺達もそんな感じで集まって、蓋を開けたら実力の高い者ばかりだったってヤツだし。
「お前がリーダーのイツキ・ジングウジだな?」
「あぁ、そうだけど?」
明らかに視線に棘がある。何? 俺の後ろに居るのが全員女だから、嫉妬半分怒り半分ってとこか?
嫉妬の内容は言わなくても分かる。そういうお年頃だもんな。で、怒りの内容は明らかに俺以外が女って事で試合をなめてるのかって言いたいんだろうな。でもコイツら試合終わったら絶対に後悔してる
「……チッ。負けたら覚えとけよ」
それだけ言うと、リーダー的な少年は自分達のチームの元に帰って行った。これがリーダーの挨拶なのか。よっぽど俺が嫌われてるんだな。もう少しくらい何か話をしようぜ
「何話したのよ?」
ティアが不機嫌そうな目で俺を見てくる。別にお前が不機嫌になる事してないだろって言いそうになったけど、視線の先を見てみるとどうやら俺じゃない
敵のチームが俺を除いた4人に変な目をしながらヒソヒソ話しているんだ。そういうのはもっと隠れてやらないとバレるって。俺だってセイウェンのに見とれそうになって、何回ティアとアイリに殺されかけた事か……
「何か俺の事嫌いみたいで、負けたら覚えとけよって言われただけだった」
「あっそ。いつもの事ね」
いつもの事って……。それは酷い事じゃないか? ヨミは同情してくれないけど、後の2人は慰めてくれるよな? な?
(チラッ)
(ササッ)
(ギロッ)
(サササッ)
「2人共から視線を逸らされた……」
もう生きていける気がしません。本当にありがとうございました
なんて言うかよ!! でもストレスの発散は目の前のチームの方々にさせてもらいます。実際原因作ったのはヤツラだし
「えっと……」
「あぁ、俺達の事は構わず司会してくださって結構ですよ」
俺達が自由な事をやりすぎてて、司会進行役の人がいろいろ戸惑ってると思ったら……
「そうかい、イツキ君。だったら始めさせてもらおうか?」
「イオリ先輩!?」
ニヤリと笑いながら話しかけてきたのはイオリ先輩だった。さっきまでは普通の3年生くらいの人だと思ったのに、変装とかする必要あるんですかねぇ?
ホントこの人は人を驚かせたり、楽しませたりするのが好きだから困る
「さぁて司会は2年生徒会のイオリ・スラトスがやっていくよ!!」
『キャーーーーーーーー!!』
『イオリ先輩ーーーーーー!!』
相変わらずイオリ先輩の人気は凄く、1年生の中でも物凄い事になっている
「さて、注目の第1回戦はチーム『SS』とチーム『紅』だ!! SSの方は男だらけの友情で、紅はいろんなモノで戦うみたいだ!!」
色んなものって……。イオリ先輩は何を含んで言ってるんだよ
「そんな波乱が予想される第1回戦。開始!!」
高々と開始を宣言したイオリ先輩は、見ると物凄く遠い所に避難していた。まぁ俺達が大きな魔法を使うと思ったのかもしれないけど、大丈夫ですよ。多分俺この試合で魔法ほとんど使いませんし
「先手必勝ゥ!!!」
まだこちらが誰も構えておらず、俺に至っては武器すらも出していないのにさっきのリーダーの少年が単体でツッコんで来る。仲間は驚いた顔をせずに魔法を詠唱しているから、おそらくそういう手はずになっていたんだろうな
とりあえずセイウェンとヨミの方には行かないみたいなので、アイリとティアに後ろの4人の魔法を無効化してもらう。そして俺はヤツの攻撃してくるタイミングを見計らって
「避けないとかバカなのかァ!!」
そういって殴ってきた右手を、俺は瞬時に振り払う。そしてそのまま空いている右手に魔力のみを集中させて、思いっきり鳩尾にぶち込む。それも上向きにだ
ここまで約1秒。おそらく俺のチームと関係者以外はわかんないだろうな。衝撃波を出しながら、少年は遥か上空に飛んでいく。
「お前ら、3分だけ待ってやるよ。それまでに俺らを倒せたら、お前らの勝ち。出来なかったら、今のアイツみたいに1人ずつ一撃で意識を刈り取る」
あーっと、これ言った奴結果的に負けてたよな。大丈夫だよな……? イキナリ隕石とか空から女の子降ってきてってことにはならないよな……?
っと、考え事しているうちに落ちてきたぞ、少年ッ!!
俺は一応風の魔法でクッションみたいなのを作り、怪我をしないようにしておく。その代わりこの場には要らないので、元の控え席まで自動的に郵送だけどな
その姿を見て、他のメンバーはあからさまに表情を変える。先程までの余裕の表情は欠片も見えない。自分達がさっきの状態になってしまうと思うと、足が震えてきて当然なのだ。
ヤスラ先生が言った意味が分かった。おそらくこのチームはSクラスの中でも1番弱い。トラウマを植えつけてしまうかもしれないが、実力の差がありすぎる
「意外にイツキも性格悪いね」
「お前らが言うか? お前らが」
ニヤリと笑いながら話しかけてくるアイリに俺も笑いながら返す。多分この3分間はコイツら全員攻撃しないだろう。防御に徹して、ホントに3分後一撃でしとめる気だぞ
相手は必死に相談して、大きな魔法を発動させようとしてるし
『風よ 火よ 逆巻く竜巻に業火の怒りを 逆巻く焔』
「ティア、懐かしいな。俺がクロッドに放った魔法だぞ、アレ」
「そうね。アレなら喰らってもダメージ無いんじゃない?」
「おっ、面白そう。イツキ、アレ喰らってみて。もちろん防御も何もしないで」
「バカな事言ってんじゃねぇぞ!? 俺だって防御くらいーー」
って話しているうちに目の前に炎が迫ってんじゃねぇかよ!?
(ガンドロフ!!)
(承知!!)
手に白い粒子が集まり、いつもの刀になって集約していく。ギリギリの所で刀になったそれを、俺は思い切り目の前に振り下ろす。普通の剣であれば何も出来ないが、俺の剣は風を纏っているし魔力もある。密度は遥かにこっちの方が上だ
いとも簡単に炎が切れていき、何もなくなってしまう
「ウソだ……」
おそらく自分の中では最強と思われる魔法を放ったのだろう。すぐにかき消された事に、絶望とありえないという顔をしながら地面に座り込む
「降参するなら今のうちだぜ? まぁしなくても楽にイカせてやるよ」
まだ怒りの収まってない俺は、嫌味交じりにそう呟く。さっきまでなら言い返すであろうその言葉を聞いたSSのメンバーはビクリと肩を震わせ、そのままイオリ先輩の方を見る
「棄権で、いいね?」
その言葉を聞くと、全員がしきりに首を縦に振りそのまま逃げていくようにゲートに消えていった。ここが地球であれば、完全に批判されるのは俺達だろう。正直俺もそう思ってる
しかし次に聞こえてきたのは予想を反するものだった
『一瞬で決めやがった!!』
『すげぇ、すげぇよ紅!!』
『ティスティア様、僕たちを罵ってェ!!』
一部おかしい発言があったが、他はやっぱり俺達を褒める発言だった。俺は驚いた顔でティアを見ると、頭を抱えながらも口を開く
「ここは実力がモノを言う世界よ? 負けたものには誰も見る気はしない。勝者のみがたたえられるの」
それだけ言うと、ティアはそのままゲートの方へ歩いていってしまった。よっぽど変な声を聞きたくなかったんだな。
俺はイオリ先輩の方を一度だけ見ると、そのままティアを追いかけてゲートの方に走っていった
はい、というわけで最新話です。
あっさり敵が負けてるのは当たり前ですよね。悪魔とか先生ぶったおす鬼畜集団が、Sクラスのメンツに負けるのは……
なので決勝まで1話で飛ぶ可能性が……。ダラダラ戦闘やるよりも、じっくりと決勝見せた方がいいので
2年生徒会とは勝てれば試合がありますが、負けると知りません。イツキ君は落ち込むんじゃないでしょうか
はい、というわけで次の話まで




