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孤独な公女~私は死んだことにしてください  作者: 結城芙由奈@コミカライズ連載中


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4-13 見られた幸福 1

 早いものでリーネ侯爵令嬢の誕生パーティから半月程が経過し、サフィニアの置かれた環境は大きく変化していた。


サフィニアは寝心地の良いベッドで目を覚ます。チェストの上には花瓶にさした美しい花々が飾られている。この花は庭の花壇からサフィニアが摘んできたものだ。


サフィニアは美しい花を見つめ、笑顔になると朝の支度をするためにベッドから降りた――



****


――コンコン


ノック音とともに、ヘスティアが部屋に現れた。


「おはようございます、サフィニア様」


「おはよう、ヘスティア」


既に着替えを終え、髪を整えたサフィニアが返事をする。


「サフィニア様、またお1人で朝の支度をされたのですか? 私に任せてくださいと、あれほど言ってるじゃありませんか。私はサフィニア様の侍女ですよ?」


ヘスティアが少しだけ、むくれた様子を見せる。


「大丈夫、自分の支度ぐらい1人で出来るわよ。ヘスティアだって自分の支度があるでしょう?」


サフィニアは視線を窓に向けると、見違えるように美しくなった庭が見える。季節の花々が咲き誇り、噴水が水を噴き上げている。


「サフィニア様。今日は午前中に家庭教師の先生が来る日ですね。その後、仕立て屋さんがドレスの仮縫いに着ますよ」


「忙しい一日になりそうね」


サフィニアは笑顔で頷いた――



****



 授業はリビングで行われた。


サフィニアは、少し緊張しながら椅子に座り、その隣にヘスティアも座る。2人は一緒に授業を受けることになっているのだ。


訪れた教師は厳格な雰囲気を纏った年配の男性で、本日で3回目になる。


「サフィニア・エストマン公女様とヘスティア様。では授業を始めましょう。では前回の復習から始めましょう」


王国の建国史、貴族制度の変遷、そして現在の政治構造。

サフィニアは記憶の中にある断片を辿りながら、教師の質問に慎重に答えていく。


「……素晴らしい記憶力ですね、サフィニア様」


教師の目が細くなる。


「ありがとうございます」


誰かに認められることがこんなにも嬉しいとは思わず、サフィニアの顔に笑みが浮かぶ。


「先生。サフィニア様は、本当に努力家なのですよ。昨日は夜遅くまで勉強されていました」


ヘスティアが手を上げて教師に告げる。

その言葉にサフィニアの顔が赤らむ。


(ヘスティア……)


ヘスティアはいつも自分を見ていてくれる。誰にも気づかれなかった努力を彼女だけは知っていたのだった――



****



 午後は仕立て屋の女性が訪ねてきた。


彼女は最近社交界で有名になっている人気デザイナーだった。女性はサフィニアを見て、満面の笑顔になる。


「まあまあ、なんて美しいお嬢様でしょう。さあ、こちらへ」


サフィニアは鏡の前に立ち、仮縫いのドレスを身に纏ってみた。

淡い水色のシルクは肌触りが良く、胸元には繊細な刺繍が施されている。


「……これが、私のためのドレスですか?」


「ええ、もちろんですとも。あなたに似合う色を選びました」


女性が満足げに頷き、サフィニアは鏡の中の自分を見つめる。

その姿は高貴な公女の姿が映っていた。


「サフィニア様は、どんな色でもお似合いですよ?」


サフィニアにヘスティアが語り掛け、その言葉に胸が熱くなる。


「ありがとう、ヘスティア。あなたがいてくれて、本当に良かったわ」


鏡の中で、サフィニアはヘスティアに笑いかけるのだった――







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