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孤独な公女~私は死んだことにしてください  作者: 結城芙由奈@コミカライズ連載中


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4-19 予感 1

 セイラが離宮を訪れてから数日後の出来事だった。


――21時半


夜の離宮は昼間の穏やかさとは違った静けさに包まれ、月の光が石畳を照らし、噴水の水音が遠くで響いていた。


サフィニアはいつもの日課で寝る前の読書をしていた。本を広げて見つめているも、内容は全く頭に入ってこなかった。

その原因はセイラだ。


「何だか、イヤな予感がする……またセイラ様が来るかもしれないわ」


サフィニアは独り言のように呟いた。

あの気位の高いセイラがみすみす引き下がるとは思えなかった。今にも、とんでもない何かを仕掛けてくるような気がしてならない。


ここ数日は雨が降り続いていたためか、セイラの動きは無かった。しかしその雨も夕暮れには上がり、今は奇麗な星が夜空に輝いている。


今夜は何故か胸騒ぎがしてならない。


「迷惑をかけないように暮らしているのに……どうして、そっとしておいてくれないのかしら」


サフィニアがこの離宮から離れることは、殆ど無い。

時々町へ買い物に行くこともあるが護衛がいるわけでもない。そこでわざと身なりの貧しい服装に着替えてヘスティアとフットマンを1人連れて出掛ける程度だった。


エストマン公爵の元には、サフィニア宛てのお茶会の誘いやパーティーの誘いの手紙が連日届いていたが、公爵は適当な言い訳をつけて全て断っていた。

しかしサフィニアは一度も本宅へ行ったことが無いので、その事実を知る由もない。


それこそ公女でありながら、サフィニアはこの離宮でひっそり静かに暮らしていたのだ。

本宅から離宮までは、馬車で10分以上も離れた場所にある。

これだけ離れた場所に住んでいるにも関わらず、セイラはサフィニアに接近しては嫌がらせをしてくるのだ。


もうサフィニアには、これ以上どうすればセイラを怒らせないで済むのか分からなくなっていた。


「せめて、セザールがセイラ様の様子知らせてくれればいいのに……どうして、来てくれないのかしら? 私からは会いに行けないのに……」


サフィニアはため息をついた。

実は、あの誕生パーティー以来セザールは離宮に姿を見せなくなっていたのだ。そのこともサフィニアの不安な気持ちを煽らせていたのだ。


そのとき。


――コンコン


『サフィニア様、お茶をお持ちしました。入ってもよろしいでしょうか?』


ヘスティアの声が聞こえた。


「ええ。入ってきて」


返事をすると、「失礼します」とヘスティアが部屋に入ってきた。


「サフィニア様の好きなハーブティーを淹れてきました」


「ありがとう、ヘスティア。もし良かったら一緒に飲まない?」


しかし、ヘスティアは頭を下げた。


「申し訳ございません。実はサフィニア様の分のお茶しか用意してこなかったのです。せっかくのお誘いなのに申し訳ございません」


「そうだったのね? わざわざ私の為だけにありがとう」


「いいえ。それでは失礼いたしますね」


ヘスティアは微笑み、一礼すると部屋を出て行った――




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