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孤独な公女~私は死んだことにしてください  作者: 結城芙由奈@コミカライズ連載中


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4-11 何かが変わる日 1

 リーネ侯爵令嬢の誕生パーティーから3日が経過していた。


――10時


朝食を終えたサフィニアとヘスティアは、太陽の光が差し込む明るいリビングで刺繍を刺していた。


「サフィニア様、本当に刺繍が上達しましたね。まるで色鉛筆で描いたように見事ですよ?」


ヘスティアがサフィニアの手元を覗き込み、感心した様子を見せた。


「そ、そうかしら。でも上達したのはヘスティアのお陰よ。あの時ドレスに沢山刺繍をしたから」


自分の刺している刺繍を見つめながら、サフィニアは顔を赤らめた。


刺繍枠に固定された白い布にはリスが描かれている。これはリーネ侯爵令嬢にプレゼントしたリスを思い出して刺したものだった。ヘスティアの刺繍は大輪のピンク色の花々が糸で描かれている。


「あの誕生パーティーから3日経ちましたけど……何も変わりませんね」


ヘスティアはポツリと言った。パーティーを終えて帰宅した夜、ヘスティアはサフィニアに「これからはお誘いの招待状がひっきりなしに届くはずです」と話していたのだ。

既に3日が経過しているが、一向に離宮に手紙が届けられることは無かった。

変に期待するようなことを口にしてしまい、罪悪感を抱いていたのだ。


「そうね。パーティーの準備は忙しかったけど、静かな時間が私は好きよ。今までずっとメイドとして忙しく働いてきたから。こうしてゆっくり刺繍を刺せる時間を過ごせることって、幸せを感じるわ」


まだ10歳とは思えぬ大人びた口調で話すサフィニア。


「サフィニア様……」


サフィニアの言葉にヘスティアが感動した、その時。


ノック音とともに、使用人の声が聞こえてきた。


「サフィニア様、ヘスティア様! 外に……馬車が何台もこちらに向かっています……!」


サフィニアとヘスティアは顔を見合わせ、刺繍枠を置いて立ち上がると外へ向かった。


庭へ出ると、目の前の光景に2人は言葉を失った。

馬車が列をなして門をくぐり、次々と荷を降ろしているのだ。


絨毯、家具、庭木、花の苗……見たこともないほどの数の職人たちが、道具を下ろして作業の準備をしている。


「え? 一体何が起きているの?」


ヘスティアが戸惑いの声を漏らす。サフィニアも、ただ立ち尽くすしかなかった。

その時、馬車の列の最後尾から2人の人物が現れた。


1人は、黒い礼服に身を包んだ壮年の男性――筆頭執事、ポルトス。そしてセザールだった。


ポルトスは2人の前で足を止め、深々と一礼した。


「サフィニア様、ヘスティア嬢。お久しぶりでございます。中々こちらに足を運ぶことが出来ず、申し訳ございませんでした」


「い、いえ。大丈夫です。セザールが良くしてくれていましたから」


するとサフィニアの言葉にセザールが会釈する。


「本日より、離宮の住環境を整えるための改修作業が始まります。旦那様のご命令により、家具の入れ替え、庭園の再整備、生活設備の見直しなどが手配されております」


ポルトスの言葉にサフィニアは息を呑んだ。


「お父様から……? でもどうして、急に……?」


ヘステアが尋ねると、ポルトスは一歩下がって視線をセザールに向けた――


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